連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』三章 キャバ嬢(四)
料金やシステムについての講義がひととおり済んでから、順平は次の疑問を講師の西本にぶつけた。それは、<店の雰囲気とふるまい方>だ。
順平は、現役時代に取引先の役職者を接待したりするために、大阪の新地や京都の祇園の店に行った経験がある。会社の特別な行事などの際にも利用したことがあるので、ラウンジやクラブやバーといった場所については知識もある。それらとキャバクラの違いはあるのかないのか、西本にきいた話をかいつまんで言うとこうだ。
一般的には、前者は後者よりもひとクラスグレードが高いので料金も高めだ。また、前者は複数の客に複数のホステスが接客するケースが多く、後者は一対一での接客パターンが多い。
話題もそれに比例して、前者が後者よりもあらたまった内容であることが多く、政治・経済、時事といった話題をホステスに求められることがあるが、後者ではより個人的な内容が客と嬢の間で交わされることが多いかもしれない。
西本が続けて言う。
「あと、クラブやらは商取引上の接待が主要な用途なんに対して、キャバクラは個人の客を嬢が接客するっちゅう違いや。ただし、これはあくまで一般的なことでな、一概には言えんはなしや。
「店の場所もいろいろや。用途がら、前者は大阪で言うたら、いわゆるキタの新地やミナミなどメインの繁華街が主流になるし、後者はそれ以外のたとえば、十三や京橋などの繁華街や準繁華街にあるんが多い。
「どのカテゴリーの店も同じことやけど、店や同伴でのキスはもちろん嬢のからだを触ったりも基本ご法度や。仮に嬢を恋愛対象にしても、その恋が実ることはレアなケースでな。あくまで、お遊び・恋愛ごっこと認識しとかなあかん。限度を超えて貢いだりするんも泣きを招く公算大や。これらの事をわきまえてるんが大人っちゅうもんやで」
なお、以上の情報源も、西本の知り合いの「某おっさん」ということらしい。
西本のここまでの話を、順平なりにまとめた。
要は、嬢とデート感が味わえる気さくな場所がキャバクラの特徴らしい。西本の話の内容を聞く限り、大半の店は、健全なおとなの遊び場所というのが印象に残った。特に、ジイにとっては救いなのかもしれない。
ただ、順平も耳にしたことがあるが、中には悪質な業者がいて、ぼったくりや掛けで支払いがかさんでいくような社会問題もあるらしい。覚えておかないといけないのは、個人の責任ということらしい。嬢との関係も勘違いしてはいけないのだ。
もりやみほ さんの画像をお借りしました。
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