鷗外『青年』-女性たち続、友人-
主人公の小泉純一を取り巻く女性たちの続きと友人をご紹介します。
前回ご紹介した『鷗外『青年』-主人公と女性たち-』はこちら。
今回、女性たちの続きと友人についてご紹介します。
1.お婆さん(下宿の主)
植木屋「植長」の当主の母で、お安の義母。純一とお雪を引き合わせたとき、何も話すことができない二人の様子を見て「まあ、たいそうお静かでございますね」と冷やかします。家主としての矜持と経済的自立のゆえか、故郷の祖母と比べてなんとも若々しいと純一は感じるのです。
2.しづえ(坂井夫人の小間使い)
微笑すらせずまじめで、おとなしくつつましやかな印象を純一はいだきますが、二度目の夫人宅への訪問ではお雪と一緒のときより、何か一層強い緊張と興奮を感じます。坂井夫人の箱根での静養にも同行する、美しい、十四五歳の娘がどこまで夫人の秘密や謎を意識しているのか……
3.高畠詠子(女子教育者、下田歌子がモデル)
プラットホームで、五六人の男女に取り巻かれ女王のごとく指図や、訓戒めいたことばをかける四十歳見当の女性。大村に聞けば、「……あれは、君、有名な高畠詠子さんだよ」。純一はなるほどと思います。一等室に同乗した純一らは、端然とした彼女に気圧されるのでした。
4.三枝茂子(大村の元カノ)
散歩の途中、大村に向かって会釈する女学生と行き合います。「稲妻のように早い、鋭い一瞥の下に、二人の容貌、態度、性格をまで見たかと思われる位であった」と純一は感じます。大村と茂子は、短歌やドイツ語を通じて交渉があったのがやがて「恩もなく恨みもなく分かれ」たというのです。
5.大村荘之助(医学生の友人、木下杢太郎がモデルか)
平田拊石の講演会に同席していた医学生大村から純一は声をかけられます。馬が合って、上京して初めての友人となります。瀬戸とは好対照の硬派で冷静沈着な気質。純一は彼からの影響を多く受けます。瀬戸との交際には一線を画すよう注意を促します。
6.瀬戸速人(同郷の友人)
東京で再会してから、講演や宴席に誘ってくれたりして、拊石やおちゃらを知る契機をつくります。理に傾きがちで世間に疎い純一に、処世のわざや女性の隠された魅力に気付きを与えたりして純一を導くのですが。軟派で浮ついたところがあり、大村からは疎まれています。
※biue1984さんの画像をお借りしました。