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連載小説『ヰタ・セクスアリス・セーネム』四章 レンタル彼女(四)

 西本がホームページのメニューをタップして調べている。
「順平見てみ。デートにお誘いするまでの手順の説明や」
西本が上から読み上げていく。「まず、『1.好みの娘を選ぶ』や。写真と簡単なプロフィールがのってるわ。お前好みのはおるか?」
「それは後にせんかい。手順を一通り読んでみ」と順平が先を促す。
「わかった。『2.ラインかメールをその娘に送る』や。そうすると『3.彼女から返事が来る』そうやで」と西本。
「なんかドキドキしてきた」興奮とともに西本が一気に読み上げていく。「『4.日程調整、デートの申し込みをする』『5.事務所から案内メールが届く』『6.決済する』これは、振込等って書いてるわ。そして、ついについに『7.デート』や」
と健一は、いまや汗を額ににじませてフーフー言う始末だ。

「ふーん」と順平は案外冷静な顔をして、「料金はどうなってんねんや?」と西本に問う。
「料金の構成はこうらしいで。『基本料金+指名料+出張料』とある。基本料金は、1時間当たり5000円から6000円、指名料が2000円で、出張料が3000円からやそうや。最低2時間からなので、10,000円+2,000円+3,000円で、デート一回の料金はしめて15,000円ぐらいかららしい」と西本が読んでいく。

「そのほかに、延長を希望して彼女の都合がよければ延長も可能や。もちろん、延長料金がかかるけどな。あと当然やけど、自分と彼女ふたりの食事代、遊園地など施設の利用料、交通費などが別途必要となるわな。
「おっと、待ってました。そのほかに手つなぎや写真撮影、観覧車などの項目ごとに、オプション料金が決められてるで。月額○十万円の専属契約っちゅうシステムまであるらしいわ。びっくりやでぇ」ひととおり読み終えた西本が、ワンちゃんのようにハアハア息を切らした。

「えーっ、こんなんまで書いてるでぇ。『おすすめのデートプラン』。へー、梅田か難波で待ち合わせ、まずはカフェでコーヒータイム。そのあとは、御堂筋の散歩とか、デパートでショッピングとか。
「デートでのふるまい方や禁止事項も書いてあるで。性的な行為は禁止、か。まっ当然やな。フムフム……」西本は順平が側にいることも忘れて、読むことに夢中の様子。
「健一よ、オレにも聞かせてくれんかいな。それと、こういう、いわゆるレンカノっちゅうのんは、そもそも何がきっかけでできたんか調べろや」
「おお、ちょい待っち。へぇ~、こう書いてあるわ。わかい娘がなるべく多くの男性と知り合うことで、理想の相手と出会うシステムがあったらいいな、というニーズがこの事業体のできたきっかけらしい」
「女性側のニーズね゙ぇ。草食系っちゅう言葉が一時期流行ったように、今どきの男性のためのシステムとばっかり俺は思うてた」順平が意外そうな口ぶりで言った。

 
青木詠一 さんの画像をお借りしました。

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