廣部知久著『いつもモーツァルトがそばにいる。』(1)
「ある生物学者の愛聴記」との副題がある、『いつもモーツァルトがそばにいる。』は廣部知久さんの著書です。
皆さんの中にも、モーツァルトの音楽、聴いたことがあるという方多いと思います。
アイネ・クライネ・ナハトムジークや、トルコ行進曲など。
この著書は、モーツァルトの音楽に魅せられたひとりの科学者からモーツァルトへの贈り物です。
廣部さんは、本書の著者経歴欄にある通り生物学者として立派な経歴をお持ちの方です。
しかし、音楽に関してはアマチュアといえば失礼に当たるかもしれませんが、職業とはされていません。
世代に関して言えば、私の方が少し後輩になります。ほぼ同世代と言っていいかもしれません。
では、まず表紙のことから。表表紙は、書名とザンクト・ギルゲンのかわいい市庁舎とヴァイオリンを弾く少年モーツァルト像のある噴水の絵。
ちなみに、ザンクト・ギルゲンはオーストリアはザルツブルク郊外の美しい湖畔の町。モーツァルトの母親マリアの生誕の地です。
ザルツブルクは、モーツァルト生誕の地です。
背表紙には、書名と少年モーツァルトが愛用したとおぼしいヴァイオリンの絵。
裏表紙には、そのヴァイオリンの絵が中央に配置されています。表紙全体が青の単色で統一され美しいです。
青といえば、「色彩の魔術師」といわれるフランスの画家、ラウル・デュフィの言葉を思い出します。
「青はそのすべての段階において、本来の個性を保ち続ける唯一の色彩である」。
明度や彩度などの諧調によらず、と。青を愛した画家です。
デュフィは、画家になるか音楽家になるか迷ったほど音楽に惹かれ才能もありました。
モーツァルトへのオマージュともいえる絵画を残しています。その絵、青が基調です。
本書の表紙からそのような連想をしました。
私自身のオーストリア旅行で目にしたウィーン、ザルツブルク、そしてザルツ・カンマーグートなど。
美しい景色や耳にした音楽を思い出したりもしました。
素敵な装丁も気に入つたので、表紙の話から入りました。
順序が違ったかもしれません。
『いつもモーツァルトがそばにいる。』という書名についてです。
これは、私のようなモーツァルト好きには、うん、そのとおり、文字どおりなんです。
帯に記された言葉も見てみましょう。
まず、表側。
「至高の音楽に魅せられて」
「没後230年のメモリアルイヤーに捧ぐモーツァルト歴60年の体験を200の名曲とともに綴る一冊」
次に裏側。
「いつでもそばに寄り添って
ある時は困難に立ち向かう勇気を与え
ある時は踊りたくなるような楽しさをもたらし
そして、こらえがたい苦しみを癒してくれる」
「永遠の友人たるモーツァルトの語りつくせない魅力を詰め込んだ愛聴記」
まさに、私の語りたいことを言い尽くされています。著者に親密と感謝の念を抱きます。
ここからは、私のことにもお付き合いいただければ幸いです。
聴くたびに新しい。楽しい。それがモーツァルトの音楽です。
モーツァルトの伝記や日記のエピソード、自分自身の過去の思い出が曲とともによみがえることもあります。
モーツァルトの音楽によって喜びはいっそう深まり、哀しみは癒されてきました。そしてこれからも。
著者に倣って、「友人モーツァルト」と呼ばせていただきたいと思います。
モーツァルトとその音楽を知っていなければ、私の人生は少し違ったものになっていたかもしれません。
一生かかっても掘り尽くせない鉱脈をこの人生で見つけたようなものです。
私にとっての大きな幸せです。
次回は、本書の内容のお話をしたいと思います。
(次回へ続く)