シャ二マスで学ぶ法律学 浅倉透投獄篇①
オープニング:1個、光
はづき「はい。283プロダクションです~。…えっ。少々お待ちください。」
はづきさんの電話の調子がいつもと違う。よほどの大型案件だろうか。
はづき「あの…プロデューサーさん。お時間大丈夫ですか。」
ノクチルのみんなの頑張りが報われるのか…。心なしか緊張する。
はづき「警察の方からお電話で。透さんが…無銭飲食をしてしまったようでして…。監督者の方に、警察署まで来てほしいとのことなんです。」
終わった。
いつかやらかすかもしれない。そんな危うさはあった。
でも…。
彼女たちはまだ、一歩を踏み出したばかり。
プロデューサーの俺が信じなくて、どうする。
「はづきさん。…行ってきます。留守、よろしくお願いします!」
俺は、勢いに任せ駆け出した。
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警察署につくと、ノクチルの3人がいた。
雛菜「透先輩、つかまっちゃった~」
小糸「ご、ごめんなさい。透ちゃん、お財布、事務所に忘れてたみたいで」
円香「浅倉、もう連れて行かれる。」
円香が指さした方向には、一台のパトカー。
無機質な赤いランプの光が現実であることを訴えてくる。
そして、透がいた。
両脇を警察官に挟まれて、パトカーの後部座席に消えていく。
「やばい。めっちゃ。」
「ヘルプミ―」
それが、透をシャバで見た最後だった。
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ご挨拶
はじめまして。
わらびと申します。八宮めぐる担当です。
さて、来る4月24日は、アイドルマスターシャイニーカラーズがリリースされて、6周年という大変おめでたい日!!
6thツアー大阪の興奮も冷めやらぬ今日。
自分も得意なことで、シャ二マスの盛り上がりに貢献したい!!(シャ二マスにかこつけて勉強するきっかけを作っているわけではないよ)
ということで、シャ二マス×法律という何ともニッチな記事ができました。
もし、自分の担当アイドルが捕まってしまったら?
「法的な観点から彼女たちを守るのもプロデュースの一環!!※」
と即答してくださるノリのいい仕事熱心なプロデューサーの皆さま、お付き合いください。
※弁護士法などに抵触する可能性もあります。
担当アイドルの弁護は、弁護士にお任せしましょう。
※無銭飲食、未成年の初犯で、執行猶予もつかず投獄なんてありえないだろ!!いい加減にしろ!!というツッコミが聞こえてきますが、あくまで2次創作の茶番であることをご理解いただけると幸いです。
第1話 天啓
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動揺する3人を連れ、事務所に戻った。
応接室でノクチルの3人から聞いた事件の概要は、以下のようなものだった。
小糸「て、店員さんが急に私の方に来て、わたしびっくりしちゃって、」
雛菜「小糸ちゃんが堂々としてれば、透先輩逃げ切れたのに~」
小糸「ご、ごめんねっ。」
円香「…小糸は悪くないでしょ。悪いのは浅倉。」
透を守るには、どうしても法律的な知識が必要になる…。
話が煮詰まり、頭を悩ませている俺たちに、思わぬ助け舟が出た。
はづき「六法全書が必要でしたら持ってきますよ~。」
「……まだとってありますから。」
そうだった。
はづきさんのご両親は……。
これは、「あきらめるのは早い」という天啓か。
まだ希望は捨てちゃいけない。
P「はづきさん。ありがとうございます。おねがいします。」
「……みんな、協力してくれるか。」
三人は静かにうなずいた。
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第2話:ARRESTE:D
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雛菜「むずかしー!!あきた~…」
円香「…雛菜うるさい。まだ、5分もたってないでしょ」
小糸「でも、確かにむずしいね。専門用語みたいなのもいっぱいあるし…」
開始早々、雛菜は飽きてしまったようだが、その気持ちもわかる。
彼女たちの会話を聞きながら、六法に向き合っていると、不意にある言葉が引っかかった。
雛菜「でも、そもそも店員さんの逮捕って合法なのかなー」
P「…雛菜、どういうことか教えてくれるか?」
雛菜「ママが好きなドラマで、犯人がよく『令状取ってこい!』って言ってるの聞くよ~??
それに、そもそも、警察じゃない人が逮捕してるのもあんまり見たことないから、店員さんが逮捕するのっておかしいんじゃない~??」
言われてみれば、そうかもしれない。
少し調べてみてもよさそうだ。
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ということで、逮捕の適法性を考えていきます。
形式的な部分、主体および令状の必要性に焦点を絞って検討します。
(面倒な方は、「まとめ」まで読み飛ばしても大丈夫です!)
今話してるのってどの分野?
まず、大前提から確認していきます。
グレフェスでも、整地が大事ですからね(重要)。
日本法の大原則の1つに、自力救済の禁止というものがあります。
誤解を恐れずいえば、「誰であっても、自分の権利を強制的に実現するためには、裁判所の手続きを経なければならない」ということです。
※例外的に自力救済が認められたケースはありますが、ごく限られたケースです。
注意が必要なのは、これはあくまで民事上のお話であるということ。
今、問題となっているのは、逮捕という刑事上の手続の適法性です。
両者を混同しないことがポイントです。
議論がかみ合わなくなりますからね。
逮捕についての原則的ルール
どれでは、逮捕のルールを確認していきましょう。
憲法33条及び刑事訴訟法199条1項を確認してみましょう。
雛菜ちゃんが気づいたように、
刑事訴訟法上、逮捕の原則系としては、
①逮捕の主体は捜査機関でなければならず、
②「逮捕状」(=憲法にいう「令状」)が必要であることが分かります。
逮捕状の発付の判断を、捜査機関から独立した裁判所に委ねることで、不当逮捕のおそれを小さくする仕組みになっているんですね。
P「さすが、雛菜は天才だな!!!」
よし、楽しく話せたな(パーフェクトコミュニケーション)
現行犯逮捕 主体と令状の必要性
しかし…勘のいい読者の皆さんはお気づきになられたかもしれません。
憲法33条には例外の存在が予定されています。
そう。現行犯逮捕です。
(※準現行犯について話をするとややこしくなるので省略します。)
憲法33条を受けた規定である刑事訴訟法213条を確認してみましょう。
213条を見ると、
①逮捕の主体に限定はなく(=誰でもいい)、
②「逮捕状」は不要であることが分かります。
本件で、店員は、逮捕状なくして透さんを逮捕しています。
213条に照らせば、主体及び逮捕状の有無という観点からは、違法性なしということですね。
※検証のためです。決して他意はありません。
↑の「逮捕」は、現行犯逮捕のこといっているのでしょうね。
まとめ
第2話の内容をまとめると↓のようになります。
おわりに
なんとも尻切れ蜻蛉な感じですが、分量がとんでもないことになってしまいそうなので、今回はここまでにします。
初回から手続法に寄った話になってしまったのはどうなんだという感じですが、需要があれば最後まで書き上げようと思います。
次回は刑事実体法の観点から、透さんの所業を分析したいと思います。
お付き合いいただきありがとうございました!!
ps.冷静に考えて批判が怖くなったので、筆者が普段お世話になっている基本書を宣伝しておきます。3人の先生方のリンクアピール(追撃8倍)に酔いしれてください(絶対怒られる)。
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