吉川悠斗投手（シドニー／千葉ロッテ）インタビュー
「練習の組み立て、先発としての調整法など、学びのあったABL生活」
育成選手として千葉ロッテに入団し、2年目の今季。NPBでは先発にリリーフに、二軍で1年間を投げ切った。ABLでの経験を糧にし3年目、支配下登録と一軍デビューを目指す。
パワー負けしないよう、考えて投げた
――NPBでの今季については、もともとどんな目標を立てて臨んだのでしょうか。
もちろん支配下登録ということはありましたが、まず、登板試合数と投球イニングをできるだけ多くできたらなと思って、1年間臨みました。
――結果は自分なりに、どうでしたか。
ところどころ、投げない時期みたいなものがあって、自分が思っていたよりは少し少ないぐらいだったんですが、おおむね増やすことはできたので、問題はなかったかなと思います。ケガなく1年間を通して投げ切ることも今年の一つの目標でしたから、それが達成できたのもよかったです。
――球団からABLへの派遣を提案されたとき、「こういうことを勉強してきなさい」など、何かひと言ありましたか？
そういうひと言は特になく、“経験”の一つとしてオーストラリアに送り出されたと自分では思っています。
――昨年ABLを経験した中森俊介投手に、何か情報は聞いてきた？
オーストラリアでの生活はどんな感じだったかとか、野球のレベルとか、グラウンドの状況とか、そういったことをちょっと聞いてから来ました。
――それで、吉川投手自身としてはABLで何を学ぼうとか、こういうことを試してみようとか、どんなことを目標にしてきたのでしょうか。
一番は、先発である程度球数を投げられるように、ということです。体力的な問題もあったので、そこも含めてですね。あとは、パワーのあるABLのバッターに対して、どんなふうに勝負していくかを考えることでした。
――実際、こちらのバッター相手に何を意識し、どんな勝負ができていますか？
ABLの選手は日本人に比べてパワーがあるためか、「うまく打とう」というより「強い打球を打とう」とする意識が強いと思うんです。だから、そこでパワー負けしないように。もちろん、バットに当てられないようにするにはどうしたらいいかっていうのを一番に考えて、投げていますが。
――何か、シーズン中にはできないチャレンジをしていますか。こういう球を使ってみようとか、ストレートだけで勝負してみようとか。
シーズン中は結構、真っすぐ主体という感じで投げていたので、ここではちょっと変化球の割合を増やしてみています。変化球の組み合わせで三振を取ることも増えてきたので、そこはいい傾向かなと思っています。
――ここまで（取材は12月7日）で一番、印象に残っているシーンは？
パース戦（11月24日）で1点目を取られたホームラン（ジェイク・ボウェイ選手）ですね。真っすぐ、真っすぐで２ストライクを取って、最後押し切れるかなと思ったところで、ちょっと甘く入ってホームランにされました。そういうところを調整していくこともそうですし、やはり日本と同じように攻めていくと、こちらでは通用しない部分もあるので、そこは柔軟に、ある程度変えていけたらなと感じさせられたシーンでした。
ウィン投手の“英語教室”
――結局、試合では同じロッテの寺地隆成捕手以外とのバッテリーはなかったんですね。そこはコミュニケーションに戸惑うこともなく……。
レギュラーシーズンに入って先発したときは、全部寺地とのバッテリーでしたね。こちらに来て初めに練習試合をしたとき、背番号30のクレイトン（・キャンベル選手）と2回だけ組んだんですが、そのときもコミュニケーションは、特別問題ありませんでした。サインもそんなになかったですし。
――チームメイトでは、誰と仲良くなりましたか？
コーエン・ウィン投手です。結構、英語で喋りかけてくれるんですよ。この前も練習の合間に、ウィンが「これから英語で話すぞ」って言い出して、僕の英語の練習みたいな感じで会話をしてくれました。
――いいですね（笑）。野球の環境も文化も違う、オーストラリア生活からはどんな学びがありましたか。
野球でいえば、こちらは練習のスタイルというか、内容も、選手個人が自由に行うことが日本より多いので。いかに自分で練習を考えて進めるかが、今後、自分のオフのトレーニングにも繋がってくるんじゃないかなとは思います。
――日本では先発とリリーフ両方を経験しました。こちらでは先発１本でしたが、先発としての調整法は自分なりにできてきましたか？
そうですね。ある程度は固まってきたと思います。（日本では）まだ先発経験が少なかったので、調整法も考えていたところだったのですが、こちらで先発をさせてもらって、ある程度のルーティンはできてきました。
――この経験を来季どう生かし、どんなシーズンにしたいですか。
こちらで先発として中6日で回れているので、日本のシーズン中もローテーションをしっかり守って投げ切れたらなと思います。
Profile
よしかわ・ゆうと●2005年3月14日生まれ、埼玉県出身。浦和麗明高から23年育成ドラフト1位で千葉ロッテに入団。185cm82kg。左投左打。24年はイースタン・リーグで16試合に登板（先発4試合）、0勝1敗、防御率3.38。ABLでは3試合に先発し2勝1敗、防御率3.86の成績。