”飛ぶのは恥”(Flight Shame)とは?必要悪?PART②
【所要時間約5分】
シャイナタウンのサスティナブルオフィサー兼"able sustain."担当のエリナです。
今回は”飛び恥”に関する記事の後半。セレブたちがプライベートジェットを利用しまくっている現実社会では、富裕層ほど温暖化の原因となる温室効果ガスを多く出し、貧困層ほど温暖化の被害が深刻化する構図となっている。
日本で生まれ育ち、企業に勤めながら、環境問題に対して市民として出来ることを実践する私は、こうやって社会の不条理に切り込んで記事をしたためる。
一方で、批判の対象となる行動を自らが取ってしまうこともある。そんなジレンマについても取り上げたいと思う。
飛行機の旅はハズい!?
やっと取れた1週間の休暇、数カ国を回った旅行の記録をSNSにあげようか。
脳裏に「飛び恥」がこびりつく中で、自分の行動を正当化する理由や素材を探す。
航空券購入の際にカーボン・オフセット分を追加支払いした。
チェックイン前に、ベジタリアン・ビーガンなどの機内食に変更した。
どうせカトラリー類は使用有無にかかわらず捨てられるんだろうと思いながら、マイ箸で食べた。
これらの追加費用や準備は実は煩わしくはないのだが、飛行機の利用で環境に負荷をかけた旅で、エンジョイしている写真をSNSにあげるのは少し遠慮してしまうのだ。
って、何ともばかげている!と思う人もいるだろう。
環境活動をしている人たちの間では、SNSでは環境負荷の大きい行動を批判する、あるいは自ら避けたことを報告するのは、一種の社会的な義務として捉えており、時にはストレスに感じる。
「恥」の感情がもたらす効果は複雑だ。行動を変えるための手段としての恥は、一時的な効果をもたらす一方で、自己虐待に繋がるといった逆効果をもたらすこともあるとされている。環境活動家の中でも飛び恥の運動の広がりの中で、他人に押し付けるべきではないと主張する人もいる。
そもそもの恥という感情を深堀りしてみよう。
「罪悪感」はしばしば「恥」と対比されて語られる。
アメリカの人類学者ルース・ベネディクト氏は、欧米人の「罪の文化」と日本人の「恥の文化」を比較して論じた(「菊と刀 日本文化の型(1946))。アメリカでは道徳の絶対的基準という内面化された原動力に即して善行を行い、その基準からはずれた自己の行為を罪とみなす。
これに対して、日本では、他者の嘲笑や批判という外面的な強制力としての「恥」を避けること、つまり他者との対他的な関係が行動の重要な基準になっている。
文化的な背景から日本において、飛行機を極力利用しないといった行動を促す上で「恥」という感情に働きかけるのはある意味有効なのかもしれない。
別の動きとして、よりポジティブに感情に訴えかけるのが、”tågskryt”。またまたスウェーデンで造られた造語であり、「鉄道自慢」と訳される。飛行機ではなく鉄道で旅行することを奨励するために、SNSで #tågskryt #鉄道自慢 のハッシュタグを付けて発信する。鉄道オタクを味方に付ければ、運動が大きくなりそう。笑
テレビCMと飛行機についての豆知識。
なんと!
テレビCM1本の放送で、イギリス―アメリカ8往復分の温室効果ガスを排出するらしい。詳細は↓↓↓
移動せざるを得ない人たち←
実に世界人口の74人に1人が、住む場所を追われ、国外への避難あるいは国内でも別の場所への移動を余儀なくされている。
ロシアによるウクライナ侵略で戦禍を逃れた人々。タリバンが権力を奪回したアフガニスタンの人々。海面上昇や洪水の被害で自宅を失った人々。多くのパレスチナ人は、イスラエルの攻撃が激化するずっと以前から難民であった。
そして今、メキシコを経由して命懸けでカリフォルニアへ向かう中国人が急増している。
不法移民だ。その数は昨年で3万7000人、子連れの家族も少なくない。
彼らは中国からタイ、トルコ、そしてエクアドルへと飛んだ後、コロンビアからパナマの密林地帯を徒歩で歩き、メキシコから密入国請負業者を頼って米国へ渡る。費用を抑えてビザなしで入国できるルートであるが、ある家族は目的地へ辿りつくまでに約40日間かかったそうだ。
前回大統領選でトランプを破ったバイデンの公約により、移民政策は寛容となった。
中国からはるばる米国を目指す背景には、中国の経済事情に加え、コロナ禍に実施された極端な制裁措置(ロックダウン)から政府に対する不満が増大したためという見方がある。
中国の不法移民の移動ルートは通常の太平洋上空を飛ぶ便と比べると、乗り継ぎも多く遠回りをしている訳だが、移民や難民にとって環境負荷を最小限に抑えることは難しい課題。
彼らにとって、移動は生きるための必然だから。
最後に。TRAVEL BY AIR(空の旅)の魅力も同時にお忘れなく。
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