50歳からのハローシアター 訪問レポート
これは、コロナ禍で日常生活にも大きな変化があった2021年、「50歳からのハローシアター」が野外演劇イベントを行った際に、エピローグで語られた言葉です。「50歳からのハローシアター」は、長い人生を歩いてきたシニア世代の人たちの経験や知識、深い感性といった魅力を演劇やダンスなどのアートを通して表現していくプロジェクト。
8月のある日、京都で月4回行われている稽古を見学にうかがいました。そこには、山あり谷ありの人生を経たメンバーの今を肯定しあいながら、感情を自由に表現することのできる場がありました。
からだを、息を、合わせるウォームアップ
主宰の細見佳代さんの導きで稽古は進んでいきました。まずはウォームアップから。片足をあげて両腕をのばしてバランスをとる、全員で空間を走り回る、後ろ向きに走る、といった動きをかさねて、身体の軸や今日の自分の感覚を確かめていきます。ウォームアップの最中は「みなさんすばらしい!」「いいですよ~」と細見さんが声をかけ続け、終始和やかな雰囲気。細見さんからの、「演劇では、からだを合わせることと、息を合わせることが大切ですよ」といった言葉を聞きつつ、次は隣の人に向けて手を鳴らして、音と動きをまわしていきます。
徐々にウォームアップの難易度をあげて、音と動きを歩きながらまわしていきます。ここまでくるとなかなか、息を合わせるのが難しい……
つづいては二人組に。向き合って、ひとりの動きをもうひとりが鏡のように真似をしていきます。「ひょうきん」「色っぽい」をテーマに、言葉からイメージして、身体をつかって表現しています。
言葉を伝える発声
動きのあとは発声のレッスン。①自分を励ます言葉、②誰か特定のメンバーへの励ましの言葉、を順に考えて声を投げかけていきます。細見さんいわく、こうすることで「声のコントロール」が自然とできるとのこと。メンバーからは「自分をはげますのは簡単や!」「このメンバーやとよけいむずかしいわあ」といったつぶやきがこぼれます。メンバーのみなさんが考えた言葉がこちら。やっていくうちに、「うそついたらあかん(笑)」「うれしー!」と返事がかえってくるようにもなりました。
発声の次なるテーマは「心の叫び」。壁をつきやぶって遠くまで声をとどけるイメージで声をだしたり、目いっぱい語尾をのばしたり。ひとりが叫んだ言葉を他のメンバー全員で繰り返す、というのも試しました。
みなさんの心の叫びは例えば…
・79歳の今が幸せです
・長さじゃないぞ、人生は
・じいやに100歳まで生きてほしい
・料理できる旦那がほしい
・10代に戻って人生やり直したい
などなど。「自分ひとりだったらはずかしいけど、みんなが一緒に叫んでくれるから言えた」というメンバーの方の言葉に、ハローシアターの活動を通して、これまでそれぞれが歩んできた人生や今の生活を認め合うような関係が育まれているように思いました。
ここまでで約1時間ほど。休憩のあいだもにぎやかなおしゃべりが続きます。後半の稽古では「関係性を表現する」ことに取り組んでいきました。
静止画で関係性を表現する
まず舞台にみたてたスペースに椅子をひとつ置きます。そのあとひとりのメンバーがでてきてポーズ、さらにもう一人がでてきてポーズ。その場面を見てみんなでタイトルを考えます。
「一枚の静止画だけでもいろんなことが伝わりますね」という細見さんのコメントに一同納得。稽古は、関係性を1から10のなかで数値化してみましょう、と続いていきます。「関係が濃いほどいがみあったりするやろ」といった含蓄のある言葉が飛び交い、ツッコミを入れ合いながら数値化したものがこちら。
これらの数字が書かれたくじをひいて、ペアでその関係性を静止画で表現してみます。
関係性を表現する稽古は続き、次は3~4人組に。「孤独感」「恐怖感」「達成感」「幸福感」のいずれかが書かれたくじをひいて静止画をつくります。
最後はさらに1グループの人数を増やして4~5人で一組になり、これまでの人生のなかで幸福だったシーンを思い出し「幸福感」を表現しました。家族で桃園で桃狩りをした思い出、退職した日や夫婦で何かを成し遂げたときの思い出。
「幸福感」と聞いて自分のこれまでを振り返って思い浮かべるのは、人生の転機のこともあれば、普段の生活のなかの一場面であることも。年齢を重ねるとは、そうした一日一日を生きてきた証なのだということを、あらためて感じさせられました。
演劇と聞くとハードルが高いように感じられるかもしれません。ですが今回取材のはずが、ろうきんの職員さんもたんぽぽの家の事務局スタッフも、ほとんど最初から最後まで(しかもずっと楽しみながら!)稽古に参加していました。
11/18(土)のワークショップでは「手」を題材に、ひとりひとりがこれまで生きてきた中で得たもの、手放したもの、を言葉や身体で表現していきます。演劇経験のあるなしはもちろん問いません!
舞台の上で感情を自由に表現する楽しさを、ぜひ一緒に楽しんでみませんか?お待ちしております!ぜひご参加ください。
レポート:中島香織(一般財団法人たんぽぽの家)
撮影:仲川あい
【↓↓50歳からのハローシアターの細見さん、メンバーのみなさんと一緒にワークショップをします。参加者大募集!↓↓】
エイブル・アートSDGsプロジェクト2023
LIFE IS ART 〜生きることは表現すること〜
■日時 2023年11月18日(土)
■場所 近畿ろうきん肥後橋ビル 12階メインホール(地下鉄四つ橋線「肥後橋駅」10番出口すぐ)
(〒550-0002 大阪府大阪市西区江戸堀1丁目12−1)
◼︎参加費:無料 要申込み(下記の申込方法をご覧ください)
展覧会・ストア/10:00 - 15:30
ワークショップ/10:00 - 11:30(受付 9:30-)
フォーラム/13:30 - 15:30(受付 13:00-)
超高齢化社会のただなかで、いつまでも元気でいたい、地域の人たちとつながりたい、誰かの役に立ちたいという人が増えています。
わたしたちが実現したいのは長い人生のどんな局面でもその人らしく生きられる、豊かな社会です。その豊かさをつくるひとつのヒントは、創造的な活動、アートやものづくりに関わることです。その人の存在の輝き、多くの人に届くアートの力が、経済的な発展だけはない、人々の精神の充足に欠かせません。
年を重ねていくこと、生きることと表現することのつながりについて一緒に考えたいと思います。
今回は、表現することをとおして、その人らしく生きる実践をしている事例を紹介します。
会場内では、展覧会やストアもオープン。関心のある部分に参加いただいても、通しての参加も大歓迎です。
◼︎内容
【ワークショップ】
「手が語る、わたしの人生の物語」
自分の手がこれまでに触れ、経験し、手に入れ、手放したことやもの。それらを言葉や身体で表現しましょう。演劇経験のない方大歓迎!
◎定員:15名
◎ファシリテーター:細見佳代、50歳からのハローシアターの俳優のみなさん)
【フォーラム】
「高齢化と表現を考える」
出演してくださる「紙芝居劇むすび」「50歳からのハローシアター」の取り組みから、そのヒントを議論します。フォーラム内では両団体の公演も行います。
◎定員:50名
◎登壇者:細見佳代(50歳からのハローシアター主宰)
石橋友美(紙芝居劇むすびマネージャー)
◎進行:岡部太郎(一般財団法人たんぽぽの家 常務理事)
※情報保証について フォーラムの開催中は会場内で字幕表示をします。
◼︎ワークショップ・フォーラム 申込方法:
こちらのフォームよりお申込みいただけます。
メール、電話、またはFAXにて
[お名前/所属(任意)/参加希望 プログラム(ワークショップ・フォーラム)]を
下記までお知らせください。
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一般財団法人たんぽぽの家(担当:岡部・中島)
Tel. 0742-43-7055 Fax.0742-49-5501
E-mail. ableart@popo.or.jp
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◎主催:近畿労働金庫
◎企画・運営:一般財団法人たんぽぽの家
◎協力:NPO法人関西NGO協議会・きょうと障害者文化芸術推進機構 ART SPACE CO-JIN・(社福)わたぼうしの会
◎後援:大阪府・大阪市・(社福)大阪府社会福祉協議会・(社福)大阪市社会福祉協議会・(一社)大阪労働者福祉協議会・大阪府生活協同組合連合会・こくみん共済COOP(全労済)大阪推進本部
★詳細はこちらからご確認ください。