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ババア☆レッスン(その13・更年期を抜けた気がしたから、その記念に「樹海」に行った話)

 閉経した年齢を挟んで、前後5年を合わせた計10年の期間が「更年期」とされている。人それぞれではあるが、ざっくりと10年である(8月に出た拙著「生理終了!と思ったら。更年期メンタル、私なりの付き合い方」を読んで頂けますと幸いです)。
現在55歳の私。もうすぐ50歳というあたりで閉経したので、数字の上では「更年期終了」という事になる。「お勤めご苦労さん」なのである。
 以前の私であれば「・・・ホントに更年期過ぎたのかな・・?」と訝しんでいたかもしれないが、最近の私は、随分といい意味で「アホ&テキトー」になった。メンドくさい事にいちいち頭を悩ませる事が少なくなったのである。
なので、勝手に「もう更年期終わった!!ハイ、終了、終了〜〜〜!!!」とさせてもらう事にした。

 そんなわけで、更年期終了記念に、以前からずっと行ってみたかった「青木ヶ原樹海」に一人旅をする事にした。
「なんで樹海なのよ?」と思われそうだが、樹海といえば「自殺の名所」。私はあえて、そういう場所を「再生記念の場」にしてみたいと思ったのだ(てか、単純にホラー好きというのもあるのだが)。

 2024年の10月15日火曜日。
バスタ新宿から、午前8時35分発の高速バスに乗って、一路、河口湖駅へ。道中、約2時間。初めて降り立った河口湖駅は、もの凄い数の外国人観光客で溢れかえっていた。
「え!?日本人観光客って、もしかして私だけ?」ってくらいに、とにかく外国人しかいない。国際色も豊か。富士山ブランドのスゴさを垣間見た気がした。

 てなわけでとりあえず、小腹を満たすために、駅の目の前にある食堂へ。
当然のように客は皆、外国人だらけ。店のおばさんが客に「センキュー、バイバ〜イ!!」と声をかけていて、なんかよく分からんが、たくましさというか頼もしさを感じた。880円の野菜天ぷらうどんをズルズルとすする。 

ナポリタンからほうとうまで!世界中から押し寄せる観光客の胃袋を満たすメニューの豊富さ!

樹海へのルートは、駅前から西湖周遊バスに乗り、西湖コウモリ穴で下車。時間にして約30分ほど。
バスの中は満員で、多種多様な国の言語が飛び交ってたのに、コウモリ穴で降りたのは私一人だけ。とりあえずバス停前にある「西湖ネイチャーセンター」へ。
ここの駐車場奥が樹海への入り口らしいのでウロウロしてたら、どうやらそこの職員さんらしき、60代くらいのおばさんが「こんにちは〜!!」と元気に声をかけてくれた。
 樹海の入り口付近には、トレッキングツアーの団体さん(10人くらいの日本人)がいる。それ以外は、普段着姿の日本人男性2人組。
とりあえず、樹海遊歩道の地図看板を見たが、正直どうすればいいか分からず・・・・それで仕方なく、バス停のあたりに戻ってタバコを吸った。そして再度、ネイチャーセンター前へ。そこでまたしても同じおばさんに「こんにちは〜!!」と声をかけられる。
「あなた、さっきバスから降りた人よね?」「はい・・・・」
なんとなく感じたのだが、この「声がけ」、多分、自殺志願者かどうかチェック入れてるんじゃないかと思った。私はその日、リュック背負って全身ジャージ姿だったので怪しまれてるとは思わなかったが、もしこれが「ワンピース姿にサンダル履き・目がうつろ」とかだったら絶対アウトだったかもしれない(男性の場合は、スーツ姿とか怪しまれるらしい)。

 私がそのおばさんに樹海を散策したい旨を告げると、おばさんは「青木ヶ原樹海ガイドマップ」なるものを手渡してくれた。
「あすこが入り口だから!!」と教えてもらい、礼を言って森の中に入ってみたが・・・「え・・・・??何これ、道なんてないじゃん・・・??」
ここは入り口ではないのか??と一人ウロウロしてたら、見かねたおばさんが駆けつけてくれた。
「ここが入り口よ!」「えええ!?これ、道なんですか!!??」

樹海、色んなルートがあるようです。

 ネットで前もって樹海に関しては調べてたつもりだった。
「樹海遊歩道」と書かれてたので、てっきり「遊歩道」的なものを想像してた。けれど、実際の「樹海の道」は全然「遊歩道」なんてもんじゃなかった。
人が歩いて出来た、かろうじて道に見える感じの、そんな程度の道。
しかも、原生林が醸し出す強烈な圧がもの凄すぎて、怖くて怖くて仕方がない。
「ゴールはどこを設定してるの?」と、おばさん。
「・・・一応、富岳風穴(ふがくふうけつ)目指して歩こうかと・・・」
「だったら、ここから大体50分くらいかな。もし道が分からなくなったら、引き返してくればいいから!!」
・・・・おばさん、道が分からなくなったらって簡単に言うけど、樹海で分からなくなるとか絶対まじで勘弁してくれと思った・・・。

落ちたら怖いです!!

 そんなわけで、初・樹海。「幻想的」とも言える光景かもしれない。
ナウシカがいつも肩に乗せてる、あの小動物が出てきそうな雰囲気・・・・ではある。
しかし、元々私は「樹齢がもの凄いことになってる木」に対して恐怖を感じるタチである(だったら何で樹海になんか行くんだよ、って話だが)。
とにかく怖すぎて、まるで泥棒のような足取りになってしまう。
こんなスピードで富岳風穴にたどり着けるのか? 

ナウシカの相棒のキツネリス「テト」が、ひょっこり出てきそうですね!!

しかしそれでも15分くらい歩けば、少しは慣れてきて写真を撮る余裕も出てきた。途中、ガイドさんの話に耳を傾ける団体さんにも遭遇したし、「このまま何とかいけるかも!?」とズンズン歩を進め、スタートから20分ほど歩いた地点で、ここから先の樹海ルートの案内板を発見。自分が道を間違えてなかった事に安堵。富岳風穴方面の矢印に従い、また歩を進めた。
・・・・・とまぁ、ここまではよかったのである。
 
 途中、外国人2人組とすれ違って以降、本当に誰とも遭遇しなくなった。
私以外、だっっっっっっっっれもいない。あのトレッキング団体客は一体どこへ?駅前にあんだけ群がってた外国人は一人もいねーのかよ!?
そして気がつけば、足場がどんどん悪くなってる。
道・・・らしき道に枯葉が溜まってたりで、「これ、ほんとに道なの!?」と確信が持てなくなり、不安になりながら進む。
 しかしそれでも頑張って歩いてたら、ようやく「富岳風穴」を指す案内板を発見した。 

思いっきり「悪路」って書いてあるのに何故かこっちを選んでしまった・・・。

ここからは二股に分かれていて、どちらを選んでも目的地に到達できるようである。
それでとりあえず私は右の道を選んだのだが、これが本当に失敗だった。
とにかくとんでもない悪路で、倒れた木をまたいだり、時にはしゃがんでくぐり抜けたり、顔中蜘蛛の巣だらけになり、枯葉のせいで正しい道をあるいてるのか分からなくなる。まだ午後の1時半とかなのに、心なしか日が傾き始めてる気もするし。そして。
 「これ、どっちの道進んだらいいんだ・・・?」
二股に分かれてるような所に出くわし、どちらも道に見えなくもないが、どちらも道ではないような・・・要するに完全に「?????」になってしまったのである。頭の中、一瞬、真っ白。・・・進む??戻る??どうする・・・???そんなふうに、体が固まって動けなくなってる時だった。

 いきなり、握りしめてたスマホから、着信音が樹海の中で鳴り響いた。
「誰!!??」
唐突に、心当たりのない番号からの着信。恐る恐る出てみたら、
「◯◯新聞の世論調査にご協力お願いを」という女性の機械音声が。
慌ててブチっと電話を切って、そして思った。
「ここ、電話通じるんだ・・・・!!」

正直、こんなとこまで来てトンマな電話に出るのもどうかと・・・。

なんとなく、イメージ的に「樹海では電話とか通じなさそう」と思ってた。でも、このへんはどうやらまだ通じる、という事が分かったら、多少の安堵感を感じた。そして「とりあえず、さっきの二股の案内板のとこに戻ろう!!」と思った。とにかく絶対パニックになってはいけない、パニックになったらもう何も出来なくなると思った、気をしっかり保て!!である。

一見、森の小人が助けてくれそうな風景だけど、一応、自殺の名所よ!

そこからはもう、頭の中は「道!!」一色であった。
元の二股地点に戻り、今度は左側のルートを歩く。
案の定こちらも枯葉で道が覆われてて、正しいルートを歩いてるのか不安になった。しかし「ここは道だ!!道!道!道!道!!!」声に出してズンズン歩き、当然周りの風景に目をやる余裕など皆無。というか、あえて見ないようにした。というのも、そうしてないと、頭がグルグルしてきてボーッとしそうになったからだ。 

この右側の、枯葉まみれのとこが「道」なんですよ・・・。

「富岳風穴まであと0・6km」という案内板を見つけた時は本当に嬉しかった。そして、最終的に樹木の向こうに、車が走り抜ける様を見た時は本当に、腹の底から「助かった・・・・!!!」と思った。
 ネイチャーセンターのおばさんは「歩いて50分くらい」と言ってたけど、私の場合スタートしてから1時間半は経っていた。 

出口を目の当たりにして、最後に振り返って撮影した風景が、こちら。
血眼な形相でさまよう中年女がここに居たら怖いわね!!

その夜ビジネスホテルで、樹海で撮った写真を眺めながら、つくづく思った。
「・・・・よくこんなとこ、一人で行ったなぁ・・・」
ペットボトルのお茶を持参してたが、一滴も飲む余裕がなかった。
樹海の中で、記念に自撮りしよう!と目論んでたが、当然そんな余裕も皆無。ただひたすら出口を求めて、必死の形相で樹海を歩く中年女。
本気で恐怖を感じた時間ではあったが、「大冒険が出来た」という、何ものにも変えられない満足感を得る事が出来た。

翌日の富士山!朝っぱらにもかかわらず、たくさんの外国人観光客が撮影してました。

 てなわけで、翌朝6時。河口湖周辺をランニング。
あいにくの曇り空ではあったが、富士山がドド〜ン。
いわゆる「ザ・富士山」的な写真は撮れなかったけど、やっぱり感動。
富士山にみとれながら走ってたら、突然段差につまづき、被ってたキャップも吹っ飛ぶほどに、漫画みたいに激しく転倒。前歯折るかと思った。
右手を派手に擦りむき、朝から血を見た。
途中、公衆便所で血を洗い流したら、水がしみてメチャクチャ痛かったのだけど、何故か妙にスッキリ晴れやかな気分になった。
鏡を見たら、顔も土まみれだったので適当に洗った。
そしてコンビニで絆創膏を買って貼り、また走ってホテルに戻った。
なんか色々バカバカしくて「あ〜〜〜面白かった!!」と思わず声に出して笑ってしまった。
これもまた、ひとつの冒険。


 というわけで樹海に思いを馳せながら、こちらの曲をお聴き下さい。
安田成美「風の谷のナウシカ」




 

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