着物、はじめました。(その15・姐さん降臨!!七緒「魔法の15分着つけ」著者、山村若静紀さんにお会いしたのだ☆)
ここ数年あたりで着物にハマった人なら、多分読んでる人も多いと思う。
お洒落な着物雑誌「七緒」から出てるムック本「魔法の15分着つけ」。
かく言う私も、実はその読者の一人である(こちらの本は、本名である「堀口初音」さん名義で出版されています。「山村若静紀(わかしずき)」というお名前は、日本舞踊山村流師範としての芸名なんだそうです)。
「15分でっっっ!!!」と言い切る、その力強いタイトルにほだされ飛びついた、着物1年生時代。鼻息荒く、新宿紀伊国屋書店にて購入した。
その後は、「使ってナンボ!!」と、カバーをガスッとはずして何度も何度も、一字一句読み込んで実践に励んだ。
写真も大きく説明文もシンプルなので、初心者にとって、ものすごく分かりやすい内容の本だと思う(石田節子さんと若静紀さんの着付け本は、私にとっての2大バイブルである)。
そして、その本の中で特に印象に残ったのが、著者である若静紀さんの、着付けへの思いを語ったインタビューだった。
「おはしょりの右側のくしゃくしゃを気にする人が多いけど、誰も見いひんやん、そのために袖あるやん(笑)」というこの発言。
雑誌のモデルさんみたく、ビシっと隙のない着こなしなんて目指さなくていいとおっしゃっていたのである。
「着物→完璧にキレイに着なきゃいけないもの!!!」と思い込んでいた私が、激しく衝撃を受け、白眼になったのは言うまでもない。
というわけで。
私が若静紀さんとお会い出来たキッカケは、実は「ツイッター」なのである。
たまたまツイッター上で若静紀さんのツイートに出会い、「あれ?この方、もしかして、あの15分着付けの!?」と気がつき、即フォロー。
そしたらなんと、若静紀さんも私をフォロー仕返して下さったのだ。
私が飛び上がって歓喜したのは言うまでもない・・・・・が。
「・・・・なんで日本舞踊家で着付けの先生をやってる人が、私の事をフォローしてくれたんだろう・・・・????」という、大きな深い謎が残った。
そしてその後も、私のくだらないツイート(例えば「今やってるテレ東日曜ミステリー、主演の名取裕子&夏樹陽子の銀座ママ姿・眼福」など)に、若静紀さんが「いいね」を下さるたびに私は歓喜してたのだが、しかし。
その都度よぎる謎の思い。
「・・・・・・なんで日本舞踊家で着付けの先生が私のこんなツイートに(以下略)」。
そして最近の話になる。
若静紀さんが仕事で行った、白金台にあるワインバー「ソルト&プラム」。
ここの女将が「和服姿の相当なべっぴんさん」という事をツイートなさってて、写真を見たら本当にべっぴんさんだったので思わずリツイートしたら、若静紀さんが「もしよかったら、こちらのお店にご一緒しませんか?」
とお返事を下さったのである!!私が歓喜歓喜で夫に(胸ぐら掴む勢いで)ギャアギャアと報告したのは言うまでもない・・・・・・が。
素に戻って脳裏をよぎるこの思い。
「・・・・だからなんで、日本舞踊家で着付けの先生が(以下略)」。
というわけで、実際、若静紀さんにお会いして、そして知った驚愕の事実。
なんと、若静紀さんは私の漫画を読んで下さってたのである。
しかもかなり初期の頃から。こんな事実、全く想像してなかった。
私が、またしても歓喜まみれで、マスクの内側に飛沫飛ばしまくりになったのは言うまでもない・・・・が。
読者の皆さんも、やはり再度思ったのではないだろうか・・・・・「だからなんで、日本舞踊家で着付けの先生がアビコの漫画を(以下略)」。
(・・・いや、人生色々なんだから日本舞踊家の方も漫画読んだっていいじゃないか。若静紀さん、最近、「進撃の巨人」読みまくってたようですし・笑)。
本当に、この、不思議で素敵なご縁に感謝しかない。
若静紀さん50歳、私51歳の同世代。
昨今、自分と同じ年頃の女性と出会う機会がほとんどなかったので、なんだか素直に嬉しい(とはいえ実は初めてお会いした時、若静紀さんの事、40歳くらいだと思った。そのくらい、お若く見える方である)。
若静紀さんが日本舞踊の世界に入ったのは、3歳の頃からだそう。
だからこそ、筋金入りで「着物慣れ」してらっしゃるのだ。
なにしろ、若静紀さんのその「着物の着姿」たるや。
「かっ、体がっっ、着物の中で泳いでるみたいっっっっ!!!!!」
そうなんである。「体がゆったり泳いでる」ように見えたのだ。
びっくりした。出会い頭に、思わず声を大にして言ってしまった(飛沫はマスクで遮った)。この感覚、着物を着ない方には、ちょっと伝わりづらいかもしれないが。
「着物、ぜんぜん苦しくないですよ〜」と笑う若静紀さん。
その着姿はなんというか、ふわっとしていて、適度にミルフィーユっぽく空気を含んでるような軽やかさがある。雑誌に出てくるような「着物や帯がビッチリ体に吸い付いてる」ような着姿ではない。なんというか、レタスのサンドイッチみたいな軽やかさというか(なんだそれ)。
でも、素人の「ブカブカ空気を含んで、襦袢と着物が一体化してない」みたいな、そういう着方とは全く別物なのである。
「帯もね、グーが入っちゃうくらい上がゆるめだから、ほんと、苦しくないんですよ」そう言いながら、思いっきり、帯の胃袋部分にグーを、ズボ。
「帯は上じゃなくて、下を締めるもの」という鉄則をリアルで目の当たりにして、目からウロコがボロボロ落ちまくりである。
それから。
「肩っっっっ!!!若静紀さんの肩、こう言っちゃなんですけど『昔の人の肩』みたいっっっっ!!!」
ゆるやかなその「なで肩」に目が釘付けで、もうさっきから私、うるさいったらありゃしない。
「あ〜〜、肩ですか〜、確かに『令和の肩』じゃないかもしれませんね〜(笑)」はんなり&のんびりした関西弁の若静紀さん曰く。
「着物着て踊ってると、どんどん肩がこうなってくるんですね〜。で、自然と背中の肩甲骨部分も、漢字の『水』みたいになってくんです。生徒さん達も、踊り始めた最初の頃はやっぱり肩がガッチガチなんですよ。でも、半年くらいすると、自然と力が抜けて、肩のラインが変わっていくんですよね〜」
若静紀さんの着物姿は本当に、見ていて全く威圧感がない。
相手に緊張感を与えないというか。
襦袢、着物や帯、紐がケンカせずに仲良く体に寄り添ってる感じ。
それに比べて私なんて、「頑張って着ました」感、アリアリだ。
無理くり、体と着物を一体化させようと頑張っちゃった風情で、それがちょっと恥ずかしかった。
ところで話は逸れるが、実は私、市川崑の映画、金田一耕助シリーズの大ファンである。
それで今まで、アホみたいに何度も観てるのだが、出てくる女優さん達の着物の着方がすごくいい。本当にザックリとした、すごくリアリティを感じさせる、生活感ある着姿なのだ。
若静紀さんの着方には、それに通じるものがあるように思った。
若静紀さんが金田一シリーズに出ててもおかしくないような感じ。
「お客さん、どこから来はったん〜?」とか言いながら、宿帳片手に出演してそうな雰囲気がある(余談であるが、「犬神家の一族」。76年に公開されたものは、女優さん達が自ら、自分で着物を着たような雰囲気があって、私はすごく好きです。けど、2006年のリメイク版は、もう、キッチリと着付け師さんが着物着付けました、って感じで、これちょっと違うよなぁって感想を持った記憶が)。
若静紀さんから醸し出される「軽やかさ」は、多分、「補正をしない着方」にもあるんじゃないだろうか。若静紀さんは「15分着つけ」の本の中でも「よほど大きなバストでなければ和装ブラは付けなくてもOK」とおっしゃってる。それで、もしやと思って聞いてみた。
「もしかして、ノーパン派ですか?」
「もう、パンツ嫌いなんですよ〜〜(笑)」
・・・・・実は私も、着物の時のパンツが苦手派である。もう、トイレでのあの上げ下げが本当にまだるっこしくて、イライラしてくる。
それで結局、途中、トイレでパンツは脱いで、着物の袖にベシッと放り込んでしまう時もある(イキのいい奴)。
最近は「シレッと閉経」した事もあって、もう生理に悩まされる事もないから、「襦袢の下に、裾よけ付けてりゃ平気だろ」と、最初からノーパンで闊歩する日もある。
若静紀さんも「そうそう、裾よけ裾よけ」と、ノーパン推奨。
お若い方は色々不安もおありだと思うが、是非一度は試して頂きたい案件である。
さて。
若静紀さんと訪れた白金台にある、このワインバー「ソルト&プラム」。
若静紀さんイチオシのべっぴん和装女将・門脇さん。
この方がまぁ〜〜〜〜〜本っっっ当にべっぴんさんで、チャーミングで、ちょっと衝撃ですらあった。ワインのおいしさもさることながら、門脇さんの眼福っぷりたるや。(門脇さんのお店はこんなかんじです
https://www.gnavi.co.jp/dressing/article/22391/)
そして、若静紀さんもだけど、門脇さんも、肩が華奢でお顔も本当にちっちゃいもんだから、この日私は、なんだか自分が一人だけ「ケンシロウ・もしくは身長2・5メートルくらいの、ガタイのいい伝説の雪男」になったような気がしました(泣)。
この連載の中でも(って、勝手に書き散らしてるだけですが)何度か書いたと思うが、やはり、毎度毎度「キレイに着付けなきゃ!!!」と、緊張しながら着るのは、ホントに良くないんだなーと思った。
そういうメンタルで着た着姿は、やっぱりどうしてもガチガチになる。
そしてそれが、時間の経過と共に、体をどんどん疲れさせてしまう要因にもなる。
普通に椅子に腰掛けるのも、なんだか座りづらくて「そのまんま立ってる方が楽」だったりするの、これ、もしかして同じご意見の方もいらっしゃるのではないだろうか。電車の中でも、席空いてるのに立ってたりして。
本当に、普通に動きづらいわ、着崩れを気にしすぎだわで、例えばもし。
着物姿の時に、好きな男に後ろから抱きしめられて、うなじにキスなんかされたら、貴女ならどうします?(壮大な妄想)。そんな時に、目を三角にして「衣紋がつぶれるから、やめとくれやす!!!!」とか言うのも、無粋の極みと言えるだろう。
「踊りの世界では、きれいにきっちり着てるのって、案外、野暮って言われるんですよ〜・笑」
そう教えてくれた若静紀さん。
足元は白足袋に、黒塗りの四角い下駄で、これがめちゃくちゃカッコよかった。そして。
「私、着物以外の服って、ジャージしか持ってないんですよ〜〜」
帰りの電車の中で(声を潜めて)大爆笑。
今回私は、若静紀さんに実際に着付けを教えて頂いた、わけではない。
けれど、目で見て感じて、色んな事を教わった、と思った。
若静紀さんの存在自体が、自分にとって勉強になった感じである。
本当に目からウロコで、バカみたいにビックリしながら、次から次へと質問責めにしてしまったのだが、若静紀さん、のんびりした関西弁で沢山お話して下さって、感謝感激でした、本当にありがとうございました!!
若静紀さんからも、その後「着物、グサグサ、らくらくに着て下さったら嬉しいです」とメールを頂きました。
というわけで、シメになりますが。
・・・・・いやぁ、着物って、ほんっとうに、いいもんですね(←「金曜ロードショー」の解説者・水野晴郎風に。お若い方々は全くご存知ないですよね、すんません)。