4/19

夏日。雲は薄く引き延ばされてあって、それだけ4月っぽかった。
この日差しがだんだん手に負えなくなると、夏なんだなと思った。

先生の諮問に耐えて、ブコウスキーの『郵便局』を読みながら坂を下る。
ページが白くて、日光の反射で網膜に焼き付くほどだった。
白いつつじが、重なって咲いていた。
200円くらいで読めたらいいのに、という内容。
でも、光文社古典新訳文庫なので1100円する。
内容の理念と、合っていない。

なんだかんだ16:00まで病院にいる。
17:00のチャイムを聞いてから、銭湯に向かう。
今日は腰が痛いので、自転車ではなくて歩きで向かう。
銭湯に着くと18:30くらいで、まだ明るい。
露天風呂で空を眺めると、薄青く、途切れがちな雲が夕日を受けて赤い。
作り物めいていて、これはビーナスフォートの天井みたいな空だった。
ビーナスフォートとは、お台場にあったショッピングモールで、天井に空の絵が描いてあって、いつも夕焼けの快晴だ。

Googleマップが変な道を提案してきたので、従ってみる。
もう暗い。
変に葛折りの坂を登っていく道。
さっきまでいた平地が下に見える。
銭湯と、スーパーのあたりだけがぼうっと光っている。

車通りのない車道の真ん中で、14歳くらいの少年とその父親が、分離帯に立って、投球のフォーム練習をしている。
理想のフォームに整えられた身体のまま少年は
「洗ったの?」
と大きな声を出す。
その先には、少年の、姉か、妹か、とにかく歳の近い兄妹がいたみたいだった。
「まだ。だけどこれから塾行かなきゃ行けないから」
「時間あったじゃん」
歩いて塾に向かっていくみたいだ。
この辺りには、コンビニが国道沿いにしかなく、その国道にはビックボーイとココスだけある。
ここの人はどうやって暮らしているのだろう。
日本のほとんどの面積は、ここよりも更に田舎で、田舎とも呼べないような剥き出しの自然が多くを占めている、ということを強く意識する。
歩いて行き帰るには遠すぎる銭湯と寮までの道を歩きながら、強く意識する。
この場所を知らない人、この場所に住んでいない人と一緒に、この場所を歩きたい。
例えば、彼女とか。
誰かに言いながら、歩きたい。
それくらいに心細くなった。

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