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4月から東京で働くことになった後輩の、引っ越しの手伝いをした。

こう書くと、なんだか自分がよくある、フィクションの中の先輩になったみたいで居心地が悪い、と、後輩に言った。
「今日の日記はどう書こうかな」
と、別れ際、駅舎の中で言った。「例えば、『後輩の引っ越しを手伝った』から入って、めちゃくちゃサブカルっぽくすることもできるわけだ」

「3月20日から日記書いてるんだけどさ、3月20日に『4月から毎日、日記書こうかな』って思ったんだよね。それで、なんで今日からやらないんだろう、今日からやらない理由特にないな、ってなって、それで、その日書いた」

後輩は、高校時代に脚本や短歌を書いたりしていて、今もブログなどで書き物を続けている。
後輩は、自分のことを書くことが苦手で、むしろ他人のエントリーシートなら喜んで書くことができるようだ。

「僕は自分のことしか書けないな」
「でも、僕ももう、最近は自分の自意識の話とかは書く気が起きなくて、だから日記もなるべく出来事を書くようにしてる」
この日記を、随筆みたいだ、と言う人もいる。

この駅は、僕の最寄駅から20分ほどで着く、神奈川の、各駅電車が停まる駅で、駅構内にはスターバックスとスーパーが、駅前にはマックとケンタッキーとミスドがあるのに、反対の北口には、田舎の国道沿いにあるみたいな大きなドラッグストアがあって、10分ほどで山道のような場所に至る。反対に、ケンタッキーやマックのある通りを進んでいくと10分ほどで河川敷に、川に至る。

後輩の家は、家賃5万7千円のワンルームで、近くに大家が住む一軒家があり、毎月そこに手渡しで家賃を払いにいく必要がある。
大家の家の前を通りかかると、ちょうど大家が玄関に入ろうとしていたところで、後輩が挨拶をして、僕はそのとき、買ってきたネギトロ巻きの入った袋を持って立っていた。大家の家は植物で埋もれていて、道路にはみ出した木の枝が影を作っていた。

後輩の部屋はリビングが10畳くらいあって、ゴキブリが出た時のことを考えて、家具が全て床から離して置いてある。リビングとキッチンを仕切るのれんは横浜で買ったもので、僕はそこに仕切りのためののれんを買ったりしない。広さや家具の配置、ドアの古さなどは、フィクションで見る、われわれが想像する、一人暮らしのイデアみたいな部屋だった。
引っ越し自体はもうほとんど終わっていて、僕は家電が運ばれてくるのを一緒に待って、電子レンジを冷蔵庫の上に持ち上げたり、段ボールの片付けを手伝ったりするくらいで、すぐに散歩ということになった。

春は快晴が少ない気がする。
APITAの中を隈無く見る。
くまざわ書店の品揃えを確認する。くまざわにしては、岩波文庫が多い。
ニトリでキッチン用品をみる。
僕はもう、自炊の時に計量カップは使わなくなっていた。
文房具屋。
2、3階が駐車場になっている大きいスシローがある。
川向こうの、大きなブックオフの店内を一通り見る。
ブックオフは、ある程度大きくなるとUFOキャッチャーと、チュッパチャップスの自販機を置き出す。
さっき通った時に、後で寄ろうと言っていたカフェに入る。
喫煙可能店だった。
自然公園まで登っていく。
一軒家の、それぞれの形を見ていく。
こうやって、何度も引っ越しをすることができれば、と思う。

















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