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この歯の銀歯をはめたら、この歯医者はやめにしようと思った。
同時に多くの患者を捌くので、椅子に座っている待ち時間が長い。そして、だいたい麻酔からして痛い。表と裏にブスブスやって、麻酔器からくるみ割り人形の音楽が流れる仕組みになっているのも気に食わない。彼女も同じところで治療しているが全然痛くないという。担当医が悪いのだろう。今回は表だけ麻酔して、裏がないので良かったと思っていると、詰め物を削りなおしているときに激痛が走り、結局表にも裏にも麻酔を刺し直した。麻酔が効くのを待つ間に他の患者を診ているので、正味30分ほど席で待っている。そもそも詰め物を削るときに痛みが出ることは今までの経験上無かった。再度詰め物をされたが、それもおざなりで、キシキシするし、その後ハンバーグを作って食べたらすぐに詰め物が取れた。水でゆすぐだけで激痛が走ったので電話した。16:30か19:00になる、というので「今、痛いので、今、やってください」と強く言うと「では今からいらしてください。待っていただくと思います」と言われる。苛々しながら受付にカードを渡すと、すぐに歯科衛生士に案内される。詰め物をする前に乾燥をさせなきゃいけないということで、無麻酔で歯の穴に空気を吹きかけられた。痛かったら左手をあげてくださいと普段言われているが、今回は全身をあげて海老反りになり、苦悶の表情を浮かべているがやめることはない。こんなことはありえないと思った。
17:30に大学の友達と新橋で待ち合わせた。ギリギリになってインスタで見つけた日本酒バルを予約していたのだが、バルと名のつくところにはもう行かないと決めた。ものはそれなりに美味いがコンセプトがはっきりしない。日本酒を多く取り揃えているのに、エビフライが名物だったりして、別にそれは日本酒に合うように作られていない。カウンターにはワイングラスが逆さに釣られていて、ヘンテコな徳利の絵がプリントされた額縁がかかっている。とくに積み重ねを感じないまま腹が膨れていって店を出た。思ったよりも二千円くらい高かった。
消化不良なので焼肉を食べることにした。新橋を歩いていて、いくらでも良い店がありそうだったが、探す気にはなれず、いそいそと決めて電話した。焼き肉屋は普通に良心的だった。
しばらく銀座の方まで歩いて、ルパンに行く。ちょうど太宰治が座っていた席に友達が、安吾が座っていた席に僕が座った。タバコが吸えないここはかなり俗物的になっていた。いや、タバコが吸えていたらもっと酷かったか。店主は女性客にやたら話しかけているし、そのくせフラッシュ撮影はダメだよなどと口うるさいことを言っている。もう諦めてテーマパークにすれば良い。
友達は昨日卒業式だった。僕も同じ年に卒業する予定だったが、いろいろなことが起きた。切れ切れに思い出を話すが、どれも何度も繰り返した話で、もう少し時間を空けて話したらもっと良いかもしれない。この6年、自分にとって滅茶苦茶に過ごしてしまったかもしれないと、なんだか投げやりな気分になる。だいたいこの歳になると、自分の地金が全く変わっていないし今後も大して変わらないであろうことが段々わかってくる。
友達は、変な教習所で免許合宿を受けてきて、授業は決められた教材は使われず、実際のドライブレコーダーを見させられて、おかしなところを考えさせるという授業が主だったらしい。実践的ではあるが、仮免や本免の試験には結びつきにくく、10人くらいのうち3人しか仮免に受からなかったという。画像問題だけは得意になったということだが、あれは別にみんな得意なのだ。彼も本免の試験に落ちた。彼はジンのロックを飲み下してしまって、食道が灼けた。彼も彼のままだと思った。結局みんないろいろのことをやらされるが、子供が子供のまま、訳もわからずに大人の仕事をやっていくうちに、ハタから見たら様になっていって、それでいつの間にか死んでいるだけなんだと思った。みんなもそう感じていたら良いなと思う。
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