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電車で3時間かけて館山駅まで。
パン屋の話をする50代くらいの夫婦。
僕が知っているパン屋の名前を挙げていて、そこは昔もっと安かったことを言っている。
沖縄のように開けた、そして同時に自閉的な庭を持った住居が、密集している。それぞれを葉の厚い植物が隔てる。午前中、デイスクールから出てきた高校生が、同じデイスクールの生徒に向かってすれ違いざまに「知らん、轢き殺せ」と言っていた。
クリームあんみつ。寒天が天草の匂いがする。つげ義晴を思い出す。
日帰り温泉のある旅館。干からびたプールがある。2階建てで1階と2階に客室があり、浴場は2階。海に面している。ちょうど西日。海の明滅。明るすぎて白くなっているところをお湯から眺める。いつまでも暑い。浴場全体が蒸し風呂になっている。何か頭の中で文章を組み立てていたが、忘れた。
帰りも電車で3時間。甘夏とナッツを腐らせたような、悪い部分を尖らせて凸凹を見えやすくしたような匂いがして、振り向くと限りなくしゃばい吐瀉物。服を汚した人物がこちらに向かって歩いてきて、別の車両に移った。自分の吐瀉物に自分で耐えられなくなったのだ。僕も車両を移ると、その男は今度はこの車両にも吐いた。電車は2両しかなく、比較的マシなこちらにい続ける。高校生たちが乗ってきて、すぐに顔を顰め、その正体がわかり、仲間内で笑う。どんどんこちらの車両の方に移ってくるが、どちらの車両も臭い。駅に着くごとに換気が少しされる。男は宙を見て耐えている。終点の一つ前で降りるとすぐにホームでまた吐いた。
こいつのせいで今日が台無しになったとも言えるし、こいつのおかげで今日は良い日になったとも言えた。