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彼女が美容室に行くので吉祥寺についていく。ブックオフで深沢七郎の対談集を買う。深沢七郎が変すぎて大江が全然喋らなくなっているのが面白いのと、山下清にタジタジしておる深沢が面白い。
夜は西荻窪にあるフィリピン料理屋にした。アドボというピリ辛の豚の角煮と、ホルモンがゴロゴロ入った焼きそば、それに辛くないトムヤムクンみたいなシニガンというスープ。東南アジアっぽい薄いビールもつける。シニガンに入っている魚は川魚のようで体高が太い。臭みがけっこうあり、スープのなかの生姜やトマトを一緒に食べてさわやかにする。骨や鱗がとても多い。旅行気分を味わうことができた。

近くのカフェを探すと23:00までやっているところが近くにあった。階段をのぼっていくと、うちには深煎りしかないこと、私語は謹んでいただきたいこと、珈琲を淹れているときは接客や会計はできないこと、写真は撮ってはいけないことなどが書かれた注意書きが貼ってあって、少し警戒したが入店した。店内は仄暗く、自習席のようなブースがいくつかあって、真ん中にカウンターがある。若い女性がマスターのようだった。産地と濃さを選び、テリーヌもつける。2人で静かにしている。注意書きを見たときは偏屈なじいさんがやっている店だと思ったが、それは偏見だった。珈琲は最初に強い苦味がきて深く潜り、それからゆるやかに上昇して水面に上がってくるような展開があった。テリーヌにはアブサンが使われているらしく、強い芳香があった。トイレにはドクロ、焙煎室にはロザリオがあった。マスターも控えめではあるがゴスロリ風ではあった。マスターが他の客に珈琲を出し終わる音を聞き分けて、隙をついて会計してもらった。なんだか気を遣った。

西荻窪か、と思った。

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