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英国JK vs 昭和おんな
知り合いの知り合い、のイギリス人女子高生(以下JK)を一晩お預かりする事になった。その間のJK語録を、おとな気なくもここに記したい。
#00 JK来訪前日までの予備知識
○外面
− クルーザーにのり、女優帽にサングラスで風をきるJK
− 彼と1ヶ月記念日。グラスを傾けるJK
− ヨガに週3で通うJK
− 森の湖でヒザまでつかり祈るJK(↑NEW)
○内面
「私、ビーガンなんで」
※ビーガン 完全菜食主義者
(肉魚乳製品、卵もダメ)
(私が送信した長文自己紹介後に
ポツリときた一言返信より)
リア充OLの休日みたいな高校生活をおくるJKに対し、高校時代は部活とうどん屋のバイトを全力でやっていた昭和おんなである私。
共通点が全くない。
#01 当日お迎えにて
電車でくるというJKを迎えに、車で駅にむかう。この自己主張強めのJKと、車内でいったい何を話せというのか。不安になりながらも、待ち合わせ10分前に駅に到着。
待つ。
そして待つ。
30分過ぎてもこないので、長時間用の駐車場に移動する。
1時間過ぎて、やっと現れたJK。
遅刻しておいて謝罪もないJKに、動じない大人を演じる昭和おんな。
挨拶をすませ、車に向かうよう促すと、至極自然に自分のスーツケースを手渡してきたJK。渡されるまま、ガラガラとでっかい荷物を車まで運ぶ私。早くも1敗。
助手席のJKはスマホを触っていたので、黙って運転する。すると、5分ほど経過したところで、JKがスマホに目をやったまま、話しかけてきた。
「で、イギリスで何をしたいの、アナタは」
急に、ひとの生き様を問うJK。
「や、パートと子育てで…」
と言いかけた所で、
「時間をムダにしてたらダメ。
私は一秒もムダにはしない主義」
と与沢翼氏みたいなJK。
「例えば、電車の待ち時間。こういう時どうする?わたしはムダにしない。あえて普段会えない友達を呼んでお茶する。時間は『作る』ものなの」
アンタが遅れた理由はコレか。と日本語でつぶやく昭和おんな。
#02 我が家にて
「ふーん。うちはトイレが6つあるけど」
と到着早々にマウントをとるJK。
聞こえないフリをして家族を紹介する、昭和おんな。
部屋に案内し、すぐ夕飯。
食事はお気に召した様子。
食後に皆でくつろいだ後、部屋に戻ったJKから皿を洗っている私にメッセージ着信。
「PJ忘れた」
パジャマ…
貸してあげたいが、恰幅が良いこのJKには、私のも娘のも入らない。傷つけないように、「新品はこれしかないのよー。ごめんねー」と夫の未使用のTシャツと短パンを貸したら、舌打ちしたJK。好みではなかった模様。
それでもたっぷり寝て、昼過ぎに起きてきて、トーストなんかを食べ、化粧をバッチリして、我が家をあとにすることになった。
#03 帰路にて
滞在16時間。帰路につくJK。
やり切った安堵と共に、車に乗り込む私。
運転をはじめると、
「あびかの食事、おいしかった。これを仕事にしたらいいのに」と褒めてくれたJK。
あらま。かわいいこと言っちゃってと思った瞬間、
「でもね、朝食に『はちみつ』だしたね。
あれは、ビーガンは食べない。
考えてみて。どうやってはちみつを取るのかを。あのね、要は、想像力なのよ、想像力。ぼーっと考えず何でも食べてちゃだめなのよ」
またスマホに目をやりながら、話すJK。
……
「想像力ねぇ。」
と、昭和おんな。
「確かに、わたしたちは動物を殺して食べる。自分以外の生命を奪って生きてる。
罪深いよね。
だから、日本では食事の前に
『(命を)いただきます』というんだよ。
そして、いただいた命をムダしてはいけない。お米ひと粒でも残してはいけないと、育てられるんだよ。
アナタ、さっきトーストを、真ん中の部分だけをくり抜いて食べたよね。6枚ほど。残りは捨てるしかなかった。植物の命はムダにしてもいいって、それこそ想像力の欠如だね」
美味しんぼの山岡さんが憑依した昭和おんな。顔をあげるJK。
「そう。ちゃんと人の顔をみて。
目を見て話すと分かる事もたくさんあるよ。
でも、まぁ、それとは別で、環境問題や工業畜産の食問題を自分でちゃんと考え意識することは、とても良いことだと思うよ。私もレシピ調べたり、勉強になったし。
で、どれぐらいビーガン生活してるの?」
「1週間」
ふてくされて言うJK。
たったの1週間でアンタ、こんなえらそうな…
そうこうしている間に駅に着いて、今度は自分でガラガラと荷物を引いていったJKを見送り、長い16時間が終わった。疲労困憊だったものの、最後に言いたいことを言ってスッキリした昭和おんなの1日が終わる。
…はずだったが帰宅後、JKの部屋のシーツを取り替えにいったら、
発見した。
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ちょっとアンタ!
こんな返し方はないわ!
ってメッセージしたら、
「また来年そっち遊びにいくわ。
A Happy New Year, あびか!」
と返信があった。
なんだか、結局ボロ負けした気がする昭和おんなだった。