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今さら聞けない投信のはなし ②  「規模の小さいファンドでも大丈夫?」

“今さら聞けない投信のはなし ①「規模の大きなファンドを選ぶべき?」”では、投信の純資産総額に着目する理由として挙げられる以下3点ですが、投信選びの基準として適切ではありません。

①  多くの人が買っている(保有している)ので安心
②  規模が大きいと分散効果が得られやすい
③  スケールメリットによる低コスト化
などについては、純資産総額の大きさをファンド選びの基準にする根拠に乏しいのです。
 
それでは、その逆はどうでしょう?
今さら聞けない投信のはなし②のテーマは、 「規模の小さいファンドでも大丈夫?」です。
 
ファンド選びの基準として「純資産総額の小さいファンドは避けるべき」という意見は、主に以下の2つが、その根拠といえるでしょう。


規模の大きなファンドを選ぶべき理由と同じように、正しいように感じられますが、どうでしょうか?
前回と同じように、個別に確認していきましょう。

 ①  充分な運用資産がないと運用成績が上がらない


基本的に、運用資産の多寡が、そのまま運用成績に反映することはありません。
この場合の充分な運用資産とは、ファンドの運用方針に則したポートフォリオを組める規模ということになるでしょう。運用方針に則したポートフォリオを構築するのに必要な資産規模は、ファンドの投資対象や運用方法によって異なりますが、運用会社である投信会社が認識しています。
稀なケースですが、当初募集期間で、ポートフォリオ構築に必要な資金が集まらず、設定を取りやめたファンドもあります。
そのファンドが存在しているということは、必要最低の資産は確保されているものと考えても良いでしょう。
また、“今さら聞けない投信のはなし ① 「規模の大きなファンドを選ぶべき?」”でも触れましたが、実際には、個別ファンドごとに運用しているのではなく、ファミリー・ファンド方式ファンド・オブ・ファンズ方式で、複数のファンドの資産が合同で運用されているケースが多くあります。
従って、個別のファンドの純資産総額だけを見て、運用効率等を議論するのは現実的ではありません。
 

②  繰り上げ償還になる可能性がある

長期投資を前提に投信を保有している場合、そのファンドが繰り上げ償還になってしまうのは避けたいところです。そのため、「純資産総額10億円(または30億円)以下のファンドは繰り上げ償還になる可能性が高いので避けるべき」という意見があります。
この10億円(または30億円)の根拠は、各ファンドの目論見書の中にあります。
繰り上げ償還については、各ファンドの目論見書に「信託の終了」という項目に記載されています。繰り上げ償還をする場合の一つとして、純資産総額(総受益権口数)が一定以下になった場合の記載があり、10億円(口)や30億円(口)としているファンドが多いのです。
2024年10月には34ファンドが新規設定されました。そのうち設定額が10億円未満だったファンドについて、繰り上げ償還のリスクを避けるべき。というなら、その7割以上の25ファンドを投資対象から外さなければなりません
 
実際には目論見書に記載されている純資産総額(口数)以下でも、運用を継続しているファンドは数多くあります。これは、前述したように、合同運用等で充分な運用資産が確保されているからでしょう。
 

  注意が必要な小規模ファンド


以上のように、ファンドの純資産総額について、過度に神経質になる必要はありません。
但し、注意が必要なケースもあります。
合同運用ではない、新興国市場(特に複数市場)が投資対象のファンドの場合は、要注意となります。
海外資産に投資する場合、現地で有価証券の保管料が必要となります。この現地保管料は、信託報酬とは別途、ファンド資産で負担します。純資産額の小さいファンドだと、運用成果への影響が懸念されます。
あまりサイズが小さいと、信託報酬よりも海外での保管費用の方が高くなってしまうこともあります。
 
ファンド選びの基本は運用実績の確認
「規模の小さいファンドでも大丈夫」とは、言い切れませんが、ファンド選びの際に、純資産総額で足切りをして、投資スタンスに適している好パフォーマンスファンドが対象外となっては、本末転倒でしょう。
運用効率やコストの面で注意が必要ですが、ファンド選びの基本は、運用実績の確認です。
 
ファンド規模が小さいがゆえに、運用効率が悪くなる、またはコスト負担が大きくなっていれば、他のファンドより劣化するはずです。従って、運用実績を確認すれば、そのようなファンドは、結果的に投資対象外となるでしょう。
 
繰り上げ償還については、運用実績が良好でありながら繰り上げ償還になってしまうのは、予め繰り上げ償還する基準価額の水準を決めているファンドを除くと、稀なケースです。
もし、保有している好成績のファンドが繰り上げ償還になったとしても、気持ちを切り替えて別のファンドを探せば良いだけです。
償還時の税金や新たに買付けるファンドの手数料で、トータルの運用効率は落ちるかもしれませんが、成績の良くないファンドを長く保有するより、最終的な投資成果は良くなるのではないでしょうか。