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『一三分間、死んで戻ってきました』高橋由和さんのレビュー

高橋由和さんは深く読み込んでいただき、力のある感想を書いてくださいました。特にラストの

全体の調子として、あまり感情に訴えるための情感的な表現は多くなくて静かに進んでいく書き方であったかと思います。そうであるがゆえに読み終えた後にすべてが輝いている完璧な世界の静けさのモノトーンだけが頭のスクリーンに残ってこの本の絵画的印象として焼き付けられました。

には、むしろ、高橋さん自身の書き手としての筆力を感じました。(長澤)


(以下、高橋由一さんの許可を得て転載します)

作家であり探求者である長澤さん。彼が最近上梓された作品を読ませていただきました。以前には「蝶を放つ」という小説を読みました。

読後すぐにメモした感想をそのまま載せることにします。

このほかにもティーンズのころからの探求について共感できることがありましたし、物語としてそこに引き込まれて読んだ面もあるのですが、深い深い静けさと闇と光の雰囲気感につつまれて彼の人生をそこに見たような自分の視点そのものが変化したのか、今まで感じたことのない「感覚」が残っています。

しかしとりあえずは人生の出来事に反応した感想の箇条書きです。

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医師とのやり取りと自分で自分を治すやり方を作っていったところは爽快でした。

幸せ感があふれている人間に戸惑う医師の姿は人間性が弱すぎ狭すぎてだらしないなぁとさえ思われます。

看護師のハートがオープンでいざというときに助けてくれることに心温まりました。

母親とのつながりの深遠さを感じました。長澤さんの行く道を幼児のころからまるまる認めていたこと。また現実を示すことになんのためらいもなかったことは

お母さまが今の長澤さんが育った豊かな土壌を提供したのだと思います。

障碍者女の子が叫んだ「長澤さんはみんなの役に立っている」その言葉の鋭さを受け止めたシーンが素晴らしかったです。

それについて補足説明はあまり書かれていませんでしたが、私は想像を伸ばして女の子の心に長澤さんの愛がはっきりと映っていたのであろうと思いました。

お母さまの葬式の経緯で寺と坊主にノーを突き付けたこと、意思を明確に伝えたことはあっぱれと思いました。そのことによってさらに清らかで温かい見送りができたのではないかと思いました。

意志の大切さを随所に私は教えてもらったようです。

向こうの世界の叙述や、仏教的な説明はぴんとこないところが多かったです。

ただ向こうの世界では決して「経験?」できないこの世というものがあり、この世はかけがえのないものだという逆説。だから精一杯生きよ、というメッセージは受け取りました。

全体の調子として、あまり感情に訴えるための情感的な表現は多くなくて静かに進んでいく書き方であったかと思います。そうであるがゆえに読み終えた後にすべてが輝いている完璧な世界の静けさのモノトーンだけが頭のスクリーンに残ってこの本の絵画的印象として焼き付けられました。

(2024/1/17 高橋由和)

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長澤靖浩
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