新チベット仏教史―自己流ー

その8
もう1つツォンカパの因明に対する思いを語る文献を紹介しておきましょう。ツォンカパには、いくつかの伝記が書かれています。中でも、直弟子の1人ケードゥプジェー(mKhas grub rje 、1385-1438)の『信仰正道』は最も詳しいものです。そこにこういう記述があります。
 〔ツォンカパ師は、『量評釈』の解説である〕ウユクパ(‘U yug pa,-1253)注『正理蔵』をご覧になり、第2章個所の道の設定を説く個所を正しくご覧になることで、それを機縁として、ダルマキールティの原典と正理の規定に対して、押さえようとしても押さえきれない無料の信仰を起こし・・・
ここには、ウユクパというチベット人の作った『量評釈』注を見て、目を開かれた様子が描かれているのです。上には、具体的にどの個所であるのか示されていませんが、ツォンカパ作品を探っていくと、おそらく『量評釈』第2章「量成就」章の222偈であろうと推測されます。その内容は、「その対象を論破しなければ、それを排除出来ない」というものです。「論理的にはっきりさせてから、是非を論ずる」というツォンカパ好みの姿勢が、伺われま
す。ついでながら、付け加えると、ウユクパの『量評釈』注は、現在でも簡単に入手できるものです。ベット最初期の注釈で、インドの注釈を要領よくまとめたお薦めの注釈書です。

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