仏教論理学序説

その13

また、ゲルク派の特異な時間論について貴重な研究を続けている根本裕史氏は、ドレイフェス氏のmoderate realismを含む提言に見直しを迫って、こう述べている。
 こうしたゲルク派の解釈をDreyfus(1997)のように、実在論的であると見なして否定的に評価することも不可能ではない。だが、本稿で明らかにしたように、ゲルク派の学者達は、微視的な視点だけでなく巨視的な視点に立った上でも「無常」や「刹那」の理論を確立しようとした結果、以上のような独特の解釈を打ち出しているのである。彼らの「刹那」解釈と時間論をそうした試みとして積極的に評価することもできよう。(根本祐史「ゲルク派における刹那の解釈と時間論」『南都仏教』89,2007)
こうして、到底、充分とはいえないが、過去の業績を筆者なりに、辿ってみた。moderate realismについていくつかの知見は得られた。しかし、結果的に、返って混乱を招いたかもしれない。残念ながら、今の筆者に、moderate realismを判定する能力などない。以下では、幾ばくかの情報を付け加え、博雅の是正を仰ぎたいと念じるのみである。


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