Tips of Buddhism

No.32
Je Tsong khapa(1357-1419)is revered as one of the most significant Tibetan Buddhist teachers whose eclectic and analytic studies and meditations in all the major schools of Tibetan Buddhism resulted in founding of the Gelugspa system of the Tibetan Buddhist heritage(R.Thurman;Life & Teachings of Tsong Khapa,Dharmasala,1982,title page)
 

(訳)
ツォンカパ師(1357-1419)は、最も重要なるチベット仏教の師の1人である。彼の、総合的かつ分析的な研究と瞑想は、チベット仏教の全主要学派に、チベット仏教の遺産であるゲルク派システムの樹立をもたらしたのである。
(解説)
ツォンカパは、チベット仏教で、最も名が知られた学僧であろう。彼は、ゲルク派という宗派の開祖である。この宗派は、ダライ・ラマの属する派で、チベット仏教の正統派中の正統派である。非常に独創的な人物で、それまでの中観解釈を大転換した。詳細は、省くが、過去に蔓延(まんえん)していた、曖昧(あいまい)な理解をただしたのである。ツォンカパの特徴の1つは、前に触れた「仏教論理学」すなわち「因(いん)明(みょう)」を非常に重んじたことにも見られる。一般に、中観の正統派は、仏教論理学に、厳しい目を向ける傾向が強いので、ツォンカパの流儀は、やや特殊なものだ。彼の主著は、『ラムリム』といい、その中の最重要の章は、故長尾(ながお)雅人(がじん)博士により、『西蔵(チベット)研究』で、和訳されている。世界的なチベット学者、山口(やまぐち)瑞(ずい)鳳(ほう)博士による、ツォンカパ解説の1部を、以下に引用しておこう。
 この不世出の思想家は、当時の大勢として教団仏教が受け入れていたタントラ仏教を、〔インドから来た、学僧〕アティーシャに同調した立場で取り入れた。というよりは、当時のタントラ仏教を僧伽に受け入れられるかたちに解釈学を徹底的に整理して修道階梯を規定した、と言うべきかもしれない。(山口瑞鳳『チベット』下、1988,p.300、〔 〕内私の補足)
タントラ仏教とは、密教とイコールである。チベット仏教というと、必ず、チベット密教に
話が及ぶ。しかし、正統宗派、ゲルク派では、密教に対し、厳しい規定があって、膨大(ぼうだい)で精(せい)
緻(ち)な顕(けん)教(きょう)の学習を経ない者には、密教の道は閉ざされているのである。チベットに興味の
ある方は、是非チベット語を学んで欲しい。チベット語は、構造が日本語に近く、比較的学
習しやすい語学である。ここ4-5年の間に、チベット語の貴重な文献が見つけ出され、ツ
ォンカパ以前の時代のことが、研究出来るようになった。ツォンカパのオリジナリティーが、本当に彼独自のものなのか、それとも誰かの説を受け継いだのか等の謎が明白になってくると思われる。
 空性を知の対象として存在すると見なす見解は、決してツォンカパの独創ではなく、チャパ師弟にまで遡(さかのぼ)るものであり、さらには、チベット人の勝手な創案ではなく、〔ジュニャーナガルバ作〕『二諦(にたい)分別論(ふんべつろん)』というインド原典に依拠するものであることが具体的に
原典資料に基づき明らかとなった。このことは、ツォンカパの中観説の思想的背景、さらには、インド・チベットにおける中観思想の歴史的展開を考える上で、極めて重要な研究の視座(しざ)を提供するものである。(西沢史仁「チベット初期中観思想における空性理解―ゴク翻訳官、トルンパ、ギャマルワ、チャパー」『日本西蔵(チベット)学会々報』64,2018,p.46,ルビ・
〔 〕内私の補足)
 


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