新チベット仏教史―自己流ー
―ツォンカパ以降―
その1
ツォンカパ以降のゲルク派について点描してみたいと思います。数多くの学僧が輩出(はいしゅつ)しましたが、近年の学界で特に注目を浴びている人物に焦点を当て、その思想を一瞥(いちべつ)しましょう。まず、その知識の豊富さから「一切知者」と讃えられた学僧にジャムヤンシェーパ’(Jam
dbyangs bzhad pa、1648-1722)がいます。チベット人達は、よく「学説綱要書」とか「宗義書」grub mtha’と呼ばれる文献を著します。内容は、仏教の代表的思想、「毘婆沙師=説一切有部」「経量部」「唯識派」「中観派」等を順に解説するというものです。ジャムヤンシェーパの『学説綱要書』には、著名なチベット研究者ホプキンス氏の英訳本J.Hopkins:Maps of the Profound,Jam-yang-shay-ba’s Great Exposition of Buddhist and Non-Buddhist
Views on the Nature of Reality,Ithaca,New York,2003もあります。自己の『学説綱要書』でジャムヤンシェーパは、こう述べています。
経と理によって、自部〔=仏教〕の学説は4と設定される。…自部において、毘婆沙師、経量部、中観派、唯識派4つに数を確定し(ホプキンス本p.192に英訳あり)