仏教余話

その52
宇井伯寿は、インド哲学興隆の道を開いた人物であるが、とにもかくにも、まず、仏教徒であった。彼は、ある講演で、こう心情を吐露している。
 仏教の研究に力を入れ、日本文化の発達に貢献することは大変愉快なことであると考へますが、仏教に育つた人であれば、必ず何等かの信仰をもつて居るのでありませう。研究と自分の宗派の信仰とは、時に一致しない場合も往々にして出てくるものでありませうが、併し学問は学問、信仰は信仰であつて、私はそ〔の〕間は別のものであると考へて居ます。たとへその学問が宗派の信仰に反する様な結果になつても、本当に信仰が篤ければ、そこには問題は起こらないと考へて居るのであります。(宇井伯寿「特別講演「印度哲学」命名の由来」『インド哲学から仏教へ』1976所収,p.503)

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