新チベット仏教史―自己流ー
その5
その辺に関する記述を紹介しておきましょう。
マダム・ブラヴァツキーの『神智学の鍵』(The Key to Theosophy,1889)にも〔真理へ到達するためには、諸宗教の〕「比較」は重要な方法であることが示されている。・・・ここでの「比較」がマックス・ミュラーの影響のもとにあり、〔インドの宗教家〕ヴィヴェーカナンダの方法に近いことは明らかである。そこには個別宗教を超越した唯一の真理への希求がみてとれる。しかし、オールコット、ブラヴァツキーとマックス・ミュラーとの個人的な関係はかならずしも良好なものではなかった。ブラヴァツキーとオールコットのいわゆる「神智学の双子」(Theosophical Twins)は、当人が好むと好まざるにかかわらず、マックス・ミュラーをアカデミックな擁護者(ようごしゃ)であるとしてしばしばその見解を引用していた。(杉本良男「比較による真理の探究:マックス・ミュラーとマダム・ブラヴァツキー」『国立民族学調査報告』90,2010年、p.200,ルビ・〔 ]内私〕
実際は、ブラバツキーの仏教理解が間違ったものであったことを、マックス・ミュラーが、度々、批判し、ブラバツキーがそれを避けていたというのが事実らしいのですが、この辺で両者についての考察は止めておきましょう。とにかく、エヴァンス・ヴェンツが感化された神智学について雰囲気だけでもわかってもらえたと思います。