新インド仏教史ー自己流ー

第2回 仏教の源流
その1
シャカが仏教を開いた時代、インドではすでに高度な哲学が存在していました。シャカも当然影響を受けたことでしょう。では、どのような哲学・宗教があったのかを見ておきましょう。最古の文献として残っているのは、ヴェーダ(Veda)です。ヴェーダについて概説書では、こう記しています。
 ・・・宗教の中核(ちゅうかく)は祭祀(さいし)主義(しゅぎ)である。・・・社会生活においては、子孫の繁栄(はんえい)や家畜の増殖(ぞうしょく)を望み、降雨(こうう)・豊作(ほうさく)・長寿(ちょうじゅ)・息災(そくさい)を祈り、戦闘における勝利を願うために、祭式が重視された。祭式にあたっては、専門の司祭官(しさいかん)が神々への賛歌(さんか)をつくり、それを誦唱(じゅしょう)したが、その儀式(ぎしき)は時代とともに漸次(ざんじ)複雑化(ふくざつか)していった。そしてこれらの賛歌や祈禱句(きとうく)、祭式(さいしき)の規定やその意義の解釈などが集大成(しゅうたいせい)されて、ヴェーダ文献として成立するのである。・・・ヴェーダという語は「知識」を意味し、宗教的知識を内容とする一群(いちぐん)の聖典を指す。・・・ヴェーダは古くは三種、のちには四種が数えられる。・・・(一)『リグ・ヴェーダ』は賛誦(リチ)の集成で、神々を祭場(さいじょう)に招請(しょうせい)し、賛誦(さんじゅ)によって神々を讃えるホートリ祭官(勧請官(かんじょうかん))に所属する。(二)『サーマ・ヴェーダ』は歌詠(かえい)の集成で、『リグ・ヴェーダ』にふくまれる詩(し)節(せつ)を一定の旋律(サーマン)にのせてうたうウドガートリ祭官(歌詠官(カえいかん))に所属する。(三)『ヤジュル・ヴェーダ』は祭(ヤ)詞(ジュル)の集成で、祭式(さいしき)の実務を担当し、供物(くもつ)を調理して神々にささげるアドヴァリュ祭官(行(ぎょう)祭官(さいかん))に所属する。・・・(四)『アタルヴァ・ヴェーダ』は攘災招(じょうさいしょう)福(ふく)、呪詛(じゅそ)調伏(ちょうぶく)などを目的とする呪句(アタルヴァン)の集成で、古い民間信仰の要素を多分にふくみ、祭式全般を総監(そうかん)するブラフマン祭官(祈祷官(きとうかん))に所属するが、聖典として、その神聖さが認められるまでにはかなりの歳月を要した。・・・『リグ・ヴェーダ』の賛歌は、紀元前千二百年ころを中心としてつくられ、その最古のものは千五百年以前にもさかのぼるであろう。(長尾雅人『世界の名著 1 バラモン教典・原始仏教』昭和54年、pp.14-15)
 

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