【書評】正義の考察 『これからの「正義」の話をしよう いまを生き延びるための哲学 - マイケル・サンデル』
ハーバード大学から世界に広がった話題の講義
マイケル・サンデル教授の「JUSTICE(正義)」という講義
はテレビ番組に出るほど影響を与えている。
正義とは、「正しい道理。人間行為の正しさ。」という意味となるのだが、行為をひとつずつ紐解いていくと、判断は極めて難しい。
例えば、台風で巨大な被害を受けた地域において、直後に販売を行う上で、供給不足の商品価格を上げることはいけないことなのか?
例えば、軍事作戦中の他国において、テロリストの活動領域内で「逃がすか殺す」の二択となってしまった場合、そのどちらを選ぶべきなのか?
本書では、具体的な事例を取り上げると同時に、哲学の論理で考証しながらテーマを取り上げている。
私は私のものか?リバタリアニズム(自由至上主義)
社会主義が崩れ、資本主義全盛期となった現代において、国家による国の運営では収まり切らない時代に入っている。
新自由主義やグローバリズムという表現で括られることがことが多いと思うが、元をたどればリバタリアニズム(自由至上主義)という考え方が土台になっているのではないだろうか。
リバリタリアン(自由史上主義者)は、経済効率ではなく人間の自由の名において、制約のない市場を目指し、政府規制に反対する。
GAFAと呼ばれるITの巨人たちが海を越え、世界をつなげるサービスをつくり、ブロックチェーン技術により通貨の概念が”中央集権型”から”分散型”に変わる時代を迎えている。
制約のない(≒中央集権ではない)社会は、無政府(アナーキー)な社会を生み、貧富の差が広がる貧困社会を生み出し、不幸につながるのではないかという危機を覚える人も多いかと思うが…さて。
「市場と道徳」のものさし
市場の自由度が上がった場合、道徳との比較が問われる。
国家には、軍事行為による影響行使を及ぼす場合がある。
例えば、米国では、イラクとアフガニスタンの戦争において、徴兵制による採用人数目標を満たせなくなり、移民を雇うことになった。さらに現在では、民間企業に軍の運営を委託していることから、民間人による兵士(傭兵)による委託統治の一旦を担う状況である。
これらの兵士が亡くなった場合、米国正規軍の扱いを受けないため、勲章や国家による保証もなく、民間企業と個人の契約が適用されるというわけだ。
例えば、インドでは、体外受精による代理出産契約の体制が既にサービスとして整っており、他国に比べて安価に代理出産が出来る環境がある。
妊娠に悩む夫婦の解決策として、選択肢の一つになりうる一方で、「契約」による胎児の育成と出産を行うことを「お金」で解決できる職業出産は、合理的ではあるものの、宗教社会における倫理的な議論は大いに残る。
哲学者たちが語る思想と"今"直面するテーマを考証する
イマヌエル・カント、ジェレミー・ベンサム、アリストテレス、ジョン・ロールズと名だたる哲学者たちが唱えた理論から考証する本書は、極めて難解であり、一度読んだだけで本質を捉えることは難しく感じる。
日々、我々が過ごす中においては究極な選択肢の事例をもとに挙げているわけだが、一瞬の判断の中で選択を迫られた場合、思考は簡単には回らない。
このようなテーマを読むことで人生マップを構築し、自身の航路を下す一助になるのではないだろうか。
『これからの「正義」の話をしよう いまを生き延びるための哲学 - マイケル・サンデル』
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