キックが上手い人の3つの共通点 キック理論を作り上げます。
生まれた時から英語圏で生活している人にとって英語を話すことは難しいことではないでしょう。
普段の生活の中に英語は溢れており、無意識であろうと毎日大量の英文を聞き触れることができます。
しかし、英語初学者はそうはいきません。英語圏に住む人のように自然には習得できません。
だからこそ英語を学ぼうとします。
英文法書をはじめとした参考書は、英語圏で生活し自然に英語を習得してきた人たちの膨大な時間を縮めてくれるものです。
言い換えれば、短時間で英語を習得できるように整理された体系的な書物であると言えます。
20年前に比べてサッカーの技術的な指導レベルは向上してきました。
しかし、英文法書のように体型的にまとまったサッカー理論は未だ確立されていないように思えます。
英文法書のように体系的に学ぶことのできる書物がサッカーにも存在し、意識的にトライアンドエラーを繰り返すことができれば、成長のスピードは格段に上がるのではないでしょうか。そして本気でサッカーが上手くなりたいと思う選手が悩んだ時の手助けになるのではないでしょうか。
サッカーは様々な要素(個人の技術やチームの戦術など)があり、それらが集約されてはじめてサッカーと呼ぶことができます。
サッカーの要素全てをまとめあげることは難しく、時代による流行もあります。しかし、自分の武器であるキックは、整理することで1つの参考書のようなものを作れるのではないか、そう思いました。
サッカーを日本語で訳すと蹴球です。球を蹴るスポーツである以上キックはサッカーの根幹とも言えます。私は小学1年生でサッカーを始めました。そしてプロになりここまで30年、何万回ものプレーを繰り返すことで自然とプレーの精度をあげてきました。
特に「キック」は自分の武器として意識的に磨き上げてきました。私はそんなキックにこそサッカーの本質が詰まっている確信しています。
キックが上手い人の3つの共通点
ボールの蹴り方はそれぞれ人によって違いはあります。しかし、キックが上手い人には共通する部分もあります。
まずじめにキックが上手い人を定義することで、キックの上達を目指す人の目標となる地点を明確にしたいと思います。
1.インステップキックの最大値が高い
当然のことですがキック力は強ければ強いほど良いです。もちろん、パワーの上に正確性も必要となります。
「キック力がなくても正確に蹴ることができれば良い。」世界から見ると身体的に弱い日本では、そんな言葉が語られがちですが強いキックができた方がいいに決まっています。
強いキックができると良いことはたくさんありますが、今回は私が思う最大のメリットをお話ししたいと思います。それが「調整できる」ことです。
例えば、70mノーバウンドでロングキックパスができる選手がいたとしたら、その選手は1m〜70mの間であったら力を調整するだけで、パスを通すことができます。70m先にぴったり合わせるキックができるならば、70m以内なら自由に力を調整するだけで蹴り分けることができるのです。
70m蹴れる選手と40m蹴れる選手を比べたら、断然70m飛ばせる選手の方が試合中のプレーの選択肢は増えます。
目標は60m以上離れて、受け取り側がほぼ動かなくてもトラップできるボールを蹴れることです。
(60m飛ばすロングキックの蹴り方)
インステップはインサイドと同様に面積が広く、安定したキックがしやすい場所です。インステップキックさえ習得できればパスからシュートまでほぼ全てのプレーができるようになります。キックが上手い人の共通点③でも言及しますが、インステップキックができればカーブをかけることも自在にできるようになります。
もちろん、育成年代の選手がキックの最大化を目指すことは、怪我のリスクが高まるので無理なトレーニングは禁物です。
2.軸足力がある
軸足力を言い換えると、軸足の安定度と言い換えることができます。
軸足力とは何かを説明するために、まずはキックモーションを大きく5つに分解します。すると次のように分解できます。
①助走をつける
②軸足をつく
③バックスイングをする
④ボールをインパクトする
⑤足を振り抜く
軸足という言葉は直接的には②でしか使われていませんが、一連のキックを想像すると③、④、⑤でも軸足が使われていることが分かると思います。
②で前進する力を調整し、③と④のスイングの動作では振り足が綺麗に動かせるように体を支え、⑤では勢いを上手く逃す。
YouTubeの動画でスロー映像で確認してもわかるように軸足には大きな負担がかかっています。ボールを蹴る動作は一見、蹴り足に目線が行きがちですが軸足に安定感がなければキックそのものが成立しなくなってしまいます。まさに軸足はキックの土台とも言えます。
そんなキックの基礎力を私は軸足力と呼んでいます。
3.ボールの中心を扱える
突然質問なのですが、皆さんは「カーブキック」をどのように教えられてきましたか?
おそらく1番多い回答が、「ボールをインフロントでこすりあげるように蹴る」だと思います。確かに、ボールをカーブさせるためにはボールに回転をかける必要があります。
しかし、キックの本質はボールにしっかり力を伝えることであり、回転をかけることではありません。ここで私のカーブキックを見て頂きたいと思います。
(カーブキックFK練習映像)
ボールの軌道はしっかりカーブしている思います。しかし、蹴り方に注目してみると決してボールをこするようには蹴っていません。普通のインステップキックと同じようにボールにインパクトを与えています。
キックの本質を一つ明かすと、ほぼ全てのキックは「力の通り方」を知ることで蹴ることができるようになります。カーブキックの本質はボールに回転をかけることではなく、力の通し方を調整することです。
(図1)
ストレートのボールを蹴るには、ボールの表面の中心(黄色の点)からまっすぐ力が抜ければ、ストレートに飛ぶキックになります。
カーブをさせたい場合には、図1のようにボールの中の中心(青色の点)を外す必要があります。ボールの中心を理解し、扱うことでカーブキックも自由自在に蹴ることができます。
最後に
プロサッカー選手になり、サッカーの上達には近道はないと確信しています。プロになるのも、サッカーが上手くなるのも本人の努力が全てです。
しかし、本気でサッカーに向き合う人に寄り添うような環境や場所、成長の助けになるような指導法や理論は必ず夢を追う少年少女の役に立つ確信しています。私のサッカー人生の集大成として私のプロとしてのキャリアを支えてくれたキックを整理しキック理論として完成させることで、これからの日本サッカーに役立てることを強く願います。
監修 阿部翔平(TOKYO CITY F.C.) 制作 編集 タイチ (King Duo)