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#13 これからも「よろしくお願いします」 【あべしょーのKick Story】

阿部翔平選手のこれまでの人生やキャリアを振り返りながら、「阿部翔平のキック理論」が確立されてきた背景を探るシリーズ、「あべしょーのKick Story」。最終回となる今回は阿部翔平選手がヴァンフォーレ甲府に復帰した2017〜2018シーズンを中心に振り返ります。インタビューの最後には阿部選手からヴァンフォーレ甲府のサポーターの皆さまに向けてメッセージもいただきました。

前回のインタビューはこちら

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――ヴァンフォーレ甲府で再びプレーすることが決まったときの心境を教えてください。

自分の決断で(ヴァンフォーレ甲府を)出ていってしまったのにもかかわらず、また温かく受け入れてくれた甲府にはすごく感謝しています。それが最初に伝えたいことです。また、改めて甲府で活躍して、チームに貢献できるように頑張りたいなと思いました。

――甲府在籍時を通してプレーが印象に残っている選手はいますか?

特に印象に残っているのは先輩の山本英臣さん(=ヴァンフォーレ甲府)ですね。ディフェンス面のカバーリングやフィードなど理由はいろいろありますが、いちばん驚いたのは(相手のプレーを)読んで、くさびのボールに対してインターセプトを狙いにいくところです。普通の人だとくさびのパスが出るタイミングで読むと思いますが、山本さんはそのもうひとつ前のパスの段階で読んでいるようでした。ある選手から横パスが出た瞬間に、そのボールを受ける次の選手がくさびのパスを入れるということを読んでいて、そのときにはすでに動きはじめていました。そして横パスを受けた選手がくさびのパスを出すときには、その選手の前にポジションをとっていて、次の瞬間にはボールをとっていましたね。僕にはそれがどうなっているのかいまいちわかりませんでした。

――「読み」の次元が違っていたんですね。

僕が名古屋にいた頃にも、僕がケネディに出した縦パスを山本さんにとられたことがありました。そのときも山本さんはかなり早いタイミングで動き出していて、僕がパスを出そうと思ったときにはもう僕の前にいる。でも体はパスを出すように動いてしまっているから、パスを出してしまってとられてしまう。そういうこともあって、甲府に入る前から「只者じゃないな」と思っていました。僕が今までプロの世界でプレーしてきたなかでも、あのような形でボールを奪う選手は山本選手しかいなくて、まさに「予知」をしているんじゃないかと思いますね(笑) 名古屋で一緒にプレーした増川(隆洋)選手や(田中マルクス)闘莉王選手と比べると、タイプこそ違いますが山本さんのプレーはそれに匹敵する能力なんじゃないかなと思います。

――甲府で同じ左サイドバック/左ウイングバックだった高野遼選手(=現・ジュビロ磐田)の印象についてもお聞かせいただけますか?

同じポジションを争うライバルでしたし、よく覚えていますね。彼は身体能力が高くて足も速いし、スタミナもある選手だったので、どこで勝てるかを考えたときにキックの質やひとつひとつのプレーの精度なのかなと思っていました。とはいえ、チーム的にもゆくゆくは若い選手が試合に出て活躍することがある意味で健全だと思うので、短い間でしたが自分の持つ技術はすべて高野には伝えたつもりです。個人的には、彼のクロスの上げ方には違和感があって、無理な体勢で中にボールを送っているときがありました。クロスをスムーズに上げるには、ボールを自分の前に転がしながらクロスを横に(=ピッチ中央に)上げると思うのですが、高野はボールを上げたい方向に転がしながらそれを無理やり中に上げるように蹴っていたので、「もっと前に転がしながらこうしたほうがいいよ」と教えたのは今でも覚えています。今それが役に立って改善されているかはわからないですけどね(笑)

話が飛躍しすぎかもしれませんが、能力的には代表にいてもおかしくないポテンシャルは持っていると思います。彼にはぜひ代表の座を狙って、割って入ってほしいなと思っています。

――2017シーズンの第22節 北海道コンサドーレ札幌戦では、左足を振り抜いて値千金の同点ゴールを決めました。

ちょうどその試合は高野が先発だったんですが、高野が負傷してしまったので僕が後半から出場しました。相手に先制を許していて1点ビハインドのなか、なんとかアピールしてもう一度スタートから試合に出たいと思っていて、直接的にアピールできるのはやっぱりゴールだろうという意識はありました。ウイングバックだったので高い位置まで攻め上がることができたということもあって、迷わずシュートを選択しました。このゴールは見方によっては蹴り損ないのようにも見えてしまうかもしれませんが、実際にはファーサイドを狙うふりをしながら少しアウトにかけてニアサイドを抜くシュートを打ちました。読者の皆さんにはそれが伝われば嬉しいですね(笑)

――吉田達磨監督のもとでは従来のサイドのポジション以外にもボランチやインサイドハーフでプレーする機会がありました。本職ではないポジションで起用されることに対してはどのように受けとめていましたか?

嫌悪感のようなマイナスの気持ちはまったく無かったです。僕自身がシンプルにプレーする選手だと思うので、相手をはがせないときは簡単にボールをはたいて、もう一度前を向けるタイミングでもらうなどの動きは意識していました。また、サイドバックでプレーするなかで、「ボランチにはこう動いてほしい」のようなイメージはもともとあったので、できるだけそのイメージ通りに攻撃時のサポートや前に出ていくタイミング、守備時にボール奪取にいく瞬間を意識してプレーしました。

――甲府在籍時の4年間では4人の監督のもとでプレーしました。そのなかで特に印象に残っている監督はいますか?

挙げるとするならば城福監督ですかね。城福監督が甲府の指揮を執っていたときは守備的な戦術を採用していましたが、チームがそのとき取り組むべきことにしっかり取り組み、練習内容や試合前のミーティングなどで垣間見える「緻密さ」はとても感じ取れましたね。

――阿部選手はJリーグでは通算355試合、その他の公式戦も含めると400試合以上に出場し、活躍の場をSHIBUYA CITY FCに移した後もコンスタントにプレーを継続しています。ずばり、試合に出続けるための秘訣は何でしょうか?

なんだろうね!(笑) でも、ひとつに無理しないということはあるかもしれません。名古屋時代の特に後半では怪我をしないということから逆算していましたが、若いときはもう少しやってもいいかなとも思いますね。そしてベテランになってくると必要な筋肉を確保するトレーニングをするというように、一定して何かを続けるのは難しく、そのときそのとき何が必要なのかを考えて実践してきました。大学時代には筋力や「体が壊れないようにするための強さ」をつけるのが重要でしたし、20代後半になってきたら体の良い状態を維持しつつ怪我をしないようにするということがポイントでしたね。もちろん人それぞれではありますが、僕としてはそこでコンディションを維持することに重きを置いたことが今振り返るとキーポイントだったように思います。30代に入ると体重のコントロールなどにフォーカスしはじめたので、体の状態と向き合って実験してきた結果なのかと思います。自分に合うことは継続して、合わなければやめる。自分の体と時代の流れにあわせて進化していかなければならないと感じています。自分に合うものを自分で考えて、探し、試していくことが重要ではないかと思います。

――それでは最後に、ヴァンフォーレ甲府のファン・サポーターの皆さまにメッセージをお願いします。

合わせて4年間、お世話になりました。在籍した4年間では皆さんに温かく接していただけて、応援してもらえたというのをすごく感じています。今は「ありがとうございました」とは言っていますが、正直なところ、僕と甲府の関係が切れたような感覚はありません。今はヴァンフォーレではサッカーをしていませんが、応援してくれた人たちとは心で繋がっているような気がしています。今は山梨には住んではいませんが、山梨を良くしたいなという思いはすごくあって、これからもワインに限らず関わらせていただきたいなという気持ちです。応援してもらっている立場ではありますが、僕もそれ以上に山梨や山梨の人たちを応援したいです。なのでヴァンフォーレでサッカーをした4年間については「ありがとうございました」ですが、まだまだこれからも「よろしくお願いします」ですね。

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4月からスタートした連載企画「あべしょーのKick Story」をここまでご覧いただきありがとうございました。全13回にわたって阿部翔平選手のサッカー人生を振り返ってきましたが、いかがでしたでしょうか? なお、阿部選手のYouTubeチャンネルでは、キックの解説や企画動画の配信もしておりますので、そちらもぜひご覧ください!

また、阿部選手が所属するSHIBUYA CITY FCは、8月29日(日)16時キックオフでCERVEZA FC 東京と対戦しますクラブのYouTubeチャンネルではライブ配信を実施する予定です。名古屋グランパスサポーターの皆さまは同日開催の清水エスパルス戦の前に、ヴァンフォーレ甲府サポーターの皆さまは同じくFC町田ゼルビア戦の前に、そしてこの日は試合のないジェフユナイテッド千葉のサポーターの皆さまもYouTubeで試合をご覧いただき、ご声援をいただけましたら幸いです!(編集担当・川上)


監修・制作:阿部翔平(SHIBUYA CITY FC)

取材・制作・編集:川上皓輝(SHIBUYA CITY FC スタッフ)


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