#8 充実と成長の時期 【あべしょーのKick Story】
阿部翔平選手のこれまでの人生やキャリアを振り返りながら、「阿部翔平のキック理論」が確立されてきた背景を探るシリーズ、「あべしょーのKick Story」。第8回は阿部選手の名古屋グランパス2年目から4年目までの時期についてうかがいました。ストイコビッチ監督の就任、プロ初ゴール、日本代表への招集など阿部選手にとっても大きな変化のあった時期です。阿部選手はこの時期の成長として何を挙げるのでしょうか。
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――2年目以降は出場機会も増え、試合にもコンスタントに出場します。そのなかで阿部選手が感じた自身の成長や変化はありますか?
プロに入ってからのトレーニングで身につけてきた体の強さが活きてきた頃だと思います。1年目はセンターバックでの出場が多かったですが、サイドバックでプレーするようになっても同じように体の強さやジャンプ力を発揮することができました。Jリーグの屈強なフォワードを相手にしても、体を当てたときに押し負けなかったり、多くの場面で止めたり阻止したりすることができたかなと感じます。攻撃面でもプレースピードに慣れてきて、シンプルにボールを離す感覚を掴めました。
後になって気づいたことですが、ボールをいかに失わないようにするかが重要だと思います。僕の場合は早い判断でパスを離して失わないようにすることが多いですが、ある人はドリブルでボールを相手から遠ざけてとられないようにするであったり、タイミングを外してとられないようにするであったりもすると思います。この2年目は、理解こそ完璧にはできていなかったですが、その方法を見つけなければいけないということがなんとなくわかってきた時期でした。
――2008シーズンにはドラガン・ストイコビッチ氏(=現 セルビア代表監督)が名古屋グランパスの監督に就任します。「ピクシー」のサッカーの印象を教えてください。
監督はいつも「Enjoy!(楽しめ!)」と言っていて、実際に楽しくサッカーができていました。現在では両サイドバックが2人とも前線に上がるようなシーンはあまり見ませんが、監督のサッカーでは、サイドバックの田中隼磨選手(=現 松本山雅FC)も僕もどっちも上がるような場面もしばしばありました。そんな躍動感のあるサッカーは、僕としても楽しかったですし充実感がありました。
――阿部選手はヤマザキナビスコカップ予選リーグ第6節の浦和レッズ戦でプロ初ゴールを決めます。このゴールの解説をお願いします。
実は前日にあのような無回転のシュートを練習していました。当時はボールの質の関係もあって無回転キックがすごく流行っていたような記憶があります。僕も無回転キックの練習はしていて、この試合もチャンスがあれば打とうかなとは思っていました。もし試合が0-0のままだったらパスを選択していたと思いますが、リードしていたのもあってシュートを打ちました。監督の好きなプレースタイルはサイドを崩してクロスを上げるようなものでしたが、キーパーが前に出ているなというのはずっとうかがっていたので、試しに狙ってみたという感じです。
決まったときは率直に嬉しかったですね。ただ、喜び方はわからなかったです。ゴールの後、増川(隆洋)という190センチある選手に頭を強く叩かれて、本当に頭がクラクラしました(笑)
――この時期にはA代表にも招集されます。代表での経験についても詳しく教えてください。
チームの調子は良くて、自分自身も充実してプレーもしっかりできていました。とはいえ、代表に呼ばれてもおかしくないとは一切思っていなくて、どちらかというと自分とは関係のない世界だと思っていました。初招集のときは、オフでどこかに出かけているときに電話がかかってきて、「代表に選ばれたから!」「え? どうすればいいんですか?」「〇〇日から行くから準備だけしておいて」というようなやりとりをしたのを覚えています。
(AFCアジアカップ2011カタール予選)イエメン戦のときは長い合宿で、ハードだった印象があります。上手い選手ばかりで、特に中村憲剛選手(=現 川崎フロンターレ リレーションズ オーガナイザー)からは、速さ・強さ・タイミングのすべてが想像通りのパスが来ました。無理してトラップしなくてもいいので楽だったり、逆にパスが簡単に通ってくるゆえにキツいなと思うこともありました。同じサッカーではありますが、クオリティが高すぎて普段とは違う疲れ方をしました。
――2008シーズンはJ1で3位、2009シーズンには天皇杯準優勝、ACLベスト4などタイトルまであと少しのところまで迫りました。当時、阿部選手個人としての変化は感じていましたか?
この頃は余裕が出てきていました。試合中に「今のチームの雰囲気やメンタル的にどうなのかな」「監督はどんなことを考えているのだろう」など他のことを考える余白がありました。それまでは自分がどうプレーして、どう動くべきというところまでしか頭がまわっていませんでしたが、それ以外にまわりを見て、感じられるようになり、プレーそのものにも深みが出てきたように思います。ひとつひとつのプレーを自信を持ってできるようになり、数手先のプレーまで考えられるようになりました。メンタル的にも崩れないようになり、ミスをしてしまったときにも、ある意味で「想定内」と体が反応できるようになっていました。そういう意味でもプレースタイルを確立できてきたのがこの時期は大きかったです。
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次回の「あべしょーのKick Story」は、いよいよ名古屋グランパスがJ1優勝を果たす2010シーズンのお話をうかがいます。優勝を決めたアウェー湘南戦の決勝ゴールも振り返ります。どうぞお楽しみに!
監修・制作:阿部翔平(SHIBUYA CITY FC)
取材・制作・編集:川上皓輝(SHIBUYA CITY FC スタッフ)
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