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【前編】 インステップキックの蹴り方(高速ロングキック)

「インステップキック」と聞くと皆さんはどのようなキックを想像するでしょうか。

おそらく、多くの方がロングキックを想像すると思います。

しかし、サッカーの試合を見ていると選手たちはロングキック以外にも様々な球種を扱っていると分かると思います。豪快にゴールに叩き込むキックも、大きくクリアをするキックもインステップキックのように見えます。

ここで何を伝えたいのかと言うと、「インステップキック」と言う言葉は極めてあいまいだと言うことです。インステップキックは様々な種類のキックを内包した言葉です。

「インステップキックと言えば、このキックだよね」と言えても「インステップキックとはこのキックです」と答えることはできません。

50m先の選手へパスを送りたい時、とにかく強いシュートを打ちたい時、地を這うようなパスを出したい時、これらは全てインステップを使ったキックで実行することができます。しかし、全てインステップキックと呼ばれているにも関わらず蹴り方が大きく異なります。

前述で少し触れましたが一口にインステップキックと言っても様々なキックを含んでおり、”インステップと呼ばれる足の場所で蹴ったキック”が存在するだけです。

インステップキックと簡略し表現してしまうことで、指導者とサッカー少年少女の認識にズレが生じてしまい結果として習得に時間がかかっていまします。

この回ではインステップを使ったキックを、蹴り方の違いから「高速ロングキック」「ロングキック」「シュート」の3つに分けて考えていきたいと思います。

1.高速ロングキック

一つ目が高速ロングキックです。

聞き慣れない言葉かもしれませんが、高速ロングキックは文字通り球のスピードが速い球種です。

高速ロングキックは、サイドチェンジする時や相手ディフェンスの背後を狙う時に使われるキックと言うと想像しやすいかもしれません。

球筋を見てもらうと何となく掴んでもらえると思います。

サイドチェンジを狙う場合、相手がスライドをし陣形を整えさせない為に、少しでも速く逆サイドの選手にパスを通す必要があります。そんな時に高速ロングキックは重宝されます。

高速ロングキックは細かい視点で見ると「低弾道」「高弾道」に分別することができます。低弾道と高弾道には蹴り方による大きな違いはありません。

低弾道は地面からの最大到達点が3mより低い弾道、高弾道は3mよりも高い弾道、つまり相手選手がジャンプしても届かない高さの弾道と言えます。

これは単純に、パスを通したい目標(味方の選手またはスペース)までに相手の選手がいた場合は高弾道を使い、いない場合は”低弾道or高弾道”を使います。

あえて相手選手がいない場合に”低弾道or高弾道”と書いたのは、強い風が吹いていないグラウンドコンディションと仮定した場合、ボールが地面につかない方が仲間にパスが通る到達時間は早くなるからです。

ゴロのパスだとボールのスピードが遅くなるように、地面とボールが接している時間が長いと摩擦の力でパススピードは遅くなってしまいます。その為、パスを送りたい選手と距離がある場合は高弾道のパスを使う必要があります。

先ほど、低弾道と高弾道の蹴り方による違いはないと言いましたが、ボールのあてどころには大きな違いがあります。次の章からは具体的に高速ロングキックの蹴り方について、深掘りしていきたいと思います。

2.高速ロングキックの蹴り方

ボールを蹴る作法は、「キックモーション」「ボールインパクト」の2つに分けると理解がしやすくなります。はじめにキックモーションから見ていきます。

一つ前の記事(キックが上手い人の3つの共通点)でもまとめたように、キックモーションは以下の5つに分解することができます。

(キックが上手い人の3つの共通点)

(キックモーション5つの要素)

①助走をつける
②軸足をつく
③バックスイングをする
④ボールをインパクトする
⑤足を振り抜く

このキックモーション5つの要素に沿って、高速ロングキックを解説していきます。

まず①の助走から見ていきます。

助走の角度は動画を見て頂ければ分かるように、45度〜60度から蹴ることが多いです。

角度

ただし、この角度はあくまで蹴りやすい角度であり試合中だと毎回この角度から蹴ることができるとは限りません。

高速ロングキックに限らず、インステップを使ったキック全てに言える事ですが、試合を意識するとほぼ直角90度〜30度から入る助走でも正確に蹴れる必要性があります。

助走の角度が小さくなるほど蹴りにくくなり、30度を超えると綺麗な弾道を描くのが非常に難しくなります。


次に、「③バックスイングをする」「④ボールにインパクトする」「⑤足を振り抜く」を先に見ていきます。

下の動画をよく見てもらいたいのですが、ボールをインパクトした瞬間からボールが離れるまで、蹴り足は地面に対して水平に進行していることが分かると思います。

(高速ロングキック低弾道のキックモーション)

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ボールの中心より若干下あたりをインパクトし、蹴り足を水平に滑らすことでボールにバック回転がかかります。ボールは空気の抵抗を受けながらバック回転することで、ストレート性の浮き上がるような弾道になります。

高弾道の場合は、軌道の高さに変化を出すため、ボールの当てる場所をより中心から下の部分をインパクトすることで成立します。

インパクト後の蹴り足は、大きく蹴り上げることなく水平移動させたまま地面に着地させます。


次に「②軸足をつく」を見ていきます。

軸足のつく位置はこれと言う正解はありません。選手の股下の長さによっても異なります。

軸足において一つ共通点をあげるとするならば、軸足の向きになると思います。軸足の向きはボールを蹴る方向に向いていることが基本です。

ボールをインパクトし、離れた後の軸足を見ていただきたいのですが、軸足の重心はボールにインパクトし蹴り足から離れた後に蹴り足に移動しています。

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高速ロングキックの場合、蹴り足は内側につくため、それに合わせて軸足も蹴り足と同じ方向へ抜きます。

この一連の流れがスムーズにできるようになると、キックモーションは完成に近づいていきます。


最後に、ボールインパクトを見ていきます。

前述にもある通り、ボールインパクトの位置がボールの中心から下の方になるとボールは浮きやすくなります。

感覚的なお話になってしまうのですが、高速ロングキックはボールを足で運ぶような感覚で蹴ります。言い換えると、こぼれ球をシュートをする時のように蹴り足とボールがバチっと瞬間的に当たるイメージではなく、蹴り足を水平移動させながら力を与え続ける感覚です。

事実、高速ロングキックは蹴り足の移動に安定感がないと蹴り足は内側に進行するため、ボールにアウト回転がかかりミスキックになってしまいます。

ボールに足が触れている瞬間は、ボールの真ん中に向かってまっすぐ力を与える意識をもつだけでもミスキックは徐々に改善されて行くと思います。


次回、インステップキック中編、後篇として残りの「ロングキック」「シュート」についてお話したいと思います。


監修 制作 阿部翔平(TOKYO CITY F.C.)  

制作 編集 山下泰知(King Duo) 





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