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埼玉県でインボイス廃止の意見書可決。自民の「だまし討ち」は誤解だが……自民の議員に伝えたいこと

埼玉県議会に続け!合言葉は「インボイスは廃止が最良策」ということで、誰でも自由に使えるインボイス廃止を求める陳情書の雛形を公開しています。

前回からの続きです。

自民党の埼玉県議団による「だまし討ち」は、やられたほうから見れば、「だまし討ち」なのだが、果たして実際はどうだったのか。

超党派で組織する「積極財政を推進する地方議員連盟」を通じて、実は自民党の埼玉県議団の中にもインボイスに反対している議員がいることは以前より知っていた。普段から交流がある自民党会派の地方議員に「だまし討ち」について見解をたずねると、「それはない」という。

ここからは憶測も含まれるが、自民党の県議団の中にも延期の意見書案を採択させようとする動きがあったのは確かだ。とはいえ、埼玉県議会は定数93名(欠員2名)で、自民党議員は56名いる(ちなみに共産党の議員は3名)。この人数を「延期」でまとめることができなかった、それが真相ではないか。

自民党は与党としてインボイスを推進してきた政党である。立場的に反対しづらいことはよくわかる。埼玉県議会とは違うが、以下のような事例もある。

新潟県のある地方議会では自民党系の議員が制度に反対する請願の提出準備を進めていた。しかし、直前になり、自民党新潟県連から釘を刺され、その請願は白紙にされてしまった。
また、長崎県のある地方議会でも、制度延期の請願が総務委員会にて全会一致で採択になった。しかし、そのことが波紋を呼び、自民党の県議会議員や国会議員から委員会で採択にまわった自民党地方議員に電話が入り、彼らは本会議で翻意した。その結果、不採択に。翻意した自民党議員は確か3名だったと記憶しているが、彼らの翻意がなければ、延期の請願は採択されていた。

この手の話は、ほかにもいくつか知っている。

今回(2024年12月20日)、埼玉県議会で採択されたインボイスの廃止を求める意見書について、同議会の自民党議員がSNSにて次のように述べている。

「埼玉自民党が政府に対して反旗を翻す形となりましたが、あえて声を上げました」。

全国に地方議会は1700以上あり、地方議員は3万2000人以上いる。大半の地方議会は自民党系が過半数を占めている。つまり、おそらく自民党系の地方議員は全国に1万数千人いる。その数を統率して、インボイス反対の請願を潰すような仕組みは自民党内にはないが、地域地域の重鎮やキーマンとなる県議会議員や国会議員が党本部に「反旗を翻す形」になることを恐れ、あるいはインボイスのメリットとされることが限定的で、むしろ実害によって地域経済が疲弊していることを知らない、知ろうとしていない。あるいは制度そのもを理解していない。あるいは共産党が反対していることで脊髄反射的に反応している。そんな陳腐な理由で、地方議会ではいくつものインボイス制度に反対する陳情や請願がつぶされている。

地方議員は兼業議員も多く、自民党の地方議員はインボイスの当事者である場合があるため、制度に反対している議員が一定数いることは知っている。自民党系議員が提出して採択されたインボイスに反対する請願は市区町村レベルではこれまでにもあり、自民党と共産党が連携して採択された事例もある。共産党が提出した請願が全会一致で採択された事例もいくつもある。何よりも367自治体でインボイス制度の中止・延期・見直し等を求める意見書の請願・陳情が採択されている(2024年6月現在)。

「STOP!インボイス」が2024年4月に公表した「フリーランス等の7000人 実態調査 報告」のリンクを貼る。インボイス登録事業者の1割近くが納税のために「借り入れ」をし、自死に言及する声さえある。インボイス制度に正しさがあったとして、その正しさのために何が奪われようとしているのか。自民党、そして公明党、あるいは維新の議員が一読してくれることを願う。日本型インボイス制度が本当に正しい税制といえるのか。

そして、党本部の顔色をうかがうのではなく、国民の声を聞き、反旗を翻してでもインボイス廃止の声をあげた自民党議員がいることを、自民党議員にこそ知って欲しいと切に願う。

地方議会の話は次回も書きます。

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