おくすり手帳を語る
おくすり手帳の原型は東大病院であるといわれています。
1994年から東大病院外来診療において、薬歴の一元管理を目的に作成した「処方カード」を処方せんに印字し配布したことが始まりです。
「処方カード」を受け取った患者自身が「お薬手帳」を作成していた歴史があります。つまり、「処方カード」は現在のお薬手帳に貼付する「シール」の元祖です。 (西陣病院だより)
1993年にソリブジン事件がおき、くすりの相互作用がきっかけで患者がなくなるという事態が起こりました。
さらに、1995年に起きた阪神淡路大震災において、避難した慢性疾患の患者が何の薬を飲んでいたのかがわからず、従来の薬物治療を継続することが困難となる状況が発生しました。
これらを受け、埼玉県にある朝霞地区薬剤師会は、1995~96年度の厚生省の医薬分業のモデル地区に指定され、事業の一環として、薬の相互作用による健康被害から患者を守るために、一部の病院や薬局で使われていた手帳を普及させようという活動が始まりました。
こうして、現在、一般的に使われているおくすり手帳が全国に広がっていきました。
現在は特徴あるおくすり手帳が多数見受けられます。
まずはCKDシールを用いたおくすり手帳の活用。慢性腎不全の患者さんであることがわかるシールをおくすり手帳に貼り、薬剤用量の調節の手助けとなるシールです。滋賀県などで行われている取り組みになります。
滋賀県全域で5年にわたり展開されたCKDシールのアウトカム評価
医療薬学 43(11) 601―609 (2017)
また、デザインに凝ったおくすり手帳もたくさんあります。
さらに最近では、電子お薬手帳も普及されつつあります。種類も多く、主な電子お薬手帳を並べてみました。
さらにIT化はすすみ、おくすり手帳ではありませんが、今後、マイナンバーから個人の薬剤情報を閲覧することが可能になります(2021年秋ごろの予定)
オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)より
災害時に活躍するおくすり手帳、
ポリファーマシーで活躍するおくすり手帳、
他院の処方の確認に活躍するおくすり手帳。
しかし、それは日本独自の制度であり、国際標準ではありません。
個人IDを利用した国際標準に向けて動きだしていますが、果たして、日本人にとってどのような形態が浸透していくのでしょうか。
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