僕がノンアル領域に挑戦する理由
阿部酒造がノンアルコール商品展開を行う理由
2022年になりました。阿部酒造的には製造は通常通り稼働していますが、今年は挑戦の年でもあるし、新年明けたてですし、ノンアル領域に挑戦する理由をまとめました。
ノンアルをなぜやりたくなったのか、本当にやる必要があるのか沢山考えました。しかし、自分の経歴を振り返るとこのノンアルジャンルはマストでやりたいことだよな、と改めて認識しました。
振り返りを記載しますが、結局僕は自分のコンプレックスが大きなチャレンジや事業を行う上での源になっている気がします。
ただの困っていない酒蔵の息子だとしたら、きっとこんなこと考えていないし挑戦をしていないと思うので、とても辛かったですが、(今も辛いけど)このチャンスをいただけた環境に感謝したいです。
Makuakeさんでは書ききれないことを書きながら、今の自分がどのような想いだったか振り返ることができるよう、noteを書きたいと思います。
日本酒蔵に戻ってきてからの
地獄の数年間と今
当たり前だけれども、”生産数量40石※1”そして債務超過の蔵にできる挑戦はかなり限定的でした。戻った頃は現在の製造数量よりも小さな40石程の製造数量の蔵で、いつ潰れてもおかしくないという経営状態。
※1...日本酒の酒蔵は製造数量を表すときに石数(コクスウ)で表現をすることが多く、1石=1800ml瓶100本となり、日本酒の酒蔵は元来300石くらいが家族でご飯を食べていける最低の量と言われている。
現在はビジネスモデルも変わり300石に満たない蔵もしっかりと利益を出している酒蔵は多い。
従業員を迎え入れるなんて到底無理でした。設備投資も行えず・行わず、売上もジリ貧で下がり続ける。そんな中で年密に作りこんだ経営企画でも金融機関は高い金利となる、だから借りない、という状態。
僕が入社した頃はとにかくキャッシュをしっかり作ることが第一目標でした。
まずは自分の給与を出すこと、設備投資や一緒に働いてくれる仲間を増やす事、何をやるにもキャッシュやそれを引き出す信用力を会社としてつける事が全てでした。この頃に取引してもらっている酒屋さんには本当に感謝しかないです。その結果、会社の信用度が徐々に向上、設備投資もできるようになり、仲間も増えました。
▲2021-2022BY※2のメンバー
※2...BY Brewery Yearの略。日本酒の製造は寒造りと言われ、11月から年を跨いで3月頃まで続くため、2021-2022という表記になる。
そして、少しずつ自分のやりたい日本酒造りを実現できるようになりました。その一つが田んぼ別で日本酒を仕込む「圃場別(ホジョウベツ)シリーズ」です。
▲圃場別シリーズのお酒
信用力向上のおかげで契約してもらう農家さんを見つけることができ実現しました。
日本酒造りはまだまだ奥深い、仲間や設備が整うことでやりたかった造りもどんどん挑戦できるようになりました。
僕がこれからやりたい事
僕自身、飽き性であるし、前職で毎年・毎月のようにやることや目標が変わる環境を4年弱も過ごしたからなのかはわからないですが、好奇心旺盛な性格は今の多品種な酒造りにしっかり根付いていると思いますし、これからも変わらないでしょう。
酒蔵としてやりたいことがたくさんあります!
1、米作り
2、副産物である酒粕を活かすこと
3、酒蔵らしい地域活性/酒蔵として地域との交流を深めること
米作り
阿部酒造が米作りを行うにはたくさんの課題がありますが、農業へフォーカスを充てるだけの時間とコストが足りないことが主たる要因です。
阿部酒造では9ヶ月程酒造りが動くので稲作とも期間が大きく被ってしまう、ヒューマンリソースとキャッシュ、そして農業での知見が圧倒的に足りない。少しずつ課題をクリアし、近い将来参入したいと考えています。これはロングスパンですが必ずやりたい。
日本酒を造れば造るほど米まで作りたくなってしまうんです。
米作りしたい人超ウェルカムです!!
副産物である酒粕の
有効活用の活路を見出すこと
お酒を造る上で必ず出てくるものが酒粕です。酒粕は様々な使い方がありますが現状日本酒造りにかける時間が多いため、酒粕の使い道はまだ考える余裕がなく、全て産業廃棄物として処分をしています。もったいないですよね。今のSDGsの考えからは真逆。。
元々SDGsという言葉の前から日本酒は余すことなく原料を使い切ることができると言われているので早くここも着手したいです。
具体的には
・田んぼの肥料
・酒粕から粕取焼酎(醸造アルコール)を造り、自社の清酒に還元
・スーパーで販売….etc
日本酒を造る酒蔵であるから酒粕が必ず出るし、それを活かした新しい挑戦はどんどん行っていきたいと考えています。こちらは一部近く動き出すかも。。
そしてようやく本題、今回のノンアルコールジャンルへの参入はこの3のやりたいことに紐づきます。
酒蔵らしい地域活性
酒蔵流で地域との交流を深める
酒蔵はお酒を造るメーカーでありながら、昔から地域の人達との結びつきが非常に強かったのだろうと思います。
例えば、神社には御神酒を出すし、地元の祭りや家を建てるときもお酒が振る舞われます。
しかし、僕が子供の頃は暮らしている家と蔵は離れていて、実家が酒蔵とはいえ家業が酒蔵感は全くありませんでした。当時、「酒蔵は儲からない」「日本酒は飲まれなくなった、だから酒蔵なんかよりもっといい仕事につきなさい」とことあるごとに家族から言われていたし、ごく稀に自分の蔵に行った時は何か薄暗く、清潔度が欠けてとても人を寄せ付ける感じでなく、、「うちの蔵は汚いから人に見せるものではない」とよく家族に言われていました。だから家業が酒蔵なんだ!と自信を持って言えることもできなかったし、むしろ家業が酒蔵とか恥ずかしいな、とまで思っていました。
これがコンプレックスとなり、
何がなんでも地域に根付いて、老若男女が行き交い、地域の人の自慢の場所となる酒蔵にする!という考えを持つようになった気がします。
そこで思うのは、清酒にある”アルコール飲料”という壁です。当たり前ですが、僕たち酒蔵がどんなに美味しいお酒を造っても20歳未満の人たちにはその魅力を100%伝えきることができません。日本酒のイメージが悪く一度も飲んだことない大人の人を日本酒沼に落とすことができても、法律の壁だけは越えられません。せっかくであれば20歳になる前から酒蔵と接点を持ってほしい、酒蔵を地元の子供から大人まで自慢に思ってほしい、この想いがどんどん強くなっていきました。
酒を造っているだけでも大変なのに新しい事業領域への挑戦とかどうだろう、と何度も自問自答しましたが、やっぱり酒蔵を老若男女楽しんでもらえる空間にするためには絶対に必要だな、と感じノンアルコール領域に踏み入れます。考えれば考える程ノンアル領域でもいろんな挑戦ができそうです!乞うご期待。
阿部酒造ノンアル飲料第一弾!!
今回はクラフトコーラシロップを製造します。
コーラに大事な”クエン酸(レモンの酸)”と”甘み”ですが、なんとこの部分、酒造り技術で培った「米麹」によって一部補完ができるんです。
これらはかなり親和性が高いなと感じています!
「米麹」を一部使うことで甘さや酸味を補完できるのです。何より「コーラ」ってキャッチーじゃないですか!?敷居が高いと思われがちな日本酒とは正反対な飲み物である、ということもコーラシロップ製造をチョイスした理由です。
現在、makuakeのプロジェクト実施中です!!おかげさまで300万円を超えました!!残り1ヶ月強プロジェクトは募集中です!!応援お待ちしております!
まずは今回の新建設で
・コーラシロップ製造販売棟
・カフェやテイスティングスペース
を開きます!
人を呼べる酒蔵に進化し続けます!!!
そして今回調理が一通りできる設備も導入するので、将来的には、
・1日1組~2組限定でシェフなど招聘して柏崎の人にマリアージュコース開催
・小学生と一緒に甘酒作り体験
とかできたら最高に楽しいな、僕が。
そんなnoteを書いている今日、いつも蔵の前を散歩している近所のおばあちゃんから「5代目(父)か6代目(僕)に渡してくれ」と蔵人が預かった手紙には阿部酒造の製造部の脇にある猿田彦の石碑がなぜあるのかと阿部酒造の言い伝えが書いてありました。酒蔵って地元に根付いているって改めて実感。
建物の完成はGW明けの予定です。
暖かい目で応援してもらえれば嬉しいです。
みなさんぜひ柏崎そして阿部酒造に遊びに来てくださいね!
【2022/02/07 追記】
makuakeのプロジェクトを終えてみての感想です。
まずはご支援いただいた皆様改めて御礼申し上げます。
率直に、、酒造り期間中にやるもんじゃないなと実感しました(笑)
サポートしてくれた蔵人に感謝です。ありがとうマサ!
自分達のやり遂げたい事にいろんな方から応援いただけると、こんなにも力強い事なんだと改めて実感しましたし、期待に応えられるように頑張りたいと思います。FB/インスタ/Twitterからのコメント本当に嬉しかったです。
改めてですが、拡散し積極的に動いてくれた蔵人のみんなにも感謝ですし、応援してくれた方もそうですし、僕は改めて本当に人に恵まれているなと実感しました。
酒造りが落ち着いたらちゃんとまたご先祖様のお墓の掃除したいと思います(笑)
ここで終わりではなくスタートですので、皆様のご期待を裏切らないよう精一杯ものづくりに勤しみます。
なかなか晴れない世の中ですが、造りが終わってリアルで会えるようになったら乾杯しましょう、コーラでも日本酒でも。