
iGEMからの起業例のまとめ
iGEMから起業へ
第76回日本生物工学会大会 シンポジウム「合成生物学国際学生コンテストiGEMによる人材育成」(東京工業大学大岡山キャンパス, 2024年9月9日)https://www.sbj.or.jp/2024/symposium/program_2s_bp.html にてDorothyさんからiGEMから起業に至ったチームの例がいくつか挙げられていました。
そこで今日は、iGEMからの起業例についてiGEMとの関連やインタビュー記事のリンクなども加えつつ、共有したいと思います。
シンポジウムの記事も投稿したのでもしよければご覧ください。
Epistra:iGEM Osaka 2012 /2013卒業生が創設
まずは今回のシンポジウムでご講演いただいた都築拓さんが取締役CTOを務められているEpistraについて
実験条件探索AI「Epistra Accelerate」を活用したハンズオン研究支援サービスなどを手掛ける慶應義塾大学発スタートアップ。 「Epistra Accelerate」は近年実験科学分野で注目されているベイズ最適化を基盤技術とした、ライフサイエンス分野の課題に特化した実験条件探索AIだ。同社が独自開発したアルゴリズムにより、“性能が目標に達しない、研究開発が長期化する、原価コストが増大する”といったライフサイエンス研究開発における課題を解決し、優れた実験条件を効率的に探索する。これまで、医薬品開発や培地組成の最適化、バイオものづくりなど幅広い分野で顧客の生産性向上に成功しており、ライフサイエンス業界における生産性改善の分野で業界トップクラスの実績を誇っている。2024年9月には「Epistra Accelerate」を搭載した細胞培養の最適化支援ソフトウェア“CellTune”を島津製作所と共同開発した。
今回のご講演の中でiGEM Competitionへの参加が自身にもたらした影響に関して次のようにコメントされていました。
iGEM Competitionへの参加を通して
・当時は珍しかった数理の生命科学への応用に携わるきっかけになり、仲間の刺激を受け、Dryのハードルが下がった
・キャリアの早い段階で、資金調達やメンバー採用も含め、チームでプロジェクトを遂行する経験を得られた
iGEM Blogに日本語でのインタビュー記事も掲載されています。ぜひこちらもチェックして見てください。
Ginkgo Bioworks:2006年のMITチームから
ギンコ・バイオワークスは08年にボストンで創業した、細胞・ゲノムの研究開発領域で変革を起こす企業である。21年に上場した際には16億ドルを調達しており、カリフォルニアやオーストラリア、フランス、オランダ、スウェーデンなどを研究拠点として、世界最大規模のゲノム開発事業を展開している。
具体的にはAIを用いて、ファウンドリー(注2)の自動化を手がけている。研究室ではAIや機械学習を用いて600万種類もの酵素をデザインし、スクリーンテストを行っている。また、CRISPR(クリスパー)という機械学習を用いた編集テクノロジーで、標的となるDNAを採取し、低コストで解析している。
(注2)合成生物学等の技術開発に必要な装置群を集積させ、オートメーション化した技術パッケージ
なお、Ginkgo BioworksとiGEMとの関係については創設者の1人であるBarry Cantonが書かれたこちらの記事にまとまっているのでぜひご覧ください。
Bluepha:2010年iGEM Grand Jamboreeでの清華大学と北京大学のチームリーダー同士の出会いから
Bluephaは、生物製造と材料革新を行う企業で、競争力のある差別化された画期的な製品を提供しています。私たちは合成生物学、データサイエンス、自動化などの最先端技術を駆使し、消費財、ヘルスケア、農業、電子機器などの分野で革新的なニーズを満たす10億ドル以上の製品を提供し、Fortune 500企業に継続的な価値を届けています。分野の枠を超えて未来の材料を創造することで、Bluephaは現在および将来の世代に実質的かつ持続可能なソリューションを提供します。Bluephaでは、未来のための「生命」を創造しています。
iGEMからもインタビュー記事が出ています。Bluephaは修士と博士の学生からなるCommercial Teamを支援しているとのことで、iGEMチームを支援しているiGEM卒業生/企業視点のコメントも乗っているので是非ご覧ください。
ASIMOV:iGEM Washington 2008の卒業生がCEOに
Asimov は、生物学向けの初のコンピュータ支援設計 (CAD) プラットフォームを構築することで、生きた細胞をプログラムする新しい方法を開発しています。CAD は他のエンジニアリング分野に革命をもたらし、現代のコンピュータ、ロケット、高層ビルなどを実現しました。Asimov の目標は、生物学向けの真の CAD プラットフォームを構築し、世界最大の課題のいくつかに取り組むことができる高度なバイオテクノロジーを加速することです。
こちらのiGEMからの記事にもiGEMとの関わりについてまとまっています。
「iGEM は、新進の科学者に一生に一度の経験を提供します。私を含め、多くの合成生物学者がこの分野に参入する道です」
「iGEM がなかったら、私の人生は今とは違っていたでしょう。学部生のチーム メンバーから、チーム メンター、ジャンボリーの審査員、トラック オーガナイザー、そして今ではアシモフを通じてパートナーになれたことを誇りに思います。」
2024年大会でのASIMOVがiGEMに提供されていたサービスについてはこちらにまとまっています。
Biomatter:iGEM Vilnius Lithuaniaチームのメンバーによって設立
2019年、Biomatterは、生成AIを使用して作成された最初の完全に機能する酵素を発表し、Nature Machine Intelligenceで画期的な成果を発表して世界的な注目を集めました。この画期的な成果は、それ以来、合成生物学全体にイノベーションの波を引き起こしました。今日、BiomatterのIntelligent Architecture™プラットフォームは、酵素設計の最前線に立ち、天然テンプレートの制限なしにまったく新しい酵素の作成を可能にしています。この技術は、Thermo Fisher Scientific、BASF、Neogenなどの大手グローバル企業によってすでに使用されており、新たな投資は、新しい酵素のさらなる開発と生産を促進するでしょう。
Paqta:iGEM Design League 2022のUPCHチーム(ペルー)から
iGEM Leagueに出場後、iGEM StartupsのVenture Foundry Programに参加し、その後起業に至ったチームです。
Paqta は、栄養素の同化を促進し、合成肥料への依存を減らすことを目的とした、カスタマイズされたデータ駆動型のバイオ肥料を提供しています。
iGEM Design Leagueのペルーチームに縁のあるスタートアップとのことなので、ここで少しiGEM Leaguesについて紹介したいと思います。iGEM Leaguesは2021年から3年間開催されたプログラムです。コロナ禍を経て、資金不足や実験室へのアクセスがないことにより、iGEM Competitionへの出場を妨げられている学生にもiGEMに参加する機会をというコンセプトで始まりました。そのため、wet実験を必要としないdryの地域型の大会という形で、実験室を必要とせずに合成生物学を通じて地域の問題に対する解決策を設計するコンテストとして行われました。
その中でもiGEM Design Leagueは、3年連続で開催され、最多の合計75チームがラテンアメリカから参加しました。
日本でも円安の影響により金銭面の問題から出場を断念するチームが多くあることから、日本でiGEM Leagueを開催できればとiGEM Japan Communityの運営の方々と話し合っていたこともあったのですが、残念ながら現在は助成金の終了に伴う資金面の都合からiGEM Leaguesプログラムは停止してしまっている状況です。
iGEM Leaguesのwebページによると、2025年の再開を目標に、資金調達のアイデアや新しいビジネスモデルなど提案や協力を募集しているとのことです。お問い合わせはleagues@igem.orgまでとのことなのでiGEM Leaguesのコンセプトに共感いただき、ぜひ力になりたいという方いらっしゃいましたらご連絡お願いします。
FluoSphera:2019 UniGE-Geheleチームから
FluoSphera は、前例のない多重化能力により候補薬の有効性と安全性をより正確に予測する液体微量生理学システムを開発しています。当社の LMS により、製薬会社は創薬パイプラインのリスクをはるかに早期に回避し、失敗コストを削減できます。
iGEM Startup Venture Foundry:iGEMからの起業支援プログラム
iGEM Communityでは起業の支援も行っています。昨年は81の応募がありそのうち20がアジアからの応募だったとのことです。なお、2025年のプログラムは2025年2月1日まで参加申し込み受付中とのことです。バイオアントレプレナーシップに興味のある方はぜひチェックしてみてください。
