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フグを失うときに思うこと。

我が家にはアベニーパファーという最大3㎝ほどの世界最小のフグが十数匹います。同じ種類のフグでも、たくましい子がいれば小さな子がいたり、強気な子がいれば気弱で臆病な子もいたりして、毎日水槽を眺めているとそれぞれに個性があることに気づきます。

体が大きくならない、チビフグ

我が家では毎日1回ごはんタイムを設けています。フグは1日2回ごはんをあげるといいと言われていますが、飽食は短命につながるという話もあり、健康第一で長生きできるように、食事は控えめにしています。

しかし、まだ幼いフグは例外です。大きく育ってもらうために成長期のフグは1日2回しっかりごはんをあげます。そうすると、大体のフグはお腹がぷっくりまんまるなTHEフグ体型になっていくのですが、ここ最近やってきたフグ達のなかにも例外の子がいました。ほかの子たちの半分くらいのサイズの子でした。
ごはんの時間になっても、気が強い子に押されてごはんに近づけずなかなか食事にありつけないうえに、気が弱いことをほかのフグにすぐに悟られて追いかけまわされるため、水草に隠れてうまく難を逃れていました。
ごはんのたびに健康観察しながら、フグ達のパワーバランスを確認しているため、気が弱いフグにはすぐに気が付きます。

気が弱い子には贔屓する飼い主

ごはんの時うまく前に出てこれないことに気づいた日から、チビのごはんだけ工夫してあげるようになりました。
他のフグ達にごはんの塊をあげて気を引いているうちに、チビの前の前にピンセットでごはんを差し出し、マンツーマンで食事をしてもらうようにしたのです。
そんなことをすると、チビフグと私の間に不思議と絆を感じるようになります。向こうも、私のことをご飯をくれる人だと確信して、脅威ではないと認められて恐れることがなくなるのです。
チビフグはピンセットから直接ごはんを食べて、ごはん以外の時間でも近づいてきてくれたりするので、ほかの気が強いフグ達は「変なやつらー」って感じで、そんな1匹とひとりの顔をじっと見比べていたりします。

それでも大きくならない、チビフグ。

他のフグ達はある程度大きくなったので、1日1回のごはんに切り替えましたが、チビフグだけは小さいままだったので、特別に朝晩とご飯をあげ続けました。モリモリ食べてくれましたが、快便だし(いいことだけど)、全然大きくなってくれません。
どれだけご飯をあげても、うまれつき体が小さい子はいて。これはこの子の個性だから、このまま健康に暮らさせてあげたいと強く思っていたのですが、体格の小さい子は過去の経験上、長くは生きられませんでした。
今回こそ、この子は、とおもって毎日健康観察しながらお世話をし続けました。

チビの体に起きた変化

しかし、ある日変化が起きました。チビフグの体表に白い線がたくさん浮き出ていたのです。フグもハリセンボンと同じ仲間で実は小さな針を皮の下に隠していることをしっていたので、それが見えているのかな?と思っていたのですが、次の日も消えず。おかしいな、、とおもってさらにじっくり観察してみると、その小さな白い線の1つ1つがわずかに動いていることに気が付きました。
これはただ事ではない。
急いで症例をWeb検索して、『こしょう病』であると判断しました。

【こしょう病】
鞭毛虫であるウーディニウム(Oodinium)に感染されることで発症する。白点病と同程度に観賞魚がかかりやすい病気。別名ウーディニウム病・胡椒病・サビ病・ベルベット病と呼ばれる。

アクアリウムWiki

そこからすぐに薬浴するための水槽を作って、チビを入院させました。(熱帯魚は基本的に、薬や塩を溶かした水槽の中に入れることで病気などを治療します。)
治療に適した温度に水温を調整して、薬を入れて、1日たてばまた新しく治療用の水槽入れ替えて、毎日チビを見つめ続けました。しかし、症状が改善する様子はありませんでした。えらの動きも弱くなり、水の流れに体が力なく流されて、自らの意思で動いている様子がなく、えらも動かなくなったように見えたので、亡くなったと判断し棺を用意しました。

息を引き取ったかのように見えるチビ

チビは死んでいなかった

棺に入れようと、手で横たわるチビをすくいあげようとしたところ、動き出したのです!!
生きてる!!!!
慌てて治療を再開し、徐々に塩を入れて塩水+薬浴状態にしました。
すると、日に日にえらの動きがまた大きくなり、白い線も短くなり、ちょびちょび動き始めたのです。
チビは頑張っている。
誰よりも小さな体なのに、荒い息をしながら懸命に生きている。

このままどうか、回復してくれないだろうか。
私はチビを見つめて、祈り続けました。

しかし、一生懸命小さいなりに太らせたチビの体は3日もご飯を食べられなくなるとあっという間にやせ細ってしまい、これは体力が持たないかもしれない。。と思いました。
えらの付近も赤くなっていたので、エロモナスも併発していた可能性がありました。
そして、その翌日、息を引き取りました。

チビの命

ここ数日の間は、治療のためチビの険しい表情しか見ていませんでしたが、水槽から引き揚げたチビは、かつてのようなくりっとした目で安らかに眠っていました。
とても苦しそうだったので、やっとチビが苦しみから解放されたことにほっとした自分もいました。

チビの治療水槽を毎日ゴシゴシ洗うたびに、どうすればフグが健康に暮らせるのか今後の対策に考えを巡らせ、後悔と反省が頭をぐるぐるしていました。
フグを失ってしまうたびに、私はさまざまな気付きをもらいますが、チビの命も、私にいろんなことを気づかせてくれました。
それを無駄にしないように、今後の水槽管理にそれを活かしていきたいと思っています。

忘れられないフグとは

かわいいフグを、きれいな熱帯魚を長く楽しむならば、できる限り大きくて丈夫そうな子を選ぶに越したことはないです。体格が、病気になったときの耐久力に大きく関わってきます。
ただ、いろんな心配をして見つめる子ほど、思い入れも強くなって、忘れられない日々をくれたりもします。。
1匹、1匹と向き合うほどに思い出が増えますが、別れのつらさも大きくなります。
私は時に感受性が強すぎるので、大きな悲しみに心を持っていかれそうになることがありますが、それでもフグが人生を豊かにしてくれるので、悲しみも受け入れながら今後もいっしょに暮らしていきたいと思っています。


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