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たとえエンバペを獲得したとしても、ユーヴェのメルカートは失敗だ。

 記事タイトルのこの台詞、誰が言ったと思います?カッサーノだと思った貴方、立派なカルチョファンです。タッキナルディと思った方、貴方は普通に老害です。今すぐXをアンインストールしてください。正解は私です。

 著名人でもない一般人の言葉の価値なんてたかが知れていますが、これには根拠があります。リッカルド・カラフィオーリの獲得に失敗したからです。カラフィオーリは移籍金4500万ユーロ、年俸350万ポンドでアーセナルへ移籍しました。

 正直に言うと、現時点でジュントリ(ユヴェントスSD)の働きは全く評価できません。石丸伸二さん風に言えば『恥を知れ』でしょうか?私がアンドレア・バルザーリならば「ここはユヴェントスだぞ!」と叫んで彼の頬に平手打ちをしていることでしょう。

リッカルド・カラフィオーリの紹介は以前にも書いた通り。

半年ほど経ちましたが、あれから彼に対する評価はますます上がるばかり。EUROで不甲斐なかったイタリア代表の中で、FPではほぼ唯一と言っていいほど突出したパフォーマンスを見せてくれました。当時は「ワールドクラス候補生」と称しましたが断言します。すでにカラフィオーリはワールドクラスに到達しているでしょう。

 22歳でワールドクラスの評価を受けているだけでも充分賞賛に値するのですが、彼のキャラクターはこれだけにとどまりません。まず第一にキエッリーニ退団後、ユヴェントスが悩まされてきた左利きのCB問題に終止符を打てる存在であること。ここ数年は本職は左SBであるアレックス・サンドロ、オプションで右利きのダニーロが3バックの左を務めることが多かったですが、ついにこのポジションのスペシャリストが加わるはずでした。

 保持時に於けるサンドロの中継役としてのポジショニングセンスとボールの持ち運びは高く評価していますが、守備時は本人の身体能力低下によってトップレベルで戦うには厳しかったと言わざるを得ません。そのサンドロの退団も決まっているため、ユヴェントスの最終ラインにはレギュラークラスのレフティーが不在となっています。

 左利きのCBであれば良いのならば、代替案として挙がっていたヤクブ・キヴィオルで構わないのですが、対人性能はカラフィオーリと比べて雲泥の差です。スペツィアでの活躍が評価されてアーセナルに移籍した時でも対人にはやや難ありといった印象でした。持ち味であるパスセンスは元々守備的MFを務めていただけあって標準以上を持ち合わせているのですが、持ち運びの部分であったり、相手のプレッシャーを引きつけてからパスを出したりするような選手ではないため、”ビルドアップ能力が優れている”という曖昧な評価でカラフィオーリと同じ括りにするのは間違っています。アーセナルが5000万ユーロ近くの大金を投じてまでカラフィオーリ獲得に動いたのも、この手の能力が非常に高いからだと思います。(アーセナルは左SBとして計算してそうですが。)

 そして何よりも、カラフィオーリがチアゴ・モッタの御曹司かつイタリア人であることが重要なのです。かつてのBBCや、現在のインテル。もっと遡れば歴代最強とも言われたネスタやマルディーニを抱えたミランのように、いつの時代にも覇権を握ったクラブには代表クラスのイタリア人DFが存在していました。古い考えかもしれませんが、ユヴェントスのフロント陣にイタリアを代表するクラブだという自負があるならば、どんな手を使ってでも取りに行くべき選手でした。

 ここ数年不在だった左利きのCB。イタリア人のプロスペクト。そして新監督であるチアゴ・モッタの御曹司。この条件全てを満たす選手は世界中どこを探してもリッカルド・カラフィオーリただ一人です。ボローニャの要求額の5000万ユーロが高すぎる?本当でしょうか?売却益の半数をバーゼルに支払わなければいけないボローニャが少しでも高く売りたがるのは当然として、5000万ユーロで手に入るというのならば、私はむしろ”安い”と感じます。イタリアのクラブ同士の取引で1人の選手に5000万ユーロは法外な値段であるにも関わらずです。ユヴェントスにとってカラフィオーリの潜在価値は1億ユーロをゆうに超えるでしょう。

 なぜか?前述のキャラクターを持っているカラフィオーリは新時代のアイコンになり得る存在です。今夏にレアル・マドリーがキリアン・エンバぺの獲得を逃し、ブカヨ・サカやジャマル・ムシアラを連れてきたらどうでしょうか?どちらも素晴らしい選手ですが、世界一のクラブが世界一の選手を連れてきたと世界中にアピールするためには、アイコンはキリアン・エンバぺでなければならないのです。数年前のPSGがネイマール獲得に2億ユーロを超える金額を投じたのも、その要素が少なからずあったからでしょう。今やユーヴェにとってのカラフィオーリは、マドリーにとってのキリアン・エンバぺであり、5年前のPSGにとってのネイマールと同等なのです。

 20数年前にユヴェントスは5200万ユーロでジャンルイジ・ブッフォンを獲得。GKにかける移籍金としては高すぎると批判を受けていました。しかも、現代ではなく当時の5200万ユーロですから、現代のレートに換算すれば最低でも8000万ユーロ程の価格ではないでしょうか。さて、ユヴェンティーノの皆様はこのブッフォン獲得に費やした5200万ユーロは高いと思いますか?安いと思いますか?もはや答えを訊くまでもありませんね。


(了)

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