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福島民報「民報サロン」掲載 #1

2021年9月より12月の間、福島県の地元紙「福島民報」のコラム「民報サロン」を5回に渡り執筆致しました。

想像をはるかに超える大変多くの方にお読みいただき、たくさんの応援をいただきました。まずもって、お読みいただきました方々や福島民報社さんに御礼申し上げます。ありがとうございました。

そこで、自分の備忘録もかねてこちらに訂正前の記事を転載致します。

季節に合わせて執筆したものもあり、お読みいただく時期と季節がそぐわないかもしれませんが、そこはなんとなく流していただければ幸いです。

それでは民報サロン第1回目「福島民報」9月20日掲載分です。
どうぞ。

#1 「こはたマルシェ」

神社では年に一度、場合によっては年に数回「例祭」というお祭りを行います。地域によっては「例大祭」とも呼ばれます。実はこの例祭、神社にとってとても大切なお祭りなのです。例祭を行う日は神社毎にそれぞれ異なりますが、その神社の由来や由緒に関係する日、または神社が創建された日などにちなんで定められています。よって例祭日はその神社の「根幹」を成す大切な「おまつり」の日と位置付けられています。

木幡山隠津島神社の例祭は毎年四月二十九日に行われています。この例祭では、本殿の御扉を警蹕(ケイヒツ・「オオー」という掛け声)が響く中厳かに開かれ、宮司が祝詞を奏上し、氏子や崇敬者のみなさんの安寧と発展、そして世界の平和を御祭神の宗像三女神の大神さまに祈願します。また、神さまに気持ちよくお願いを聞いていただくために、たくさんのお供え物とお神楽も奉納します。以前は若連による山車の引き回しや子供みこしの奉納も行っていました。

しかし、新型コロナウイルスの猛威と、かねてからの少子高齢化の影響も相まって、県内はもとより、全国各地の神社では例年通りの「おまつり」を縮小、または中止をせざるを得ない状況に至りました。当社においても、令和二年の例祭は最小人数の参列とし、神事も短縮され、山車もおみこしもない寂しい「おまつり」となってしまいました。

ですが、今年に入りコロナ禍の中においてもどうしたら「おまつり」を継承できるか、といった前向きな意見も出始め、一部では「ウィズコロナ」を意識するようになった神社も見受けられるようになりました。

そんな中、かねてからマルシェ構想を共にしていた、地元のオーガニック食品を取り扱う木幡ベースの島村さんと意気投合し、「とりあえずやってみよう」を合言葉に、寂しくなってしまった例祭を盛り上げるべく「こはたマルシェ」を開催する運びとなりました。

島村さんの豊富な人脈で続々と出店者が決まり、SNSで告知の輪が広がり、のちに大好評をいただくことになる「ゆきしろ屋」さん作成のチラシのおかげもあり、「こはたマルシェ」は予想をはるかに上回る大盛況となりました。

この「こはたマルシェ」の一日は確かに幸福な時間が流れていました。振り返れば、境内は賑わいを取り戻し、お客さんも出店者さんもみんなマスクの上からでもわかる笑顔で溢れていました。ずっと我慢を強いられていた子供たちも、わずかな時間ではありましたが、特別な「おまつり」の日を楽しんでいたようでした。

コロナ禍の中でこういった催しを行うことに対しては今でも賛否はあろうかと思います。命や健康は何よりも大切ですし、経済も大事、心の疲弊にも注意を払わなければなりません。人が健やかに生きていくためにはいずれも欠かすことはできません。

この日はすべての来場者がマスクを着用し検温・消毒を行い、距離をとって他者を思いやり、大いにお店が潤い、そしてだれもがみな笑顔で穏やかな時を過ごしていました。

今までの「おまつり」の形ではなかったけれど、とても大切な「例祭」の日にこうして多くの方と幸せを共有できたことは今後の「おまつり」を考える一助となりました。


以上です。ここまでのお読みいただきありがとうございました。


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