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彼の誕生日。

8月上旬。

彼の誕生日が迫っていた。

受験生活真っ最中。お金も全然ない。時間の余裕もない。

そんな中彼をどのようにしてお祝いするべきか、考えた。


とりあえず、プレゼントを買って渡す余裕はない。
でもおいしいご飯くらいは食べに行きたい。


私は友達と行ったおすすめのレストランを予約する。

そしてプレゼントは手作りのアルバムを渡すこととした。


家のコピー機で二人で写ってきた数少ない写真たちを印刷し、

今までの思い出をアルバムにしていった。


すべて低コストで材料をそろえ、勉強の隙間時間で製作していった。


「お疲れ様。元気?お誕生日、会えませんか?」

ラインを送ると、塾の休憩時間の合間に返事が来る。

「美嘉~お疲れ様。お祝いしてくるの!?」
「もちろん。夕方からでも時間空けれたりする?私たまたまその日授業なくって」
「俺もその日自習の予定しかないから、いけるよ。楽しみにしてる。」


楽しみにしてると言われると、きちんとしたプレゼントがないのが不安になった私は、お店を練り歩き、ちょっとしたファッションアイテムを選んだ。



誕生日当日。

その日は朝からワクワクが止まらず、自習は早めに切り上げて準備を進めた。

「会えるの楽しみすぎて自習早めに切り上げたわ。」

彼からラインが入る。お互い同じことを思っていたようだ。


持っている服の中で一番おしゃれだと思われるコーディネートで向かう。しかし真夏日だし、緊張もあってすぐに汗をかいてしまった。

汗を拭いて、彼の元に急ぐ。

案の定私の方が集合場所に早く着く。
身なりを整え、汗を拭きなおして彼を待つ。

「おまたせ!」

彼は最高の笑顔で私の方に向かってくる。
ゆっくり二人で話すのは前の模試ぶり。模試の後の夏休みに入る前に学校で軽く話してはいたが・・・。

すごく久しぶりに感じた。

「久しぶりだね。」
「なかなか受験生って忙しいよな。毎回美嘉に久しぶりって言ってる気がするわ。早く終わってほしいな。」

受験戦争を一緒に戦っているからこそ、苦しい気持ちを共有する。

そのまま夕暮れ時を共に歩き、予約したレストランへ入る。

混み合うのを予測して早めの時間に予約したため、レストランはほぼ貸し切り状態であった。


彼にメニューを見せて選んでもらう。

彼はニコニコしながら「これ行っちゃっていいすか・・・」と学生の私にはなかなかの値段のメニューを指さす。

彼がニコニコして幸せそうにしている姿を見ると、もうどうな支払いでもかかってこい!という謎の男魂のようなものが出てきて、快く承諾する。



彼にはいままで、それ以上のことをしてきてもらっている。

私と遊びに行くときはなるべく多く出そうと心がけてくれていたし、なにより精神的な支えになってくれている。

今日くらい、その恩返しがしたい。そんな気持ちだった。


頼んだメニューが出てくる。
彼の眼は少年のようにキラキラしていた。美味しい美味しいと言いながら頬張っている姿が、母性本能をくすぐられ、見とれてしまった。


ある程度食事が終わり、私はプレゼントを彼に渡す。

「プレゼント渡してもいい?大したものじゃないけど・・・。」

私は手作りのアルバムとお店で買ったグッズを渡す。

「え、美嘉、アルバムとか作ってくれるタイプなの??うれしい・・・。見てもいい?」

私はすぐに頷く。すると彼はアルバムをめくりだす。


徐々に彼の目がウルウルする様子が見て取れた。

アルバムの最後には私の今思っていること、彼への感謝の気持ちを長々とつづっている。


「・・・美嘉ありがとう。大切にするわ。」


彼は他のお客さんがいる中で恥ずかしそうに涙を拭いた。



その後お店を出ると日が沈み暗くなり始めていた。


この後のプランは全く考えていなかった。

どうしようかと焦り出したところ、

「今日お祭りやってるみたい、行ってみる?」

彼がそう言うので急いで検索してみる。

電車で一駅行ったところで夏祭り、花火開催との文字が。


「行ってみようか」

2人で一駅だけ電車を乗り継ぎ、夏祭り会場に向かう。


浴衣を着ている人もチラホラ。

「美嘉の浴衣姿見てみたかったなー笑」

「…来年ね?笑」


1年後、大学生になっている予定の私たちがどのように過ごしているか分からないが、

約束してみた。


「おー言うたで?受験勉強頑張れそーや。笑」

彼はそう言って笑う。

人も多く、湿気の多い暑さの中、
私たちは手を繋いで歩く。

学校から少し距離が離れた場所だったので、
人目も気にせず。2人でゆっくり最近の話をした。


2人でかき氷を食べ、

「青春やな。」と呟く。

そこで改めてお誕生日おめでとうと伝えて、彼との久々の2人きりの時間を過ごした。


「美嘉、帰りどうする?」
「んー久々に同じ電車乗ろうかな。」


わざと遠回りで彼と一緒に電車に乗った。

もうすぐ彼と一緒の時間が終わってしまう…

そう思うと涙目になってしまった。


彼氏にその姿を見られてしまい、心配される。

「美嘉ー、今日は本当にありがとう。すげぇ嬉しかったし幸せだった。明日からまた毎日が始まるけど、
終わったらな。ガッツリ遊びに行こうぜ。」

彼に頭をヨシヨシされ、涙がこぼれてしまった。


彼との自由な日々を目指して、もうちょっと頑張ろうと心に決め、

彼とバイバイした。


私の青春時代。

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