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皆の中で手をつないだあの日。
彼の誕生日のあと、予想していた通り全く彼に会う機会はなくなった。
お互い勉強に明け暮れ、LINEをしている暇もなかった。
私はやっと成績の波が乗り出し、看護師という未来が微かに見えだしていた。
8月下旬。
同級生からLINEがはいる。
「美嘉、久しぶり!お願いがあって・・・。」
私は軽音部に春まで所属しており、ギターとベースを行き来しながら演奏していた人だった。
夏の時点では引退していたが、久々にそのバンドメンバーからの連絡であった。
「学園祭でアコギ弾いてくれない?美嘉以外に頼れる人いなくて。」
要件としては学園祭の後夜祭で同級生の元軽音部の女子二人がボーカルとして、私のアコースティックギター1本の演奏で歌い上げるとのことだった。
私はめっきり受験勉強に明け暮れて久しくギターを触っていなかった。
でも私の学校での学園祭の最後を彩る夏の一曲+長渕剛の乾杯を演奏するのは毎年恒例であり、後輩たちが皆あこがれる立ち位置であった。
私も去年まで先輩方の演奏に憧れていた。まさかその大役を私に・・・!?
不安ではあったがその誘いに乗ることにした。
そして実は私より何倍もギターのうまい彼氏。一応報告してみることにした。
「久しぶり、私学園祭の後夜祭でギター弾くことになったわ・・・」
「まじ!?楽しみにしてる。」
もしかしたら彼も憧れていた立ち位置なのかもしれなかったが、応援してくれるとのことだったので、
勉強の合間に一生懸命練習した。
9月
学校が再開になり、私は毎日ギターを担いで、休憩時間に女子三人で集まり後夜祭の演奏の練習を重ねた。
放課後に一人で教室の中でギターの練習をしていると、扉の隙間から顔を出して彼氏が声をかけてきた。
「美嘉、頑張ってる?」
彼がギターをうまいことを知っているので、私の拙い演奏を聴かせるわけにはいかない・・・しかも本番までの楽しみにしてほしい。とのことで
「だめ!!絶対聞いちゃダメ!笑 恥ずかしいから!」
「わかったわかった笑 でも教室暑いし無理すんなよー」
そして彼は参考書の大量に入ったリュックを背負い教室を出ていった。
この短時間でも、一瞬でも話かけてくれることが嬉しくてたまらなかった。
彼にまともな物を見せるためにも頑張ろう。
私は練習もほどほどにし、塾に向かい勉強も継続した。
9月中旬 学園祭前日。
私は食べ物を売る模擬店を実施する予定だった。
そのお店はシフト制で、仕事以外のタイミングで別の発団のもとで遊ぶことができる。
私は明日の予定を確認していた。そこで彼からの電話が鳴る。
「美嘉!明日朝一の2時間だけ一緒に学園祭回ろう?」
まさかのお誘いである。
彼はそういう周りに見えてカップルをすることが苦手なのかな、と感じていたので、学園祭一緒に回るなんてことできないと思っていた。
学園祭当日
彼との約束の場所に向かう。
私が中学生のことから憧れていた、彼氏とお化け屋敷に入る。ということを叶えるため、
朝一にお化け屋敷の発団のもとに向かう。
既に長蛇の列ができていた。
その発団は彼の部活の直属の後輩がシフトで働いていた。
「あ・・・お疲れっす。先輩たち先行ってもらっていいっすよ」
直属の後輩であり、私たちの関係もよく知っている子であったため優遇して入ることができた。
暗闇の中私たちは誰にもばれずにくっつき、手をつないで歩いていった。
その後1時間半ほど一緒に過ごすことができツーショットも何枚か撮った。
「美嘉―楽しかった!後夜祭楽しみしてるから、頑張ってな!!」
そしてそれぞれの持ち場に向かっていった。
緊張の後夜祭。
毎年、グラウンドで開催されるのだが、この年はあいにくの雨。
異例の体育館での開催となった。
その時点で19時を回っており、日は落ちかけており暗くなっていた。
私は演奏の準備でみんなのいる場所に行くことはできず、ずっと舞台裏にいた。
彼もどこかでみている・・・・。
「では最後に6年生の先輩方に演奏していただきます!よろしくお願いします!!」
一つ下の後輩が司会進行をしてくれ、私たちは緊張の面持ちで舞台に立つ。
目の前には中学1年生から高校三年生の全校生徒がいた。
こんな大人数の前で演奏すること自体人生初。
舞台側にライトが照らされているので、逆行で全校生徒のみんなは真っ暗で見えない。
それのおかげかあまり緊張せずに演奏できた。
私のギターに合わせ、ボーカル二人がハモリながら歌い上げる。
我ながら最後の学園祭の締めくくりには最高な演奏になった。
長渕剛の乾杯を弾いてると、気付いたら私たちの学年の生徒たちがステージにかけより私たちの演奏を聴きに来てくれた。
それに気づいて私は目がうるうるした。
全校生徒から拍手をいただき、演奏は終了となった。
私は演奏が終了し、ギターを担いで一直線で彼の元に向かった。
真っ暗だったのになぜか彼のことはしっかり見えたのだ。
「・・・美嘉ーよかったよ。頑張ったな。」
私はその言葉にウルウルしていた涙が完全に零れ落ちた。
そのまま体育館を出て全校生徒の動きに沿って歩き、発団の集合場所に向かう。
彼はそこで全校生徒の見ている中で私の手を握った。
「え、ここでつないじゃうの?」
「集合場所着くまでくらいいいやろ。」
彼はそう言い私の手を強く握った。
「美嘉と最後の学園祭楽しめてよかった。」
学園祭が終わり、私たちの最後のイベントが終了した。
もうここからはひたすら勉強の日々に突入していく。