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本格的な受験生の始まり。

お互い引退試合を終え、本格的な受験生生活が始まる。

今まで6年間放課後は一直線に部活動に向かっていた私たちにとって、

放課後すぐに勉強に取り掛かれるのは、かなり貴重な時間だったし、新鮮な気分であった。


彼とは依然会えない、話せない日々が続く。

彼は医学部現役合格に向けて塾漬けの毎日。

私も負けじと塾のない時間は自習で補っていった。


そこで久々に彼からラインが入る。


「美嘉ー、一緒に模試受けない?」

久々のお誘いが模試だったのは悲しかったが、友達ではなく私を誘うんだということに喜びを感じた。

私は即答でオッケーした。

「よかった。どんな理由でもいいから美嘉に会いたくって。誘ってみた。」

日々の勉強に疲れていた私はこの一言で泣きそうになった。

私たちはお互いにお互いを想い合ってる。

こんな幸せなことはなかった。


2人で模試の申し込みをし、同じ日を目標にお互い勉強に励んだ。


7月上旬

模試当日。

彼と最寄りの駅で待ち合わせる。

私の方が後に電車が到着し、改札にいるはずの彼を探す。

彼は眼鏡をかけ参考書をひたすら読み、真剣な表情をしていた。

その姿が新鮮すぎて、少しだけ遠い存在になってしまってるんじゃないかと不安になった。

恐る恐る声をかける。

「…おまたせ。」

私が声をかけると彼は私を見て一気に明るい表情になった。

「美嘉!久しぶり。元気してた?」

何も変わらない彼で私は安心した。

2人で試験会場までのバスに乗り込む。

「美嘉なんか暗記物する?」
「いや、ちょっと疲れてるから寝たくて笑」
「俺もやで笑 一緒に着くまで寝よか」

二ヶ月ぶりくらいにその日手を繋いだ。
2人でバスの一番後ろの席で手を繋いで眠りについた。

一瞬だったが幸せだった。


到着し、試験会場に入る。

彼と奇跡的に同じ試験会場。


しかし試験会場に入ればもうお互い真剣モードである。
わざわざ話しかけに行くような余裕お互いにない。
教室の中がそもそもそういう雰囲気がなかった。


午前中の試験が終わり、昼休憩となった。

手応えは全然ない。
ため息をついていると、肩を叩かれる。

彼が外を指差している。


おにぎりとパンを持って彼と一緒に教室を出た。
出た瞬間に彼が話しだす。

「はぁ。何あの教室。息詰まるわ。」

実際に教室内では休憩時間になっても誰も一言も発していなかった。

「いや、ほんとに。参考書見ざるを得ない雰囲気ね笑」

「ほんまに!美嘉に話しかけに行きたかったけど無理やったわ。お昼は絶対誘おうと思ってた!」

お昼休憩は1時間あるが、お互い暗記物もしたかったため、30分くらいで教室戻ろうと約束して外に出た。


私は看護系志望であり所謂ソフト理系だったため、理系科目が彼のようなガッツリ理系の方より1科目少なかった。
なので模試も終了時間が大幅に違ったのだ。

「終わる時間違うもんね、美嘉先に帰っときね。」

「え、全然待つよ?そのつもりだったけど…」

「美嘉、今日は勉強の日だよ。先に帰って。俺もすぐ塾行くし。」


彼にガツンと言われてしまった。その通りだ。

この日彼と2人きりになれたのが久々すぎて、少し浮かれてた自分を責めた。

今日は模試だ。しかも私も夜塾の授業があるから、それまでに模試の自己採点もしておきたかった。


「…そうだね。ごめん。」

謝ると彼は私の目を見て言った。

「美嘉、俺も今日一緒に帰りたいなって思ってた。同じ気持ちだったよ。でも、お互い踏ん張り時だから。時間を無駄にしたらダメだからね。」

彼の真剣さ、そこがまた私の大好きという気持ちを駆り立てた。


「午後も頑張ろうね。」


そう言って教室に一緒に戻った。



午後3時 私の最終受験科目のテストが終わった。予定通り彼はあと一科目あるため、私が先に退出となる。

相変わらず声を出しづらい雰囲気の教室内。

私は荷物をまとめてわざと出口から遠回りし彼の机の横を通る。

2人で目を合わせ、私は口パクで「頑張ってね」と伝えて部屋を出た。


次いつ2人きりで会えるかな…。

そう呟きながら塾に向かっていった。


私の青春時代。


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