記憶に残る風景、そして次の旅へ
My film journey -あの旅を綴る-, 2nd roll 第十五話
ドイツ・ケルンから次の目的地、ミュンヘンへ向かう長い列車の旅が始まった。その途中で立ち寄ったのが、ロマンティック街道の起点として知られるヴュルツブルク。この街で一泊したものの、記憶の中のヴュルツブルクは不思議なくらいぼんやりとしている。世界遺産に登録されているレジデンツ(ヴュルツブルク司教館)を訪れたはずなのに、写真を見返してもその印象はほとんど残っていなかった。宮殿や庭園の美しさが有名だが、前年に訪れたノイシュヴァンシュタイン城の荘厳さや、前日のケルン大聖堂の圧倒的な存在感があまりに強烈だったせいで、それ以降の建築物には心が動かなくなっていたのかもしれない。
その一方で、ヴュルツブルクの街を歩きながら撮った写真には、心惹かれるものがあった。トラムが走る街並み。歴史ある建物と近代的な交通機関が自然に溶け込み、静かな調和を見せている。ヨーロッパのどの都市でも、トラムのある風景には特に魅力を感じる。
今振り返ると、日本でもヨーロッパでもアジアでも、トラムをテーマに写真を撮る旅をしてみたいという気持ちが湧いてくる。次回の旅では、トラムをもっと意識して撮影してみよう。
たとえば香港のトラム。2階建ての車両は、その迫力だけでも被写体として魅力的だ。もし撮るなら、迫り来るトラムをギリギリまで引き付けて撮りたい。その場合、どのレンズが適しているだろうか。今持っているレンズの中では、広角で撮影できる "CONTAX G Biogon 28mm f/2.8 "や" Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm f/2.4 "が候補になりそうだ。
現在は 主にLeica M4 に "Elmar 90mm f/4 "を装着し、主に子どものポートレートを撮っているが、風景や街並みを撮るときにはまた違うレンズを試したくなる。ただ、どのレンズを選ぶにせよ、工夫次第でどんな写真でも楽しめる。それが写真の魅力だ。ついレンズや機材にこだわってしまうこともあるけれど、旅も写真も、自由に、自分の感性で楽しむことが一番だと思う。
さて、次の旅ではどのレンズを連れて行こうか。
All photos of my journey were taken by abeken with Ricoh R1s.