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海峡を越えた夜、ブリュッセルの記憶
My film journey -あの旅を綴る-, 2nd roll 第六話
1999年3月、ヨーロッパ旅の次なる目的地はロンドンからヨーロッパ大陸だった。移動手段としては、飛行機、船、そして列車(ユーロスター)が選択肢にあったが、私はドーバー海峡をユーロスターで渡ることを選んだ。その理由は、「ユーロスター」という響きの格好良さと、海峡トンネルを通る未体験の旅への憧れだった。
セント・パンクラス駅に到着したとき、想像していた日本の新幹線のような賑わいとは違い、駅の静けさに少し驚いた。「本当にここで良いのだろうか」と半信半疑で列車を待ったのを覚えている。そして夕暮れ、ユーロスターが静かに動き出し、私の新たな旅が始まった。
車内では紅茶が提供され、その香りと温かさが旅の緊張をほどいてくれた。窓の外は徐々に暗くなり、気づけば列車はトンネルに入っていた。あっという間の時間の中で、約2時間後にはベルギーのブリュッセルに到着。初めて海峡を越え、ヨーロッパ大陸に足を踏み入れた瞬間の興奮と、移動の疲れが混ざり合った気怠い感覚を、今でも鮮明に覚えている。
到着後、まず行ったのは通貨の両替と宿の確保だった。この一連の作業は、その後の旅で日常的なルーチンとなったが、当時は一つ一つが新鮮で少し緊張感を伴っていた。安宿を見つけてようやく一息ついたころには、外はすっかり夜になっていた。ちなみに1999年は欧州統一通貨「ユーロ」が誕生した年だったが、実際に流通が始まったのは2002年。この旅ではまだ国ごとに異なる通貨を使い分ける必要があった。
その夜、ブリュッセルの街で最初に心を掴まれたのは、食文化だった。ムール貝を煮込んだ鍋にたっぷりのフライドポテト、そして甘酸っぱいベルギービール。シンプルな料理ながら、塩気とバターの香りが絶妙で、ヨーロッパの食文化の豊かさを肌で感じた瞬間だった。
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腹を満たした後、夜の街を歩くと、グランプラスの幻想的な景色が広がっていた。石畳の広場を囲む歴史的な建物群がガス灯の温かな光に包まれ、荘厳にライトアップされた教会が目を引いた。そして、小便小僧はその控えめな大きさが逆に印象的で、観光名所としての存在感を静かに放っていた。
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この夜、広場の中心に立ちながら、「これがヨーロッパか!」と感動を全身で味わった。ユーロスターでの海峡越えがもたらした新鮮な体験、異国の通貨を手にしたときの緊張感。それらすべてがこの旅を特別なものにしていた。
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あのとき出会った景色や食事は、ただの断片ではなく、私の旅を彩る重要なピースだった。Ricoh R1sで切り取ったフィルム写真とともに、記憶の中で今も鮮やかに輝き続けている。
All photos of my journey were taken by abeken with Ricoh R1s.
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