運河の街でのほろ酔い散歩
My film journey -あの旅を綴る-, 2nd roll 第十話
オランダ・アムステルダムでの想い出といえば、ハイネケンのビール工場見学と運河沿いの散歩が印象に残っている。当時の私はまだビールがそれほど好きではなく、お酒を日常的に飲む習慣もなかった。それでも、世界的なビールメーカーの工場を訪れるという経験は非常に興味深いものだった。
試飲会場では、ほとんどの参加者がジョッキを軽快に空けていく中、私は一口一口ゆっくりと味わった。実のところ、ビールよりも一緒に提供されたチーズ味のスナック菓子に夢中になっていたことをよく覚えている。それでも、会場全体の明るく活気に満ちた雰囲気や、アテンダントの女性、そしてビール腹が印象的だったウェイターのおじさんとの記念撮影は楽しいひとときだった。
ビール工場を後にし、軽い酔い心地のままアムステルダム市街地を散策した。運河沿いを歩きながら写真を撮る「フォトウォーク」を楽しみ、この街が持つ独特の風情に心惹かれた。特にアムステルダム中央駅はどこかで見覚えがあるように感じた建物だったが、後に調べてみると、東京駅のモデルになったという話を知った。日本とオランダの江戸時代から続く長い交流に思いを馳せ、歴史の繋がりを感じた瞬間だった。
その散策の途中で、ゴッホ美術館やコンサートホール「コンセルトヘボウ」にも立ち寄った記憶がある。しかし、当時の私は今ほどアートに興味がなかったため、その詳細はほとんど覚えていない。当時の写真を見返しても、美術館を撮ったものはなく、「訪れた」という事実だけがかろうじて思い出として残っているのだ。
この旅を振り返りながら、自分の興味や関心が年齢とともに変化してきたことを強く感じる。多くの経験を積むことで、知識や視点が広がり、時には家族や友人との共有を通じて新たな発見が生まれる。こうした情報や体験の循環が、自分自身だけでなく、周囲にも良い影響をもたらしているように思う。
ただし、情報をただ受け取るだけでは不十分だと感じる。受け取った情報を整理し、自ら発信することで、さらに深い学びや気づきを得られるのではないだろうか。発信し、他者と意見を交わすことは、自分の「枠」を広げる一つの方法だ。それは、好奇心を育て、行動に移し、成長を続けるための大切なプロセスでもある。
これからも私は、日々の中で芽生える興味や関心を大切にしながら、情報や体験を循環させることを心がけたい。そして、それがまた次の旅への新たなきっかけを生んでくれると信じている。
All photos of my journey were taken by abeken with Ricoh R1s.