シュテファン大聖堂の朝
My Film Journey -あの旅を綴る- 1st roll. 第十話
翌朝、ウィーンの澄んだ空気の中、私は再びシュテファン大聖堂を訪れた。前日は遠くからその壮麗な姿を眺めただけだったが、その荘厳さに心を奪われ、もっと近くでその迫力を感じたいと思ったのだ。
近づくほどに、石像の繊細な彫刻や彩色豊かなステンドグラスが目に飛び込んでくる。その歴史と芸術の深みに圧倒されながら、特に屋根を飾る独特な格子柄に目を奪われた。その幾何学的で力強いデザインは、一瞬たりとも目を離せないほど美しい。しかし高所恐怖症の私には、大聖堂の塔に登る勇気はなかった。それでも、そこから見えるウィーンの街並みは多くの人が絶賛する絶景だと耳にしている。
大聖堂の内部は意外と簡素で、観光客も少なく静寂に包まれていた。壁に据えられた大きなパイプオルガンを目にし、その音色がこの空間に響いたらどれほど感動的だろうと想像を巡らせた。荘厳な空間にいると、時間の流れが普段よりゆっくりと感じられた。
持参していたコンパクトフィルムカメラで大聖堂内部の撮影を試みたが、思うようにいかなかった。写真撮影について特別に勉強したこともなく、ただ構図を決めてボタンを押せば写るものだと思い込んでいた。しかし、室内の暗さやフィルム感度の影響も写りに反映されることを、この旅でようやく学んだ。後年、デジタルカメラSony α7Sを手にしてから、ようやくカメラの設定や撮影技術について少しずつ理解が進んだ。
現在では、YouTuberの提供するカメラ撮影の解説が非常に役立っている。若いカメラ系YouTuberたちのプレゼン力や分かりやすい解説は、職業柄多くの講演や学会発表を経験している私から見ても目を見張るものがある。趣味を深めやすい環境が整った現代に感謝しつつ、学びを楽しんでいる。
大聖堂を後にし、さらにウィーンの街を歩き回ることにした。私にとってウィーンは、映画と密接に結びついた街でもあった。大学時代、映画好きだった私は、この街を舞台にした名作をいくつも観ていた。『BEFORE SUNRISE(邦題:恋人までの距離)』で描かれる主人公たちの交流や、『第3の男』の印象的なシーン、さらには『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』のエピソード。これらの映画の舞台を意識しながら街を歩くのは、私にとって特別な体験だった。
もし今、ウィーンを再訪するなら、現代建築やカルチャーにも目を向けたいと思う。カフェ文化の香り漂う老舗カフェを巡るのも良いが、地元ならではのホイリゲ(居酒屋)を探訪するのも魅力的だ。さらに、家族とともに訪れるなら、フォトウォークを楽しむのも良いだろう。この街ならではの美しい背景と子どもたちの自然な笑顔を写真に収めるひとときは、きっとかけがえのない思い出となるはずだ。
ファインダー越しに眺めるウィーンの景色は、どの時代であっても新たな輝きを放つに違いない。
All photos of my journey were taken by abeken with Ricoh R1s.