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旅人と駅、そして床屋の思い出

My film journey -あの旅を綴る-, 2nd roll 第二十話

ブダペスト中央駅で床屋を見つけた。旅の途中、ふと髪を切りたくなったのだ。言葉も通じず、少し不安もあったが、見知らぬ土地で普通の観光客がしないことに挑戦してみたい年頃だった。身振り手振りで何とか意思を伝え、短髪に仕上げてもらった。すると、それを見ていた友人も「俺もやる」と床屋に入っていった。しかし、なぜか彼の仕上がりは散々で、出てきたときにはすっかり落ち込んでいた。

これから後ろの床屋へ

旅の最中に困ったことがあれば、大きなターミナル駅へ行けば何とかなる——。そんなことを、この頃の私は学びつつあった。両替、ホテルの予約、郵便局、そして床屋まで揃っている。ただし、トイレが有料だったり、コインロッカーが壊れていたりと、不便さもつきものだ。それでも、駅は単なる交通の要所ではなく、使いこなせば旅の強い味方になる場所だった。

ゲッレールト付近をまた散歩してみたい

最近の私は、旅の途中で時間ができると、ふらりと駅へ向かう。写真を撮るのが好きなので、電車を撮影したり、人の往来を眺めたり、カフェやバルで過ごしたりと、駅での時間を楽しんでいる。特にヨーロッパの大きなターミナル駅は、頭端式の構造が多く、その豪華な雰囲気に魅了される。頭端式とは、上から見ると「ヨ」の字のようにホームが並ぶ形態で、「櫛形(くしがた)ホーム」とも呼ばれる。

ヨーロッパの鉄道旅では、駅舎そのものが観光スポットになることも少なくない。私が最も気に入っているのは、ミラノ中央駅だ。建築の美しさはもちろん、どこに何があるかが比較的分かりやすく、迷ったことがほとんどない。もし時間があれば、駅で過ごしてみるのも面白い。ただし、スリには十分注意しよう。

レトロな列車が旅の気持ちを高めてくれる

旅先の駅には、それぞれの時間が流れ、行き交う人々の人生が交錯している。そんな風景の一部として、ふと床屋に入ってみたあの日の自分を思い出す。旅はいつだって、思いがけない出来事に満ちている。

All photos of my journey were taken by abeken with Ricoh R1s.


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abeken/アベラボ
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