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ケルン大聖堂、感動の音色を求めて
My film journey -あの旅を綴る-, 2nd roll 第十二話
オランダ・アムステルダムから電車に乗り、次の目的地であるドイツ・ケルンへ向かった。車窓から見える緑豊かな風景が次第に変わり、国境を越える高揚感が胸に広がる。ドイツ北西部に位置し、オランダ国境にほど近いこの都市は、今回の旅の前半で特に訪れたかった場所の一つだった。
ケルンに特別な興味を抱いた理由は、大学1年生の頃に遡る。当時、私が最も楽しみにしていた授業はドイツ語だった。語学そのものがあまり得意ではなく、特に英語は苦手だった。しかし、不思議とドイツ語だけは楽しかった。それには理由がある。
ドイツ語の先生は授業中、たびたび自身のドイツ留学時代の経験談を交えて話をしてくれた。その中には、トラック運転手をしていた頃に助手として働いていた東北出身の青年が訛りを生かして流暢なドイツ語を身に付けた話など、どれも興味を引くものばかりだった。
中でも強く心に残ったのは、「ケルン大聖堂で聴いたパイプオルガンの音色が、涙が出るほど感動的だった」という話だ。その言葉は深く胸に響き、私も同じ感動を体験したいという強い想いを抱くきっかけとなった。
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ケルンに着いた私は、駅近くの安宿に宿を取り、駅構内のソーセージスタンドで軽食を済ませた。特にカリーブルストが絶品で、学生旅行の予算に優しいこの食事に大満足した。その後は念願のケルン大聖堂を訪れ、ライン川沿いを散策しながら街を楽しんだ。質素で控えめな旅ではあったが、それが逆にケルンの魅力を素直に受け止める助けになった気がする。
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当時の私はまだビールに親しんでおらず、アルコールを楽しむ習慣もなかった。ケルシュビールや隣町デュッセルドルフのアルトビール――その土地でしか味わえない特別な一杯を逃してしまったと思うと、少し悔しささえ覚える。ケルシュビールや隣町デュッセルドルフのアルトビールといったこの地域ならではの味を楽しめていたら、旅の思い出はさらに豊かなものになっていただろう。
一般的に、ドイツのビールといえばミュンヘンを中心とした南部が有名だが、北西部のビール文化も独特で素晴らしい。今ならば、ケルシュビールとアルトビールを飲み比べながら、地元の味を堪能する旅を計画してみたい。
当時の私は、シンプルな楽しみ方で十分満足していた。しかし年齢を重ねた今、旅をより深く味わい、過去の記憶と現在の視点を重ね合わせる方法を知っている自分がいる。
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あの時訪れたケルン大聖堂の荘厳な姿と、先生が語った感動の音色。その両方を胸に刻みながら家族と再訪することで、あの頃の自分が夢見た感動を新たな視点で共有し、同じ景色に込められた想いを語り合える。きっとそれは、より豊かな人生の想い出となるに違いない。
All photos of my journey were taken by abeken with Ricoh R1s.
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