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1999年、旅立ちの春

My Film Journey -あの旅を綴る- 2nd roll. 第一話

旅には、出会いや気づきが詰まっている。人との出会い、風景との出会い、そして自分自身との出会い。時を経て振り返るたび、その断片が新たな形で心に響いてくる。
このエッセイでは、1999年3月にヨーロッパを巡った旅の記憶を、26年後のいまの言葉で綴っていく。

あれは大学2年生の春。1999年3月のことだった。
大学の後期授業が1月末に終わり、追試を免れた私は解放感に浸りながら、2月はアルバイト漬けの日々を送った。そして3月、ずっと夢見ていた長期の海外旅行に出発することができた。

前年の1998年、初めて訪れたドイツとオーストリアの空気にすっかり魅了され、「次はヨーロッパ全域を巡りたい」という想いが膨らんでいった。今回は、バックパックひとつで自由気ままに旅をすることを決意。訪れる国や宿泊先はその場で決める、まさに即興の旅を計画した。

最初の目的地ロンドンは終始小雨だった

旅費を抑えるため、購入したのは格安航空券と「ユーレイルパス」のみ。このパスは1ヶ月間ヨーロッパ中の鉄道が乗り放題のチケットだ。安全を重視するなら旅行会社のパックツアーが一般的だった当時、私はその選択肢をあえて選ばなかった。憧れていたのは、自由奔放な旅の象徴である沢木耕太郎の『深夜特急』だった。そして手元には『地球の歩き方』だけを携え、現地で自分の力で宿を見つけ、情報を集めることに挑戦した。しかし、実際には、異国の地で安宿を探すのは想像以上に大変だった。憧れと現実のギャップに戸惑いながらも、そのプロセスさえ旅の醍醐味だったのかもしれない。

Ricoh R1sというコンパクトフィルムカメラで撮影

ロンドンを旅の出発地とするプランを立てたのは、格安航空券のルートによるものだった。ロシア・アエロフロート航空を使い、モスクワ経由でロンドンに到着。その後、ベルギー、オランダ、ドイツ、オーストリア、そしてハンガリーへと足を伸ばす。前半は大学の同級生と2人旅、後半はオーストリアからイタリア、フランスまでのひとり旅だった。

二人旅だと簡単に写真を撮ってもらえる

あの春、ヨーロッパの広い大地を旅した日々の出来事や心の動きは、26年経った今でも鮮やかに蘇る。記憶のひとつひとつを拾い集めながら、このシリーズで振り返っていきたい。あの頃の自分が見た景色、触れた空気、そして感じた想いを、いまの言葉で再び紡ぎ出していく。

All photos of my journey were taken by abeken with Ricoh R1s.

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abeken/アベラボ
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