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ケルン大聖堂、恐怖と美のはざまで

My film journey -あの旅を綴る-, 2nd roll 第十四話

ケルン大聖堂は、その壮大な姿だけでなく、塔に登ることができる点も大きな魅力である。ヨーロッパには、教会や塔の上部から街を一望できるスポットが多く、日本で例えるならば、お城の天守閣から周囲を見渡す感覚に近いかもしれない。ただ、そこにたどり着くまでの道のりは決して平坦ではない。狭く螺旋状に続く石の階段廊は、意外にも足元が滑りやすく、上るにつれて圧迫感が増してくる。

私は高所恐怖症のため、この時点ですでに冷や汗が止まらなくなっていた。ましてや、ケルン大聖堂は、パリのエッフェル塔が完成するまで世界で最も高い建造物だったという。その高さを実際に体感すると、想像以上の迫力がある。

過去に世界一を誇った姿は、迫力がある

ようやく頂上にたどり着くと、目の前には壮大な景色が広がっていた。しかし、恐怖心が頂点に達し、景色を楽しむ余裕はほとんどなかった。目の前の柵を見ては、「もしこの柵が壊れたらどうしよう」と不安が頭をよぎり、さらには「風に体が吸い込まれるのでは?」などと、根拠のない想像が次々に膨らむ。柵越しに見える石造りの床も滑りやすそうに見え、転落する未来を勝手に思い描いてしまうほどだった。結局、感動よりも恐怖が勝り、早々にその場を後にすることになった。日本のお城の天守閣ではこうした恐怖を感じたことはなかったのに、不思議な体験である。

尖塔の先まで、細部のデザインが素晴らしい

それでも、ケルン滞在中は大聖堂を中心に、その美しい姿をさまざまな角度から楽しむことができた。特に印象的だったのは、ライン川の対岸から眺める大聖堂のシルエットである。夕方、空が茜色に染まる中、その壮大な姿が一層際立つ。近くにある鉄道橋とのコントラストが情景をさらに引き立て、中世の建築物と近代の建築物が調和する独特の風景を作り出していた。異なる時代の建築物が共存し、互いの魅力を引き立て合う景色は、ヨーロッパならではの魅力だと感じた。

教会内は静かで、落ち着く

日本では、古い建物が災害や再開発のために取り壊されることが多く、こうした歴史的なコントラストを楽しむ機会は限られている。一方で、神社仏閣のような木造建築は、修復可能な作りになっており、何百年もの間、その姿を維持してきた例も多い。その伝統技術の素晴らしさには目を見張るものがある。

ケルンで出会った風景は、日本とヨーロッパ、それぞれの文化や価値観の違いを改めて考えさせてくれるものだった。

All photos of my journey were taken by abeken with Ricoh R1s.


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abeken/アベラボ
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