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生デニムと次なる旅へ

My Film Journey -あの旅を綴る- 1st roll. 第十五話(最終話)

ウィーンで購入したG-STAR RAWのリジットデニムは、生デニム特有のごわつきがあったにも関わらず、待ちきれずにその場で履いて街を歩いていた。生デニムとともに写真に写るのは、天才サルバドール・ダリの作品。赤いステッチが施された裾を折り返すとおしゃれに見えたのが、当時は新鮮だった。27年の歳月が経ち、そのデニムはすっかり色落ちしているが、今では妻が日常使いしている。その風合いは素晴らしく、次にヨーロッパを訪れる機会があれば、また同じようなデニムを探して購入したいと思う。

デニムはサイズ調整せず、旅中は捲って履いていた

私のライフスタイルは「良いものを長く使う」と言えば聞こえが良いが、裏を返せば「もったいなくて捨てられない、優柔不断」とも言える。この旅で履いていたアイリッシュセッターのブーツもその一例だ。アルバイトで貯めたお金で購入したこのブーツは、今もメンテナンスを重ねながら愛用している。メンテナンスにはそれなりの費用がかかり、2~3回で新品が買えてしまう額になる。しかし、新しいものを買ったところで、長い時を共にしたこのブーツに刻まれた皺や風合いを得られるわけではない。共に歩んだ時間と経験が積み重なることで、このブーツは自分自身の成長の証のような存在になっていくのだ。本当に良いものは、経年変化を経てさらに価値を増すのだと思う。

Ricoh R1sというコンパクトフィルムカメラの描写力

ファッションには流行がある。その時々でいろいろと試してきたが、近年、自分が本当に好きなものの基準がはっきりしてきたように思う。そろそろ自分の本当に好きなもの、大切な思い出を共有できるものに囲まれて暮らしたい。そして、それらを可能であれば子どもたちに引き継いでいきたいという気持ちが強まってきた。使わなくなったものや不要なものを整理し、手放す時期に差し掛かっているのだろう。新しいものと出会うには、まず身の回りを軽くすることが必要だ。その過程を楽しみつつ、家族とあれこれ相談しながら、未来に向けた選択をしていきたい。

3月だったが、天気が悪い日が多く、春をあまり感じなかった

古いフィルムを掘り返し、デジタル化したことからこのエッセイは始まった。まずはインスタグラム(@abeken98)で"My Film Journey"と題し、投稿をスタート。そして、2025年1月1日よりnoteにてエッセイの投稿を開始した。昔のあの旅を綴る行為を通じて、過去を振り返り、そこから学び、未来へと繋げるというプロセスを改めて感じた。時間が経つほどに、経験や思い出は価値を増していく。それを大切にしながら、新たな出会いや旅を楽しみたいと思う。

空港へ向けてホテルを発つ

さぁ、次なるあの旅へ――。

All photos of my journey were taken by abeken with Ricoh R1s.

ウィーンで購入したデニムパンツ


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abeken/アベラボ
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