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ビールが繋ぐ記憶と旅

My film journey -あの旅を綴る-, 2nd roll 第十三話

ドイツといえば、やはりビールが有名だ。 学生時代、学校の地理の授業でその話を聞いた記憶があるが、当時の私にとって「ドイツ=ビール」というイメージは、単なる机上の一部にすぎなかった。

それもそのはず、私が若い頃にはインターネットなど存在せず、知りたいことがあっても本や雑誌、教科書に頼らざるを得ない時代だった。情報収集には手間がかかり、調べるプロセスそのものが学びであったのだ。今ではスマートフォンひとつで世界中の情報が瞬時に手に入る。しかし、その情報の真偽を見極め、活用する力は当時以上に求められるようになった。

巨大なケルン大聖堂

大学時代の2000年前後、私はヨーロッパを旅した。旅の計画はガイドブックや旅行雑誌に頼り、あとは現地の空気や人々から感じ取る感覚が頼りだった。その場でしか得られない体験が旅の全てであり、結果として、その記憶は今も色褪せることなく心に残っている。

当時撮影したフィルム写真も、また特別な存在だ。当時は深い意味を持たずにシャッターを切ったが、その写真たちは時を経て、旅の記録として重みを増した。写真には、単なるアート表現を超えて、その瞬間を切り取り、記録する力がある。

ドイツのお昼は、基本的にソーセージスタンドのソーセージとパンだった

それから四半世紀、私たちの生活は劇的に変化した。特にテクノロジーの進化は驚異的であり、情報収集や旅の方法そのものが大きく様変わりした。もし、あの旅に今のようなインターネット環境があれば、私はどうしていただろうか。ケルンの歴史や食文化を事前に調べ、訪れる前から名物料理やビールをリストアップしていただろう。そして、ケルン名物のケルシュビールと隣町デュッセルドルフのアルトビールを飲み比べる楽しみも加わっていたかもしれない。

ただ、情報がなかったからこそ、自分の五感をフルに活用し、感じ取る旅ができたのだとも思う。食事や飲み物といった「味覚の記憶」を増やす余地はあったが、それ以上に、情報に振り回されない旅が自分の感性を磨いてくれた。

ライン川の対岸からケルン大聖堂と街の景色はいつまでも眺めていられる

現代の私たちは、ただ情報を手に入れるだけでなく、それをどう活用するかが問われる時代に生きている。必要な情報を取捨選択し、活用する力を持つことが、豊かな人生をつくる鍵になるのだと感じる。

残された時間が限られる人生の中で、何を知り、何を行動に移すか。その選択の積み重ねが、自分らしい生き方を形作る。ケルンで感じた旅の記憶と、そこで触れた文化は、今でも私の心を豊かにしてくれる。そして、これからも私の旅は続いていく。

All photos of my journey were taken by abeken with Ricoh R1s.

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abeken/アベラボ
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